第十五話 ハンター活動 その二

「ミュール、起きろ!」

「う、うーん…」

 夜中に魔物の気配を感じ取り、ミュールを揺さぶって起こそうとするが、なかなか起きてはくれない。

 仕方なく左手でミュリエルを抱え、右手に槍を構えて立ち上がった。

 焚火の火で照らされている周囲を確認すると、暗闇に浮かぶ大きな目玉が浮かんでいた!

 ゲイザーだとすぐ分かり、ミュリエルが寝てくれていてよかったと安堵する。

 ゲイザーには弓で攻撃したかったが、ミュリエルを抱えている状態では弓が使えない。

 ゲイザーから魔法を撃たれてしまうかもしれないが、近づいて槍で攻撃するしか方法はない!


 私が槍を構えたのを見て、ゲイザーの目が黄色の光を発した!

 私を麻痺させたかったのだろうが、私には効かない!

 私は駆け寄りながら、ゲイザーを串刺しにしようと槍を突き出した!


「ちっ!」

 ゲイザーは素早く移動して私の槍を躱し、今度は赤色の光を発した!

 その途端、炎の弾が私に向かって飛んできた!

 私は瞬間的に背を向け、炎の弾から抱えているミュリエルを守る!

 背中に炎の弾が当たり、強烈な熱と痛みに襲われるが、炎の中に飛び込んだ時に比べれば大したことはない。

 私は振り向きざまに槍振り回すと、炎の弾が当たって油断していたのか、私の槍が見事にゲイザーに命中した!

 ゲイザーは地面に落ち、私は止めとしてゲイザーに槍を力の限り突き刺した!

 ゲイザーの目からは光が消えて行き、無事に倒せたと安堵した。

 なお、ミュリエルはまだ眠ったままだ…。

 安心して眠っているのを喜ぶべきなのか、それとも、あれだけの事があっても起きない事を嘆くべきか迷う所だ。

 前者だと思う事にして、ゲイザーの死体を洞窟内に入れ、私は再び寝ているミュリエルを抱いたまま朝まで火の番を続けた。


「レフィー、おはよう…」

「ミュール、おはよう」

 朝目を覚ましたミュリエルは、私が夜中に倒したゲイザーを見て驚いていた。


「こんなに大きな魔物だったんだ…」

「見た目は大きいが、軽いんだぞ」

 ゲイザーの大きさは直径一メートルくらいで、両手で抱えるくらいの大きさはあるが、重量は十キロもないだろう。

 食べられる所は少ないようだが、様々な材料として使われるらしい。

 詳しい事は知らないが、お金になればそれでいい。


「レフィー、あたいも魔物と戦いたい!」

「それは、ちゃんとした装備をそろえてからだ」

「う~」

 お金が無くて、これまでミュリエルの装備を買いそろえてやる事が出来ていない。

 ミュリエルは以前から私の役に立ちたいと言ってくれているし、魔物と戦いたいというのであれば拒否するつもりもない。

 だけど、装備が無いうちは戦わせることは出来ない。

 今回の狩りでお金が手に入れば、ミュリエルの装備も買ってあげようとは思っている。

 このまま帰る事も出来たが、もう一体くらいゲイザーを倒して帰りたかった。

 ミュリエルと相談し、もう一日だけ探してから帰ることにした。


「お前たちがこれを倒したのか?」

「他の誰が倒してくれるというのだ?」

「それはそうだが…」

 ゲイザーを三体倒す事が出来たので、つたで三体を結んで街道まで運んできたところで、私達と同じように狩りを終えたハンター達と出くわした。

 そのハンター達の獲物はマッドボア五体とブラックスネークで、ブラックスネークの方は猛毒を持っている危険な魔物だ。

 毒に気を付ければ倒すのは難しくなく、担いで持ってきやすいのでよく狩られている魔物でもある。

 数は私の方が少ないが、金額的には私の方が上であるのは間違いない。

 しばらく待っていると、ハンターギルドの馬車がやって来て、乗っていたハンター達にも羨ましがられてしまった。

 馬車にゲイザーを積み込み、私達は徒歩で馬車の警護となる。

 特に襲われるようなことはなく、イズストル町のハンターギルドまで帰り着く事が出来た。

 馬車はハンターギルドの裏側に行き、そこで狩ってきた魔物の買取が行われるみたいだ。


「銅三級がゲイザーを狩ってきただと?」

「しかも二人でとか、嘘だろ?」

 買取を待っている間に、そこにいた他のハンターにも絡まれることになってしまった…。

 しかし、私がゲイザーを三体倒してきた事実には違いないので、堂々としているだけでいい。

 やっと私達の番がやって来て、ゲイザーを買い取ってもらえる事になった。


「ふむ、三体とも目玉には一切傷が付いていない、いい状態だ。小銀貨三枚、大銅貨六枚ってとこだがいいか?」

「構わない」

 もう少し高く売れると思ったが、こんなものかもしれない。

 宿が大銅貨一枚だから、贅沢をしなければ約一か月弱は暮らしていける。

 実質二日の働きで一か月暮らせるのであれば、危険な魔物と戦った対価としては十分だ。


「今日は美味しいものを食べよう」

「うん、そうしよう!」

 懐が温かくなったので今日くらいは贅沢をしようと、ミュリエルと手を繋いで宿屋へと帰って行った。

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