第十四話 ハンター活動 その一

 魔物を狩る場所の近くまではハンターギルドの馬車が送ってくれるそうなので、それに乗って行く事にした。

 この馬車が、帰りには狩った魔物を乗せて運んでくれるらしい。

 ただし、魔物を乗せると一杯になるので、帰りは徒歩になるそうだ。

 行きだけでも楽が出来ればと思って乗ったのだが、今では乗らなければよかったと後悔していた。


「ねぇ彼女!俺達銀三級で、そっちの兄ちゃんより強いぜ!こっちに来れば楽に稼がせてやるよ!」

「いやいや、僕達の方に来た方が良いよ!年齢も近いし、こっちには一人女性もいるから気楽だよ!」

 私とミュリエルの他に二組のハンターが同乗していて、ミュリエルを勧誘してくる。

 まぁ、ミュリエルは可愛いと思うし胸も大きいから、男に声を掛けられるのはある程度仕方のない事だ。

 ただし、ミュリエルが嫌がってなければの話だ。

 ミュリエルは俺の後ろに隠れてしまい、当然男たちの視線が私に刺さる。


「兄ちゃん、悪い事は言わねーから、俺達と一緒に狩りに行かないか?取り分は活躍次第で決めるてやるぜ」

「僕達の所が良いよ!僕達はあまり強い魔物の所にはいかないから安全だよ!」

 今度は私を仲間に引き込もうとしてくる。

 ミュリエルが入ってくれれば後は私を追い出せばいい、くらいに思っているのだろう。

 仲間がいれば危険は少なくなるかもしれないが、ミュリエルが嫌がっている所に入る様な事は出来ない。


「断る!」

「あぁ~ん!」

「そっか、残念…」

 私が断ると、片一方は私を睨みつけて威嚇し、もう一方は諦めてくれた。

 睨みつけた方には、私も睨み返してやっている!

 生前は喧嘩もろくにしたことが無かったけれど、レイフィースとして十五年間過ごして来た間には、フォルガ村の子供達と喧嘩も良くしたし、素手での戦い方も父さんから教わっている。

 それに、フォルガ村にいた大人たちの方が、目の前で睨みつけてきている男より強くて恐ろしかった。


「ちっ!」

 男の方が目をそらし、私達から離れた場所に戻って座ってくれた。

 喧嘩にならずに済んでよかったと、ほっと一息ついた。

 喧嘩しても負けないと思うが、私の後ろにはミュリエルがいる。

 ミュリエルを守りながら狭い馬車の上で喧嘩となれば、ミュリエルに被害が及ぶかもしれない。

 それを避ける事が出来て、本当に良かったと思う。


 馬車での移動は半日で終わり、ここからは徒歩での移動となる。

 馬車を降りた場所には、狩りを終えたばかりのハンターがいて、魔物を馬車に積み込んでいた。


「レフィー、あたいらもあれを狩るの?」

「いや、俺達が狙うのはあれではない」

「そうなんだ」

 ハンターが馬車に積み込んでいた魔物は、このあたりの草原に生息しているマッドボアと呼ばれる魔物で、その肉は美味しく意外と高値で買い取って貰える。

 しかし、十頭以上の集団でいる事が多く、私とミュリエルでは倒すのが厳しい魔物だ。

 倒せたとしても、私とミュリエルでは、ここまで二頭運んでくるのがやっとだろう。

 それでは稼ぎが少なくなってしまう。

 私達が狙うのは単体で活動している魔物で、高額で買い取って貰える魔物か、軽くて複数頭運べる魔物に限られてくる。

 街道から外れ、ハンターが通っていると思われる小道を二人で歩いていきながら、今回狩る予定の魔物についてミュリエルに説明していく。


「俺達が狩る魔物はゲイザーだ」

「それって、このあたりで一番危険な魔物だって…」

「よく説明を聞いていたな、偉いぞ!」

「えへへ…」

 ミュリエルの頭を撫でて褒めてやりながら、再度ゲイザーの危険についてミュリエルに説明した。

 ゲイザーは一つ目の球体の魔物で、目が合えば麻痺させられる危険な魔物だ。

 ハンターギルドのお姉さんも、ゲイザーを見かけたら逃げるようにと教えられた。

 だけど、ゲイザーは高値で買い取って貰えるうえに、非常に軽い魔物だという。

 私達が狩って持って帰るには、最適な魔物だと言える。


「ミュールは絶対に俺の背中から顔を出さないようにしてくれ!」

「うん、分かったけれど、レフィーは大丈夫なの?」

「俺は以前ゲイザーと戦った事はあるし、ゲイザーの麻痺は俺の能力には効かない」

「そっか」

 神様から与えられた不死の能力は、いかなる状態異常も無効化する。

 死ぬ事が出来ないという呪われた能力だが、ハンターとして活動するには便利だと思う。


 他の魔物に遭遇しないように周囲を警戒しながら進み、日暮れ前に野宿をするのに適している洞窟を見つけた。

 他のハンターも使用しているのだろう、狭い洞窟だが眠られるように地面は綺麗にしてあった。

 洞窟の外で火を焚き、夕食を作って二人で食べた。


「ミュールは洞窟の中で眠ってくれ」

「レフィーは寝ないの?」

「あぁ、俺は火の番をしておく」

「あたいもレフィーの傍にいる!」

 ミュリエルはいつものように私に抱き着き、そのまま寝てしまった…。

 今に始まった事では無いが、危険な魔物が出る場所ではやめて欲しい所だ。

 しかし、甘えられることは嬉しく思うし、妹ステイリーを甘やかせられなくなった分も甘やかしてやろうと思うのだ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る