第十三話 ハンター登録
宿で一夜を過ごした次の朝、久々に安心して眠ったからすっきりと目覚める事が出来た。
「ミュール、朝食を食べてから出かけるぞ」
「うん…」
まだ寝ぼけているミュリエルを起こして着替えさせ、 一階に降りて部屋の鍵と桶を返して、そのお金も返してもらった。
食堂に行って安い料理を食べ、宿屋を後にした。
「ミュール、ハンターをやろうと思うがいいか?」
「うん、あたいもやる!」
ハンターとは、魔物を狩って生活をしている者達の事で、魔物を倒す事が出来れば誰でもなれる職業だ。
魔物と戦うのだから、当然命の危険がある。
誰でもなれる職業ではあるが、誰もやりたくない職業でもある。
他にも仕事はあるだろうが、すぐにお金が手に入る職業となるとハンターくらいしかない。
ミュリエルはまだ魔物を倒せないし町にいてもらいたいのだが、ミュリエルが私と離れる事を極端に嫌がる。
私がミュリエルを置いて何処かに行ってしまうのではないかと、泣きながら言われては置いて行く事は出来なかった。
それに、旅の間もミュリエルを連れたまま魔物を倒せていたので、町から離れた危険な場所に行かなければ大丈夫だと思う。
ハンターギルドの場所は宿屋で聞いて来たので、迷わず辿り着けた。
ハンターギルドの建物はやや古いが、ハンターらしい人達が出入りしているからここで間違いないだろう。
私はミュリエルの手を引いて、建物内に入って行った。
建物内は大勢のハンター達で賑わっていた。
ちょっと怖そうな面構えの人達だが、フォルガ村の男達に比べれば弱そうに思えた。
フォルガ村にはハンターを引退してきた人達もいたし、山が近い事もあって現れる魔物も強いのが多かった。
イズストル町の様に人が集まっている所は、ハンターが周囲の魔物を狩っているので、比較的魔物の数も少ないし強い魔物もいないはずだ。
ハンターも必然的に、あまり強さを求められないと思う。
私はミュリエルを連れてハンター達の間をすり抜けて行き、受付のあるカウンターへとやって来た。
「ハンター登録をお願いする」
「はい、分かりました。お名前を教えてもらえますか?」
「俺はレイフィースで、こっちがミュリエルだ」
受付の姉さんに名前を告げると、二人分の登録を開始してくれた。
受付の姉さんは私とミュリエルの名前を紙に書き、その紙を持って奥へと引っ込んでいった。
しばらくして戻ってきた受付の姉さんは、手に何か持って出て来た。
「これがレイフィースさんのバッチで、こっちがミュリエルさんのバッチになります。
紐が付いているので、首から下げておいてください」
私は受付の姉さんからバッチを受け取って首から下げ、ミュリエルにも首から下げさせた。
「バッチには名前が彫られていて、誰だかわかるようになっています。
ハンターギルドに来た際には、見えるように出しておいてください」
「分かった」
普段は邪魔になるから、バッチはしまっておいていいらしい。
受付の姉さんは、バッチやハンターの規則なんかを説明してくれた。
私が受け取ったバッチは銅製で、一番下の銅三級となるらしい。
魔物を一定数狩れば、銅二級、銅一級と上がって行くそうだ。
銅の上は銀、金でそれぞれ三段階に分かれているそうだ。
級が上がったから狩れる魔物の種類が増えるとかは無いそうだが、護衛や指名された特別な依頼があれば、級によって値段の上下があるそうだ。
お金になりそうな依頼は受けたいと思うし、級はあげといて損はないだろう。
級は、ハンターギルドがある国であれば同じように通用するけれど、魔物を狩った数はその町のハンターギルドでしか数えられないそうで、横のつながりは無いらしい。
ここのハンターギルドで級があと一歩で上がる所まで魔物を倒していたとしても、別の町のハンターギルドに行けば一からと言う事になる。
後は、犯罪に手を染めればハンターギルドから追放されるそうだから、注意する様にと言われた。
「最後になりますが、もし他のハンターが亡くなっているのを発見した場合、出来ればバッチを持ち帰ってきてくだされば助かります」
「分かった」
ハンターは命懸けだし、魔物との戦いで命を落とすこともあるだろう。
フォルガ村でも、魔物の犠牲になる人は少なからずいた。
お金を稼ぐことは大事だが、ミュリエルが怪我をしないように、より一層注意して魔物を狩りに行こうと思う。
私とミュリエルの登録は無事に終わり、二人分として大銅貨一枚を支払った。
魔物を狩って来てからでも良いと言われたが、大銅貨一枚くらいなら何とか支払える。
「他に聞きたいことはありますか?」
「あぁ、近場でいい狩場があれば教えて欲しい」
「分かりました」
受付の姉さんは簡単な地図を私に見せ、指をさしながら大まかな魔物の生息地を教えてくれた。
やはり、近場の魔物は狩り尽くされていて、少し遠出をしないといけないみたいだ。
ミュリエルを連れての野宿は避けたい所だったが、仕方がない。
二、三日の野宿を覚悟して、魔物を狩りに行く事にした。
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