第三話 フォルガ村を出て行く
二日間かけてお墓を掘り終え、そこに村人たちの骨を埋葬していった。
村人たちには悪いけれど、誰が誰の骨だか判別はつかなくなってしまっている。
唯一分かるのはステイリーの骨だけで、両親の骨もどれだか分からなくなってしまっている。
骨を埋葬し終え、近くにあったちょうどよさそうな石を運んできて墓石とした。
「俺はフォルガ村から出ていくことにした。
フォルガ村には皆との楽しい思い出もたくさん残っているが、一人で生活する事は出来ない。
心苦しいが分かって欲しい…」
私は村人一人一人を思い出しながら、別れを告げて行った…。
「お父さん、お母さん、俺を育ててくれてありがとう。
スティ…俺もスティの事が大好きだった。
別れるのはとても辛いが、俺は前に進まなくてはならない。
次の転生先が今よりいい場所なのを願っている。
さようなら…」
私は家族に別れを告げ、フォルガ村から出て行く準備に取り掛かることにした。
着替え、塩、お金…必要だと思う最低限の物を、次々と鞄に詰め込んでいった。
武器は、愛用の槍と弓矢を持っていくことにした。
槍は自作だが、弓は父レイフィースから初めて狩りに出かけた際に貰い受けたものだ。
大事に使っていこうと思う。
準備が整い、私は住み慣れた家に火を放った。
それから、フォルガ村にあるすべての家に火を放ち、何も残らないようにした。
病原菌は勿論だが、無人の家が残っていれば悪人の住処とされてしまうかもしれない。
それに、家に残されている物を取りに来る人がいないとも限らない。
その際に、残っていた病原菌に感染しては、またどこかの村が同じような事になりかねない。
そうならないように、フォルガ村には何も残っていない状態にしないといけない。
全ての物が燃えるのを確認し、私は一人寂しくフォルガ村から出て行った…。
フォルガ村から半日ほど歩いた先には、コルチリ村がある。
コルチリ村はフォルガ村に唯一隣接している村であり、コルチリ村を通らないと他の場所にも行けない。
私はコルチリ村に向かう途中で、色々な事を考えていた…。
私は自殺した事で、神様から罰を受ける事になってしまった。
だけど、自殺しても仕方がない状況だったはずだ。
生前、私は愛する妻と娘を亡くし、生きる気力を無くして自殺をした。
今回は、両親と妹だけではなく、親しかった村人全員が亡くなったのだ。
この二つの状況で生き続けろと言うのは、非常に酷な話だと思う。
神様だって、私と同じような状況になれば、自らの死を選ぶに違いない!
確かに、与えられた命を粗末にするのはいけない事だと言うのは分かる。
分かるが、人の心はそんなに強くはないんだ…。
今だって、死ねるのなら死んでしまいたい…。
だが罰として、不死の体を与えられてしまったからには、死ぬことは出来ない。
普通なら不死になった事を喜ぶのだろうけれど、今の私にはまったく喜べない…。
罰と言えば、私はこれから七人を助ける事が出来なければ、次の転生は無いと言われてしまった。
二回は覚えがあるとして、後の五回は身に覚えが無い。
だからと言って、教えて欲しいとは思わないし、知りたくも無い。
五回自殺した時の状況を知った所で、絶望するだけだ…。
神様もそう思って、私に教えなかったのだろう。
その事はどうでも良いとして、具体的に七人を助けると言ってもどうすればいいのだろうか?
私の様に、自殺をしようとしている人を見つけて助け出す?
その様な人は、滅多にいる筈もない。
だとしたら、死にかけている人の命を救えば良いのだろうか?
私には医療技術も無く、誰かを治療できる能力も無い。
精々、家から持ってきた薬草を使うくらいだ。
その薬草も、自分に使った事は一度も無かった…。
私はレイフィースとして生まれてから今日まで、病気に
怪我をしてもすぐに治っていたし、両親からはそう言う能力なのだと教えられていた。
この世界の人々は、一つの能力を持って生まれて来る。
お父さんは遠くを見る事が出来る能力を持っていたし、母さんは刃物を上手く取り扱う事が出来る能力を持っていた。
特に母さんの能力は素晴らしくて、刃がついた物であれば、剣であろうと包丁であろうと達人の様に使いこなせるらしい。
もっとも、筋力が増える事は無いので、鍛えていないと刃が付いていたとしても斧の様な重たい物は使えないそうだ。
妹ステイリーの能力は分かっていなくて、大人になる前に大きな町に行って調べようと言う話になっていた。
ステイリーはそれを楽しみにしていたのに…。
くっ…家族の事を思い出すと、涙がこぼれ落ちて来た…。
話しを元に戻そう。
結局、私は人の命を救う能力は、皆無だと言う事だ。
町に着いたら、薬草の使い方を色々調べなくてはならないな。
その前に、お金も稼がなくてはならない。
お金は少額だが、両親が貯めていたお金を貰って来た。
そのお金は出来るだけ残しておきたいので、自分で働いて稼がなくてはな。
それに、私の体が不死だからと言って、食べて行かなくてはならないだろう。
その証拠に、かなり歩いて来た事でお腹が減って来たし喉も乾いている。
餓死する事は無いとしても、空腹では力も出ないだろうし、人を助ける事も出来やしない。
正直に言えば食欲は無いが、今後の事を考えれば、無理にでも食べなくてはならない。
食料は全て焼き払ったので何も持ってはいない。
私は、道の近くに流れていた川へと降りて行き、そこで水と、出来れば魚がいれば捕まえて食べようと思った。
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