蛇足

蛇足 構成について

 どうもどうも。ぼくです。チャッピーです。


 黒と白の境界線が完結しました。

 今回は、黒と白の境界線ってどんなこと考えて執筆していたのか書いていきます。

 あとがき的なものです。ネタバレを多分に含みます。


 まず、今作について、大まかな流れは、

 

 クロがシロを助ける→シロを元の孤児院に戻そうとする→シロが狙われる→孤児院が黒幕と判明する→孤児院を潰す


 でした。

 これは、ぼくがラノベ風に読みやすくするために、バトル要素を追加しようとして考えた流れでした。

 

 作品の大きなテーマは、作中でも出てきた文言である『悪と善、黒と白、その境界線。混ざり合って、歪んで、もう判然としない。』これがテーマになっています。

 バトル要素は特に必要としてはいなかったのですが、人間模様のみを読むなら太宰治先生の作品でも読むわい、とか言われたらぐうの音も出ないので追加しました。


 テーマを取り扱うにあたって、重要にしていたのは、クロとシロの心境や行動の変化です。

 クロは、とても主体的な人間です。自分の経験を基に、自分が考えて、自分が選び、自分が全ての責任を負って動きます。

 反対に、シロはとても受け身です。何かあってから他人の意見や行動に従って動きます。

 クロとシロは、出来る限り対比で書こうとしていました。


 途中でヒーロが参戦します。

 実は、カクヨム様に載せる前に読んでもらったある方に、ヒーロが登場したことによって、クロの対比はヒーロになってしまい、シロの存在が薄れてしまっているとの意見をもらったことがあります。

 ぼくは思いました。


 うわぁ、その通りだなぁ。


 おれはヒーローにはなれないというクロが、ヒーロのことをヒーローと認めてしまっている、という書き方をしていたら、そうなりますよね。

 これは、完全にぼくの力不足です。


 執筆当時、ぼくの頭の中では、クロの反対は完全にシロであり、ヒーロではありませんでした。

 その理由としましては、クロとヒーロはあくまで、根っこも、幹まで一緒で、枝分かれした先の結論のみが違うという設定にしていたからです。


 ドクターが、クロとヒーロは馬が合うと思う、と言っていたのは似たもの同士であるからです。

 クロは、悪人に対して暴力で全てを終わらせます。悪人が許せず、過去の行いに対して、恐怖を与え、命をもって償わせるわけです。

 ヒーロは、悪人に対して、暴ではないものの、力を用いて解決し、過去の行いに対して、刑罰をもって償わせるわけです。

 対比されるシロは、そもそも力を使うという選択肢が浮かびません。完全な受け身の人間ですから、元より自分の働きによって反省させるという考えがないのです。

 似たもの同士であるからこそ、ヒーロは、クロの本音を引き出せるキャラ、として登場させました。

 クロの反対に位置付けられるのはあくまでシロ、という風にわかるよう書きたかったのですが、先程も書いたように、これは完全にぼくの力不足です。


 さて、ではテーマに沿って、クロとシロはどのように変化したのかというと、顕著に表れているのは最後のバトル前とエピローグでです。


 クロとシロは、ストーリー中、お互い密接に関わり合う過程で影響を受けていきます。

 ラストバトル前には、シロは完全な受け身の人間から、暴力による解決を自分はまだ実行する事が出来ないものの、その概要を容認し、クロにお願いします。

 ラストバトル以降は、全てを理解した上で、シロが自ずから強くなり、共犯者となることを望むという、主体性の発露について書いています。

 真っ白だった心に、黒いインクが一滴垂れました。


 反対に、クロはエピローグにて、シロやドクターといった、自分を支えてくれた者達を守り、恩返しについて考えなければならないと思考しています。

 相手から与えられる何かについて、そしてそれを大切にすることについて、重く受け止めているのです。

 真っ黒だった心に、白いインクが一滴垂れました。


 お互いに、完全に真っ白だった、もしくは、真っ黒だった心境、その境界線を越え、今後も混ざり合っていくわけです。

 というのが、クロとシロの変化であり、今作のテーマ、重要なストーリーのピースでした。


 構成やテーマについては以上です。

 実は、この作品は結構細かく色々と練り込んでいます。自分なりに。


 クロやシロのコスチュームが一番わかりやすいです。

 シロの本名は、白戌糸(しろいいと)です。

 犬やんけ。

 なのにどうして狐面なんだ。

 と思ったり思わなかったりしたかもしれません。

 これは、シロがクロの力を借りて物語を進めていくしかないことを意味していました。

 別に威張ってはいないのですが、虎の威を借りていたわけです。

 ストーリー上、仕方なかったんだものな。すまないシロよ。

 また、クロの普段は和装です。そこから、真っ黒な衣装に身を包みます。ご丁寧に覆面まで。

 これは、『和』を重んじているクロであったが、後天的に真っ黒な感情に覆われてしまったことを表しています。

 エピローグにて、真っ黒になってしまった原動力は怒り(真っ黒なコスチューム)、そのさらに奥、隠されていた、優しき頃の自分(和を重んじている本当の姿)的なことを書いています。

 そういう意味が込められていたりします。

 他にも、クロの癖であったりとか、作中色々仕込んでいます。


 もし読み直す機会がありましたら、ここってこんな意図があるのかなぁなんて楽しんでもらえたら幸いです。

 

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