第6話
期末試験が無事に終わると続いては球技大会だ。
球技大会は女子と男子に分かれてのクラス対抗戦だった。
それも全クラス総当たり戦ではなく負ければ終わりのトーナメント形式だ。時間の都合があるのだろう。
女子の競技はバスケットボールと卓球、男子は同じくバスケとサッカーだった。
バスケに参加していた私のチームと卓球に参加していたもものチームは共に一回戦で負けてしまって、私の勇姿をももに見てもらう事もももの頑張りを私が応援する事も出来なかった。
球技大会自体はまだまだ数時間も続くのにもう手持ち無沙汰となってしまった私とももの二人は体育館内の壁際に腰を下ろして、
「残念。負けちゃったねえ」
「ねー。あーあ。綾香ちゃんが試合してるところ見たかったなー」
「同じ時間帯の試合だったからねえ。そういう意味でもくじ運が悪かった」
「場所も体育館の一階と二階だったもんねー。同じ階だったら横目で見られたのに」
「自分の試合中に? 集中しなさいよ」
他愛もないオシャベリをしていると。すぐ向こうで関さんが一人、右に行ったり、左の方に来てみたり、そわそわ、うろうろとしている姿が見受けられた。
「あれー。何してるんだろー。関ちゃん」
関さんはももと同じ卓球のチームに参加していた。チームはトーナメントの一回戦で敗退だ。ももと同じ境遇である関さんもやる事が無くなっているはずなのだが。
私は「よッ」と立ち上がって、
「関さん。どうかした?」
と関さんに声を掛けた。ももが気にしていたからだ。
「え。あ、……別に」
関さんは私に振り向いてすぐにまた前を向いてしまった。
関さんの前方には生徒達の厚い壁があった。その壁の向こうでは男子達がバスケの試合をしていた。
ああ。なるほど。関さんは日高君の活躍を見守ろうとしていたのか。
「なにー? なにが見えるの?」
のんびりとももが私の隣にやってきた。
目の前に立ち塞がる生徒と生徒の間からその向こう側を覗き見ようとももが大きく首を傾げる。
偶然だろう。私の右肩にももの小さな頭がそっと乗せられた。
「えッ!?」
その瞬間を迎えて初めてももが首を傾げていた事に気が付いた私は、変な勘違いをして大きく驚いてしまった。勢い良くそちらを向いてしまった。
「えッ!?」という私の悲鳴に、
「え?」
と驚き返したももも同じように私の方へとその顔を向ける。
私とももは超が付くほどの至近距離から互いの目を見合った。
ももの目に映る私が私を見ていた。
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