第7話

 

「アーチャンも知らない子?」


 今日も妹と一緒に遊んでくれていたアーチャン・テイラーにも聞いてみた。


「えっと。知ってます」


「お。ホントに? 助かる。ありがとう。何処のなんて子だろう」


「名前はチャンウェイ・ウッズ。まちの東に住んでます」


「きのうきた子はわかるよ。ジルベルナール!」


 妹もアーチャンに負けじと教えてくれた。


「ジルベルナール・キッシンジャーです。まちの南にある、しっ地たいのかん理人の息子です」


 アーチャンが補足してくれる。しっかりした子だな。


 妹の信長が誕生日を迎えたばかりの7歳で、アーチャンは8歳。前世の記憶にある「学年」で言えば小学一年生と三年生か。


「えらいぞ、二人とも。じゃあ、その前とかその前の前に来てた子とか、分かるだけ書き並べてみるか」


 土の地面に木の枝で、二人が口にする名前を次々に書いていく。


 名前が出揃ったら、


「この中でこの子とこの子は友達同士だとか、そういうのは分かる?」


 互いの関係性を書き足していく。


 そうして出来上がった相関図は……スカスカだった。


「うーん」


 単なる名前の羅列というか箇条書きというか。


 家が近所だとか遠い親戚らしいだとかで薄っすらと繋がっている子も居るには居るが完全に浮いてしまっている子の方が多かった。


「誰かから始まって伝播していった流行りじゃあないのか……? 何の関係性も無い子達が同時多発的に信長にイジワルをする? そんな事があるのか?」


 シンクロニシティなんて概念もあるが「偶然」という言葉を安易に使う事は思考の放棄に繋がる。考えろ。考えろ。もっと考えろ。


 が幾ら考えても分からない。少なくともいまのところは。


 誰か大人に頼ってみるか? いや。オトナ的に考えるなら、もっと単純な「解決」方法を提示されてしまいそうだ。


 悪ガキどもの妹に対するイジワルを無くさせる一番簡単な方法は妹に標的とされているマントを着用させない事だ。家の外では。たったそれだけの事で良いはずだ。


 でも。それは違う気がする。


 妹の「織田信長」っぽさを肯定したいわけじゃない。むしろ否定したいくらいだ。


 ただその前世も含めて今のオダノブナガ・ベイカーなのだ。


 妹はただド派手はマントが好きなだけだ。


 他の子からの理不尽に押されて自分の好きを我慢する事は絶対に違うと思う。


 やめさせるべきものはマントの着用じゃなくてイジワルの方だ。


 諦めずにもう一度、考えてみよう。


 う-ん。何でこの悪ガキどもの矢印は信長に向いているんだ。


「もう少しヒントが欲しいな。大きなピースが足りてないって感じがする」


 この不完全な相関図の何処に「オダノブナガ・ベイカー」が入るんだ。


 何処に入れても不自然だ。



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