3話 ほのおのライオンさん
ウチはアレナちゃんを連れて、宛もなくブラブラと歩き続けてた。
「このままお家にいても私はつらいだけ。だったら…私、あんな家出ていく……!」
「あはは……」
(強いなぁ、この子…意外と芯が図太いというか……なんつーか……)
……さて、ウチには1つ気になる事があったんや。
いやまぁ厳密には2つやけど、今やのぅてもまぁええか……
「なぁアレナちゃん、そのソロモニアなんたらってなんなん?」
「ソロモニアなんたら……?」
あれ、おかしいなぁ……確かあのけったいなライオンが出た時……
『ソロモニア・コードNo.05承認、 『紅蓮の獅子王マルバス』、召喚シマス』
って言っとった気がするねんけどなー……だなんて考えとったら……
「んだよ……そんなに気になんのか?」
「どえりゃぁぁぁっっっ!?」
なんやこの渋い声!?どこや!?どっからや!?
「落ち着け人間……俺だ、マルバスだ…今は悪魔ノ
「わ……ライオンさん……!」
「あー、アンタやったかー……なんか安心したわ」
どーやらそのソロモニアなんたらってのは、ウチらの世界でいう……なんやろなぁ……バーチャルな感じのそれに近しい……
……割にはガッツリ実体化して戦っとったなぁ。
「まぁまだまだ謎なとこが多いし、マルバスっつーことはアンタみたいなんがあと71体おるんやろ?」
「……詳しいな…(あの蜘蛛野郎、今は眠っているのか…相変わらずいい性格してやがる)」
なんかライオンがウチの事をじーっと見とるが、ウチの顔になんかついとるんやろか。ふっふっふ、あるんは顔を構成するパーツだけやで!ニキビも肌荒れも無いで!
「ライオンさんみたいなのが、他にもいるってこと……?」
「まぁ、そういうことになるな」
このロリコンライオン、パートナーのアレナちゃんには甘いな……
じゃなくて、ライオンの言い方から見るに、マジでコイツらはソロモン72柱をオマージュしとるっつー訳か……この辺の真実を知らんことには、こっからのビジョンは見えへんで……!
「なぁライオン、この世界のありとあらゆる書物とかが残っとるとこって無いか?」
知識の集まる場所と言えば図書館!つーわけでライオンに聞いてみる。
だが帰ってきた答えは……
「ふんっ」
「あでっ!?」
悪魔ノ糧の液晶(と、思われる部位)からぬっと出てきたマルバスによる無慈悲なパンチやった。正直、ちょっと痛かったで…
「なんでや!」
「契約者以外の話を聞く気はねぇ!あと俺をライオンって呼ぶな!マルバスって言う立派な名前があんだよ!」
「……そうやったんか…ごめんな……」
「今知りましたみたいな反応するんじゃねぇ!」
はい、ウチが悪かったです。名前には沢山の想いが込められとるっておばあちゃん言っとったし……おばあちゃん、ホントごめんなさい……
……と、ここで意外な人が口を開いた。
「……もしかしたら……ヒヒイロの巨大書庫なら色々のこってるかも……」
なんとびくったことに発言主はアレナちゃんやった。
(ヒヒイロっちゅうんは……都市の名前か?)
ウチはとりあえず質問してみた。さっきもそうやけど分からんことがあったら質問する。おばあちゃんの教えや。
「なぁアレナちゃん、そのヒヒイロっつーのは街の名前か?」
するとアレナちゃんは弱々しく答えた。
「……うん。おうちの世界地図にあったの。ソロモニア王国の中心には、たくさんのご本があるおうりつとしょかん?があるみたい」
なるほどなぁ、そんな大層な図書館ならソロなんとかの事もわかるんやろうな…
「私の目のこと、知りたい。だから……お姉ちゃん、一緒にとしょかん、行ってほしい」
……そーいやこの前アレナちゃんは目がどうとかで親からひどい扱いを受け取ったなぁ…もちろん、断る理由なんざどこにもなかった。
「ガッテン承知!もちろんやで!」
「……え?がっ……え?」
「……何言ってんだお前」
どーやら異世界の方々は日本特有の言い回しが通じにくいみたいやな……穴があったら入りたい……
〜〜
「ヒヒイロは水のドームを超えた先にある街なの。そこに行くには…ここから少し離れた港町、サムアツで船にのらなきゃいけないの」
「おぉ、詳しいなぁ」
物知りなアレナちゃんの頭を撫でる。
……撫でたはええんやが……
(髪が……パッッッッッッッサパサや……!)
うせやろ……美容はちょっと嗜む程度やけどウチでもキューティクルがボロボロだってことすぐわかるで……マトモにお風呂も入れへんかったみたいやな……
気づけばウチは泣いとった。
「つらかったんやな……あれなぢゃん……」
「お、お姉ちゃん……大丈夫……?かお、すごいよ……」
アカンアカン、7歳の女の子に心配されてどうするアグリア!
……な、なんとか心を落ち着かせ、ウチらはサムアツの最寄り町であるダチマへと歩を進めるのであった。
〜〜
「へ?泊められない?」
「申し訳ございません……現在ここダチマはきゃあっ!?」
突如として現れた騎士達が、宿屋のお嬢ちゃんを攫っていく。あまりに唐突な出来事やったけど、流石にほっとくわけにはいかんかった。
「追うで、アレナちゃん!」
「う、うん!」
……今思えば、その選択は間違いだったのかもしれん。
〜〜
「ご苦労」
玉座でふんぞり返ってたんは、小太りな貴族風の男やった。しかもさっきの騎士が宿屋の女の子を献上したんを見るに、あの騎士は彼の命で動いとることがようわかる。まったく、親を泣かせるようなことするなやし…
「おねえちゃん……そんな高いとこのぼったら、危ないよ……」
ウチはネコの獣人になったのをええことに、一部始終をバカ高い木に登って見聞きしとりました。いやはや、飾りやないんやで、ケモ耳も。
〜〜
「っと……どーやらこの1件、貴族が絡んどるみたいやな」
「きぞく……うっ、あたまが…」
や、やばい……アレナちゃんのトラウマを刺激してもうた……!
「おい猫耳女、アレナ泣かすんじゃねぇよ」
「ほんますんません……」
ごめんなアレナちゃん。今度お菓子買ったるさかい。
「……ん?貴族……あの紋章、見覚えあるぞ……」
「おぉマルバス、なんか知っとるんか」
おぉ、珍しくマルバスがなんか知ってそうな顔しとる……うん、明日は雨やな!
「あぁ……と言いたいが、話は後だ。」
どういうことや…?と首を傾げていると、なんとウチらの周りを貴族んとこの騎士達が包囲しとった!
「あそこにいるのは悪魔の子、アレナ・スタークロウ!奴の首を取ればコズル様から褒賞金をいただける!覚悟!」
隊長格と思わしき騎士が剣を向ける。ヤバイヤバイヤバイ!!孤立無援、四面楚歌や!
「……アレナ!今から俺の言うことに従え!」
「え、ええっ!?」
なんやいきなり……何をする気やマルバス…!
「まずはゴエティアの画面を3回高速タップだ!」
「う、うん!」
いきなりゴエティア……つまり、腕の画面部分を3回タップしたみたいやけど……
「な、なんだ!?」
「じ、地面が光って……円を描いてる!?」
……ダメや、全くわからん…!ただゴエティアが光ってるのを見た感じ、マルバス的にはOKだったらしいな…
「よし……2桁の数字を入力できるな?『0』と『5』を入力するんだ!」
「0と……5!」
数字は悪魔の召喚コードらしく、コード入力が終わった時に地面を見ると、さっき描かれた円の中にたくさんの模様……要するに魔法陣が出てきた!
「そして叫べ!『ソロモニア・コード、エグゼキューション』!と!」
はぁぁぁぁぁぁっ!?なーにをふざけたこと言っとるんや!
「そ……ソロモニア・コード、エグゼキューション!!」
アレナちゃん……
「死ねぇ小娘!マジックコード『ファイアバレット』!」
剣から炎の魔法が放たれ、絶体絶命やった。
「ソロモニア・コードNo.05承認、 『紅蓮の獅子王マルバス』、召喚シマス」
「馬鹿な……火が、消えた……!?」
「…不味いもん食わせんじゃねぇよ、雑魚が」
でも、その炎は届かなかった。召喚されたマルバスが炎を食ったんや…!
「俺の能力は『熱の吸収と放出』…俺に火は悪手だ、冥土の土産に教えてやる」
「くっ……か、かかれ!」
「うぉぉ!!」
マルバス達に、騎士達が斬りかかる。ウチはその間に、アレナちゃんを連れて物陰に隠れた。
「アレナちゃん、声抑えとき。しーやで、しーっ……」
「う、うん……しーっ……」
正直な話、ウチらじゃ太刀打ちできへん。悪魔の手でも借りんと、この場を乗り切ることは不可能やな…!
「……その程度か…ロクに鍛錬も詰んで無いな?この前の王宮騎士の方がまだマシだったぞ……!」
「なんだコイツ!攻撃が効いてない!」
「そ、総員退避!逃げろ、逃げるんだ!」
騎士達の攻撃もマルバスには通じてへんらしく、逃げの一手を取る。
……が。
「逃がすか……『燃ゆる
生憎、悪魔と世の中はそんなに甘くない。マルバスは雄叫びを上げた後炎の壁を生成し逃げ道を塞いだんや!
「ま、まずい……」
「命だけは、命だけは……!」
「負けを確信した途端命乞いか……無様だな。まぁいいだろう、先程クソまずいとはいえ食事を与えた礼をせねばな」
「礼……?よかった、助かるんだ……!」
どうやら相手はバカやった……『礼』という言葉を馬鹿正直に捉え、助かったと勘違いし舞い上がってる。
「あ?誰が助けると言った?
……俺からの『礼』はこれだ」
マルバスがアレナちゃんに目配せをする。んでもって彼女を見ると……
「うわまぶしっ!」
またゴエティアが光っとった。
「……?アタックコード『灼熱の
……なるほど、お礼はお礼でも『お礼参り』の方だったり……?
「コンパイル……?さっきみたいにタッチしたらいいのかな……?
『灼熱の吐息』、コンパイル!」
アレナちゃんの判断は早かった。そしてマルバスは何かを受け取ったかのように一瞬目を赤く光らせ……
「礼として、我ら悪魔の炎を見せてやろう……『灼熱の
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
収束された炎のブレスを吐いた!アカン、ウチまた焼け死ぬんか…!?
(ただ結果オーライなことに、騎士達は全滅したみたいやな…)
なんて呑気な事を考えとる暇は無いみたいや…!
「おやおや、してやられるとは……全く、使えん奴らだな」
そこに現れたのはさっき見た小太りの貴族。手には何やら家宝と思わしき盾が握られとる…
「褒美に見せてあげよう!僕の悪魔を!そして君たちは僕の悪魔…否!この僕、コズル・イーダの力で死ぬことを光栄に思うがよい!」
腹立つやつやな…と思っとったが、次の瞬間、あのチビデブ……コズルはとんでもない事を言いおった!
「ソロモニア・コード、エグゼキューション!!」
To Be Continued
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