2話 ふしぎなともだち

「ねぇねぇお姉ちゃん」


「んー?どした?飴ちゃん食うか?」


 『悪魔の子』と呼ばれしいたげられた幼き少女、アレナ・スタークロウ。

そして、そんなアレナちゃんを成り行きで助けた『オオサカ』から来たアルティメット美少女ことこのウチ、アグリア・クローネ。

ウチは広大なソロモニアの土地を、アレナちゃんとただただ歩いてた。その最中に、アレナちゃんがウチにこんなことを問うてきたんや。


「お姉ちゃんのいたところの話、聞きたいな……」


 初めて見た時からそのかわいらしさと痛々しさからアレナちゃんに対し庇護欲がメラメラと湧いてきたウチは、そんな彼女のお願いを断れるはずもなく。


「……しゃーない、ちょっとなごなるで」


 ウチが『生前』いた世界、『オオサカ』こと大阪府の事を話し始めるのだった。


〜〜


2023年夏、大阪。


「いやー、亜久里氏!今期のアニメは豊作ですなぁ」


「せやろせやろ!特にウチのおすすめは〜」


「ふむ……亜久里氏もなかなかお目が高い……」


 ある高校にて、その少女……ウチの昔の名前、黒江亜久里くろえあぐりはそん時の友人と今期のアニメについて談笑しとった。何を隠そうこの亜久里ちゃん、齢17にしてアニヲタギャルだったんや。


「あぐち〜、今度どっか行こうや!」


「ええで!コスメ?服?食べ歩き?」


「うーん……どしましょか……吉本でも行こか?」


「なんでやねん!吉本ならオカンと月1で行っとったわ!」


 と、そんな自慢じゃないねんけどクラスの人気者だったウチの周りにはたくさんの友達がおった。


〜〜


「ただいまおばあちゃん。今日も楽しく生きたで」


 ウチは家に帰ったら何よりも先におばあちゃんの墓前に花を備え、手を合わせるんや。ウチ、大のおばあちゃんっ子やったからちっちゃい頃おばあちゃんが教えてくれた

『どんな人にでも優しくしなさい』

って教えはずっとずーっと、ウチの原典になっとる。


 ウチのおばあちゃん、黒江御船くろえみぶねは地元なら誰もが知る程のお人好しであり、齢103にして家族に惜しまれつつ天国に行った。その時誰よりも泣いていたのが、当時7歳だった頃のウチってわけや…


「ひっぐ、ぐすん…かあちゃん…おばあちゃん、どこ行ったの?」


「おばあちゃんはね、天国っていうところに行って亜久里を見守ってくれてるんだよ」


「てんごく?」


「おばあちゃんみたいに優しい人が行ける場所。亜久里ももしかしたら行けるかもね」


「うん、わたしおばあちゃんみたいな優しい人になる!」


 くどいようやけどウチがここまで優しくなったのも、優しいおばあちゃんの背中から色んなことを学んできたからや。


〜〜


 そして時は流れ、高校3年の夏。


「うへぇ…進路どないしょ…」


 ウチは自身の進路について悩んどった。と言っても、ウチこう見えて中身はかなりしっかりしててな、現在は保育士と介護士、2つの進路で悩んでたってわけや。


「せんせ曰く『亜久里は成績も問題ないし、何よりどっち行ってもその優しさで多くの人を笑顔にできるで。先生が保証したる!』

……なーんて言ってくれるんはごっつありがたいけど、『どっちでもいい』が一番困るねん…」


 …そないなこと考えとっても、結局答えを決めるんは自分なんよな……まぁええか、後悔の無いよう頑張らんとな!




……なんて思ってた日に、あんなことになるなんてな…



〜〜

 ある日、ウチの学校で調理実習があった。


その日がウチの命日やった。


〜〜


 きっかけは些細な事だったとしても、部屋ん中で火災が発生。みんな焦って右往左往してたけど、ウチはどこか冷静やった。


「こっちや!はよ逃げぇ……!?」


 ウチは叫んでしまったのが命取りやった。一酸化炭素を吸ってしまい、そっから動けんなった……が、目に見えたのは震えて動けない親友の白詰四葉しろつめ よつば。東京から引っ越してきた彼女はウチとは違って清楚可愛い子やったけど、ちょっと彼女には……いや、それはまた別の話や。とにかく、ウチは四葉をおぶって歩いた。ひたすらに歩いた。


 やっとのことで救急隊員に助けられた時、ウチの意識はもう限界やった。


……でも、後悔はしてない。むしろここで見捨てた方が、ウチの心に悔いを残してたかもしれへんねん……


「亜久里さん……!!なんで……なんで私を……!!」


「……きまっとる……さかい……ともだち……やから……な……」


「亜久里さん!目を!目を開けてください!!」


「よつば……アンタと2人で……原宿……いきた……かっ……」


 その言葉を最後に、なんも聞こえんなった……そう、ウチは死んだんや。


〜〜


「んで、気がついたらここにいたってわけや」


「アグリさん……いい人すぎる……わたしも、もっと早くそういう人に出会えてたら……」


「ほーう、力も魔力もない下等生物の割には見上げた根性じゃねぇか」


 ウチが話し終えた時、アレナちゃんは自分の境遇と重ねて泣いてたし、なんかライオンの……ソロモニア・コードだったか?のマルなんとかからは以外にも賞賛の声があがった。


「……ま、そんなこんなでこっからよろしゅうな、アレナちゃん!」


「うん……!」


 うん、可愛い。この笑顔はウチが守る!!

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