第12話 校長室のなぞ!


「いい、準備は整った」ユナは言った。

 健斗、ゆず、鈴木、田中は深夜の学校に足を忍び込ませていた。

「今から、校長室に隠されている、旧館地下室のカギを奪還するわ。いちよう言っておくけど、これは犯罪よ。罪なの! 万が一、捕まった場合は、退学もあるから、心して進むようにしなさい」

 四人はごくりと生唾を飲み込んだ。

「では、出発。

 一行は、深夜の学校に侵入すると、校長室まで向かった。その道中は、まるで遠足だった。ゆずは怖がりだったので、すぐ怯えて座り込んでしまうし、田中は記者魂が爆発して、静まり返っている学校で、健斗や鈴木に質問攻めにした。

 なぜ、質問攻めなのかと言えば、二人が以前に校長室に忍び込んだ経緯を知らなかった為だった。

「よし、やった到着したわ」

 健斗は校長室の扉に手をかけた。「あれ」

 あろうことが、扉にかがかかっていた。これは、以前なかったものだった。

「なるほどね」ユナは言った。「校長が、新しく鍵を取り付けたのね」

 場には、あきらめムードが漂った。

 だが、ユナはにやりと笑った。そして、足を大きく上げると、あろうことか校長室の扉を蹴り破った。

「う、うそ!」田中を含め全員が驚愕した。

「マジかよ」

 田中は、ノートとペンを取り出すと、詳細を書き加えた。

「さあ、これで障害は取り除かれたわ!」

 ユナは校長室に侵入した。 校長室に入ると、辺りは静まり返っていた。健斗は、部屋全体を懐中電灯で照らして、怪しげな場所がないか調べた。だが、見つからなかった。校長室は、校長の趣味の押し活アイドルのコレクションがあるだけで、それ以外に変わった場所は発見でなかった。

「ダメだ」健斗は吐息をらした。

「あのね、こういうのはね」ユナは言った。「怪し場所に、怪しいものが隠されている訳じゃないの。賢者は、森の中に何かを隠すっていうでしょう。つまり、怪しくない所に秘密があるのよ!

 ガチャ。フィギアに触れていると、そのにスイッチにふれた。

「やったわ。こういうことよ」

 視界の先に、地下室の扉が開かれた。

「うわぁ、すげぇな」

 一行は、開かれた重圧の広がる地下への階段に見とれた。

「行くわよ」ユナが一歩歩き出した。

 次の瞬間、仕掛けが作動した。校長室の扉が外から閉ざされ、一行は地下室に閉じ込められてしまった。内側から扉を開こうにも開かなかった。

「これは、内側から平中仕組みになっているのよ」ユナは言った。

「出られなの?」

「そんな事ない」ユナは言う。「こういうのはどこかに仕掛けがあって、きっとこの辺りに解除のレバーがないって事は、奥にあるスイッチを押さなければならないのよ」

「つまり、先に進むしかないって事だよ」健斗は言った。

「奥に進んで、会場スイッチを探しましょう」

 次の瞬間、またしてもアクシデントが起こった。突然、足もとの階段が沈んで行くと、足もとの階段が滑り台のようにすべった。

 一行は、滑り台を下りるように、地下深くへと落ちて行った。その途中、ひと際、壮大な扉を見た。

 これはきっと、正解ルートへと繋がる扉に違いなかった。

 一行は、滑り台を地下深くまで滑り落ちていくと、底へとたどり着いた。

「いってててて」健斗は起き上がった。

 一行も起き上がった。

「全員無事?」ユナは全員に対して確認した。

 ゆずだけが涙目で大丈夫だと訴えた。

 他は全員、平気そうだった。

「いいわね。みんな無事なら、ここから脱出するわよ。勿論、ここに隠されたカギも取って持ち帰るわよ」

 ユナだけは、元気いっぱいだった。健斗は、考えていた。この仕掛けは、少々やりすぎな気がした。学園には、生徒がいる。生徒がいれば、悪戯する者もいるだろう。それなのに、これだけの大仕掛け。

 一体、校長は何を考えているのだろう。

「行くわよ」

 一行は、奥に進んだ。すると、そこには、霧が立ち込めていた。黒く、深い霧だった。それは、地下の奥底から湧き上がるガスだった。そこには何がいた。

 それは、身体をうねらせると、地中深くにもぐった。

「危ない」ユナは叫んだ。そして、みんなの前に立ちふさがった。「ちょっと、何か得体のしれないものが、霧とともに襲って来るわ!」

 やがて、霧が辺りをおおって行き、やがて霧に潜む何かユナがやられた。

「うぅ」ゆずが駆け寄った。「私たちを守るために……」

 ゆずは涙を流した。

 田中と、鈴木はどうしていいか分からず、立ち尽くした。

 健斗は咄嗟に、田中と鈴木に指示を出した。「田中くん、あれの情報分析をお願い。鈴木は能力を使って、この状況を打破できるものを探して」

 ゆずには、倒れたユナを見ているように言った。

 健斗は、走り出すと、黒い霧を引き付けた。あれには、何かが潜んでいる。今は、みんなに任せて、自分があの霧を引き付けることに集中した。

 しばらく、逃げながら、時間を稼いだ。だが、少しずつ追い詰められていった。

「鈴木どう?」

 鈴木は、姿を消していた。

 田中は言った。「鈴木は、みずから解決策を探しに飛び出して行った!」

 健斗は闇の中かから潜む霧から逃げ惑った。

 田中が指示を出す。「健斗、その霧は音に反応する様だ。だから、動きを止めて呼吸も最小限に抑えろ」

 健斗は息を止めて、その場に立ち止まった。すると、黒い霧の怪物は、動きを止めて動かなくなった。

 だが、緊張に萎えられなくなったゆずが大きく呼吸した。次の瞬間、霧の化け物は、ゆずと、ユナの抱えられている場所向かって動き出した。

 健斗は、声を上げた。「こっちだ!」

 彼女たちに手出させない。

 すぐに後ろを振り向くと、走り出した。走り出した方向は、みんなのいる場所から正反対の方向だった。辺りは、暗かった。それぞれ懐中電灯を持っていたので、その灯りだけが手がかりだった。辺り暗く、迷路のように通路が伸びている。部屋が幾つもあって、それらは無人になっている。

 健斗は櫃の部屋に逃げっ込んだ。息を止めて、気配を消した。だが、霧の怪物も配を辿って迫りかかった。健斗は、息を止めたまま、やり過ごそうとした。だが、怪物も獲物を捕らえようと、迫った。

 もうダメだ。怪物が、面前まで迫って来ていた。

 健斗は、足もとに落ちていた四角いものを投げた。怪物は、その方向に向かって、消えていった。

 健斗は、仲間のもとへ戻ると、ユナの体調を気遣った。「大丈夫かな?」

 ユナは地面に横向けに寝かされている。

「大丈夫じゃないです。腕の切り傷から、毒のようなものが回って、苦しそうです。このまあじゃ、彼女のどうなるか」ゆずは顔を両手で覆った。

「大丈夫、絶対にぼくがどうにかするよ」

 田中がやって来た。「このままじゃ、あいつがまた戻って来るぞ」

 鈴木は、一冊の本が握って戻って来た。本には『化け物の討伐方法』と、あった。「やったぞ、これがこの地下室に仕舞われていた!」

「仕舞われていた?」健斗は早口で尋ねた。

「ああ、ここどうやら学園の保管庫らしい。難しい資料や、何年も前の日記帳なんかも収められていた」

「それで、それは」健斗は言った。

「分からない。とにかく、これに俺の能力が反応した!」

 健斗は開いてみた。すると、十年前の日記が記されていた。『化け物が出た。化け物は、素手や、物理攻撃では死なない。倒す方法が一つ見つかった。その方法は……』

 霧の化け物が姿を現した。

「くそ」健斗は、ふたたび囮になるべく走り出した。

 鈴木が、文章を読み上げる。「健斗は、これによれば、霧の化け物は、能力でしか倒せないらしい」

「能力ってなんだ!?」

 健斗は、霧の化け物の攻撃をかわした。そいつは、姿を変え、巨人へと変化した。全身は変身できず、両腕だけの化け物だった。

 それは、両腕で健斗を押しつぶそうとした。健斗は、かろうじて避けた。身体つんのめって転んだ。

 鈴木はぶつぶつ言葉を発した。

「何、聞こえないよ」

 鈴木は、本に記されている何用を理解するのに時間を要した。

「俺に課せ」田中は鈴木から日記帳を奪った。「俺に任せろ、俺は記者だぜ。情報を整理したり、集めるのは得意だ!」

 健斗はその間、霧の化け物の攻撃をかわした。

「早くしてくれ」

 田中は情報をまとめ、読み上げた。「簡単に説明するとだな」

 健斗ころで化け物に押しつぶされそうになった。

「よけろ」

 転がって裂けた。

「それで、倒し方だけどな」

 次の瞬間、健斗は化け物の両手に押しつぶされた。腕が折れ、足が動かなくなった。肋骨の骨も何本か痛め、ほとんど身体動かなくなった。息が出来ない。もう体を動かすことも出来ず、倒れ込んだ。

 意識が遠のいた。最後に見た映像は、仲間の心配そうな表情だった。




「起きなさい、健斗」

 健斗はその者の声によって目を開けようとした。しかし、精神が何処か気持ちのいい場所に運ばれているような気がして、目を開けられなかった。

「起きなさい」



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