第10話 ミステリー研究部


 翌日、ベッドから起きると、朝食を食べに向かった。

「おはよう」ユナは隣のイスに座った。

 健斗は朝食の乗ったプレートをもって座った。「おはよう」

「昨日はどうだった?」

 脇に置いてあったレポートを差し出した。

「これ?」ユナは驚いた。「校長室に侵入したの?」

 学生寮では、人の目があるので、ユナは健斗に対して、気を使っている。というのも、ユナは表面上美少女で、優等生だった。

 でも実際は、性格のねじれた悪の女王だった。

 現在は、それを隠すため、健斗が悪の大王で、ユナが虐げられる女の子を演じている。

「昨夜、校長室にちゃんと侵入したんだ」

「あんた、やったのね。はったりだと思っていたわ!」

 健斗は昨夜の経緯を話した。

「それ本当なの!?」ユナは言った。「よく、逃げ延びれたわね」

「苦労してい手に入れたのがそのレポートなんだ」

 ユナはレポートに目を通した。まだ、健斗も詳しくぜんぶは読んでいない。

 二人は、しばらく黙り込んでレポートに目を通した。

「これによると、数年ほど前にミステリーサークルの部員全員が失踪したとあるわね。詳細によると、ミステリーサークルは、七不思議の七番目のを見つけたとあるわ。それと、あの地下室の扉の鍵とどうつながるのかしら?」

「ここを見て」健斗はレポートの一画を指差した。そこには、『失踪した生徒は、全員、ユグドラシルの木の根元で発見される!』 と、あった。

「ユグドラシルって、えっと、そう……。確か、この学校にある、願いの木のことだわ!」

 二人は、朝食を食べる、学校へ行く前の時間を使ってそこへ向かった。

 そこからは、朝の部活の練習する生徒の姿や、キャンバスで絵を描く生徒の姿が見えた。

「ここよ」ユナは言った。

「ここが願いの木か」健斗は木を見た。大きく天に向かっての伸びている。「この木の根元で、生徒が発見された……」辺りに何かないか探した。すると、木の幹に彫られた傷跡があるのを発見した。

「なになに」ユナは読み上げた。「七番目……旧校舎にある!」

 二人は、慌てて旧校舎に向かった。それから、旧校舎を見て回った。だが、旧校舎のどこを探しても、七番目の手がかりは見当たらなかった。




 放課後。旧校舎に鈴木すずきを呼び出して、能力を使わせた。

 その結果、手がかりは、やはり旧校舎になると告げられた。だが、旧校舎にどこにあるのか分から発見できなかった。

 その日はそれで解散となった。

 それから、数日が過ぎたが、新たな手がかりは見つからなかった。

 そんなある日、健斗は以前知り合った占い部に向かった。そこには部長のかながいた。彼女の能力は、未来眼だった。

 未来を見通せる。

「あの」健斗は尋ねた。

「何か知りたい事でもあるの?」かなは椅子に座って水晶に手をあてた。

「君の能力で、過去の未来を見ることはできる?」

「過去!?」かなは驚いた。自分の能力は、未来を見ることだった。ある意味、未来と過去は似ている。因果で結ばれていると考えられる。つまり、それだけ関りが深く、もしかしたら未来だけでなく、過去の様子を見ることもできるのではないかと推測した。

「よければ、数年前のミステリー研究部の過去のを見てくれない?」健斗は頼み込んだ。

「で、でも、やったことないですし」

「試すだけでいいから」健斗は言った。「ぼく、この学校の七不思議のを解きたくて。だけど、行き詰っていて」

「試すくらいなら」カナは肩をすくめながら承諾した。それから、過去のミステリー研の様子を思い浮かべながら、目を閉じた。

 次の瞬間、二人は、数年前の過去のへと落ちて行った。



「ここは」健斗は目を開けた。

 そこは数年前のミステリー研の部室の前だった。そこには、男女合わせて六名が図書室のイスに座っており、何やら話をしていた。

 話を聞くと、七不思議の七番目について話している。

「とうとう見つけたわ。七不思議の七番目!」

 健斗は耳を疑った。部長らしき少女がそう宣言した。そして、そのまま、聞き耳を立てていると、少女は言った。

「七不思議の七番目は、この学園にはないのよ」

 健斗はまたしても耳を疑った。

「この学校は、作られて間もない。だから、階段自体がまだ出来上がっていないの。だから、この学園には六番目までしかないのよ。だから」少女は言った。「わたしたちが作るのよ、それを広めるの! さいわい、旧校舎には怪談話が存在してない。だから、この校舎にちなんだ七不思議を作りましょう」

「どんな不思議を作るの?」

 部員たちはさも面白そうに談笑している。

「七番目の不思議は、旧館の地下室よ」

「旧館の地下室!?」

「そう」少女は言った。「北側にある倉庫のがあるでしょう。そこに地下室があるのを知っている? そこを七不思議にするの。どう、面白そうじゃない?」

 それから部員たちは、あれやこれや知恵を出し合って、七不思議な何番目を作った。それは、旧館の地下室には、秘密の入り口があって、そこを降りて行くと、死者の世界が広がっている。そこに行った者は、二度と戻ってこないなどとまとめられた。それはノートにまとめた。

 健斗は、まざまざと七不思議の七番目が作られる現場を目的した。それから、背景が急にとんだ。

「う、嘘よ」

 今度は、部長を含め、部員たちがあの小部屋の前に立っていた。そこには旧館にある地下室の扉が開かれており、その下をのぞき込むと、地下へと繋がる階段がのびていた。そのうち、団員の一人が、突然地下の奥底から伸びてきた黒い手に引き込まれていった。

 そして、つぎつぎと、部員たちが地下へ飲み込まれてしまった。

 健斗と、占い部の部長は、過去の映像を見ながら驚愕した。何だ、これは? 現実、それとも幻覚を見ているの……?

 そして、最後の場面に飛ばされると、、生徒六名が失踪し、見つけ出されたとき、彼女たちは、意識を失くし、気絶していた。その場所は、ユグドラシルと呼ばれる木の根ものだった。

 それ以降、旧館は閉鎖となり、地下室には鍵がかけられ封鎖された。そのとき、校長の姿があった。校長は、一人旧館へと向かい、南京錠のカギをかけた。

 旧館の地下室に鍵をかけたのは、校長だった。当時は、まだ校長ではなく、いっぱしの教師のようだった。

 健斗と、占い部の部長は、過去から帰還した。

「みた!?」健斗は、声を上げた。

「ええ。わたし、こんな能力があったなんて」

 占い部の部長は、自分の開花した新たな能力に驚いていた。

「わたし凄いわ!」

「本当にすごい」健斗は頷いた。「君の能力は現在を越えて、過去を見通せた。それもあんなにはっきりと」

「あなたのおかげよ」部長は言った。「あなたのおかげで、あわたしの能力が開花したのよ。本当に凄いことだわ」

 そう言ってから、占い部の部長は、倒れた。健斗は彼女を受け止めて、それから保健室へとは運び込んだのだった。




「それで」ユナは言った。

 健斗は見てきたことをユナに告げた。

「つまり、七不思議の七番目を作ったのは、過去のミステリー研の人たちだったのね。そして、地下の鍵の封鎖をしたのは、今の校長。つまり、閉鎖された地下室のその鍵を持っているのも、校長って訳ね」ユナは首をひねった。「でも、レポートには詳細は記されていなかったのはなぜかしら?」

「とにかく、あの扉の鍵は、校長が持っている!」

 ユナはにやりと笑った。「なら、やるべきことは一つね」

「もしかして」

「そうよ」ユナは髪をはらった。「『探検部』総動員で、校長室から、地下室のかぎの奪還を行うわ。今夜よ! 準備しておきなさい」

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