第9話 七不思議を追って
四人は新校舎へとやって来た。
時刻は、夕方を迎えていた。
「時間がないから、さっさと終わらせちゃうわよ」
四人が入ったのは、新校舎の二階の一室だった。そこは、占い部があった。三人の生徒がいて、黒い三角帽と、黒いマントを羽織っている。
「どちら様」奥に座った少女が言った。
ユナはが事情を説明した。
「ほう。学園の七不思議について知りたいと」少女は言った。「なら、私が適任ですね。わたしは、かな。この占い部の主将を務めています。それから、私の能力は、未来眼です。でも、能力が低いので、ちょっと先の未来を
ユナは言った。「なら私の未来を占って」
「いいでしょう」かなは未来を占った。「あなたには、大いなる災いが降り注ぐであろう!」
ユナはかなを
涙目になった。「あなたが占えと言ったのに……」
「わたしは、私にメリットある事だけにしか興味ないのよ。それより、この学園に七不思議があるのを知っているでしょう。早く教えて頂戴!」
カナは話した。学園についての七不思議について。「七不思議は、その名の通り、七つあります。ですが、七つのうち六つはよくある話です。一段増える階段。音楽室のベートーベン。動かずの時計。血みどろの池。トイレの花子さん。二宮金次郎像。これらはよく聞く話です。問題なのは、誰も七番目の七不思議を知らない事です」
ユナは尋ねた。「誰も知らない?」
「そうです」カナは頷いた。「七不思議の七番目を誰も知らないことが問題なんです。噂によれば、七不思議の七番目を知った者は、死への扉が開かれると聞いたことがあります。……つまりは、死ぬという意味かと」
健斗は体が震えた。「本当に死ぬの?」
「噂では。でも、誰も
ユナはにやりと笑った。「面白そうじゃないの。わたしたちで、その七番目のなぞの正体を突き止めようじゃないの!」
健斗にはその道筋が見え始めていた。
「でも、誰も知らない謎なんですよ」かなは言った。「一体どうやって、七番目のなぞの正体を知るんですか?」
にやりと笑う。「うちの部には、便利な人材がいるのよ。ねぇ、鈴木君、能力を発動させて」
鈴木は目を閉じると、感覚を探った。
そして、導き出した答えは、校長室の方角にあった。この学園にも例外はあった。例外は、基本的に大人は存在しない学園都市内だったが、主要なポジションには大人が存在しているということだ。この学校で大人が素材する場所は、校長室と、理事、あとは数人の役員だけが存在していた。
「校長室!」ユナは頭をふった。「あの場所は、いくら私でも入れない。校長先生は、威厳があって、威圧感もある。それに私の直感が正しければ、何か特別な力を持った存在感のように思える!」
「そうなの?」健斗は言った。
「そうよ。あそこだけは突撃できない!」
「君らしくない」
「私にだって、無理なものは無理よ」
健斗は頷いた。「僕が調べて来るよ」
「本気なの!?」
田中は言った。「俺も行く!」
「何よ、二人とも。気でも狂ったの!?」
健斗は田中と目を合わせた。二人は、先週の休日一緒に過ごしていた。そのとき、健斗は退屈を嫌い、田中は特別になりたい人間で、知識欲を持ち合わせていた。このまま何もせず、退屈に過ごすのは耐えられなかった。
「やる気が出てきた」
「俺も、何もしないで、いつもユナの尻に敷かれているのはごめんだね」
二人は笑った。
「いいわ。この作戦は二人に任せる」ユナは言った。「いい作戦は、鈴木君が教えてくれたように、手がかりが校長室にある。その手がかりを入手してきなさい! いいわね、分かった?」
健斗と田中は頷いた。
作戦は深夜行われた。
「おい、俺たちまマズくないか?」田中は言った。
「正直まずい」健斗は深夜の学校で息を
悪だくみをして、深夜の学校に忍び込んだ上に、校長室に侵入しようとしている。
「捕まったら、俺たち退学だぞ」田中は言った。
懐中電灯で照らしながら呟いた。「絶対に捕まらない!」
「俺たち、悪になっていない?」
「うん。悪だな」
「これ、ユナさんの影響かな」
「絶対そうだ。あれは悪の女王だ」
二人は頷き合った。
それから、薄暗い廊下を歩くと、校長室の前までやって来た。深夜の学校は静かだった。物音一つしない。辺りは静まり返って、
「とうとうやって来た」健斗は扉の前で立ち止まった。
「開けるか?」
「うん」健斗はとびらを押し開けた。中にはただ暗い空間が広がっていた。二人は、校長室へと侵入した。
「怪しげな金庫発見!」田中は言った。
「開けられるかな」健斗は、金庫の前まで移動した。金庫に触れてみたが、ロックがかかっていて開けらなかった。
「困ったな」
健斗は校長室のデスクを見た。デスクの上には、レポートが置かれていた。レポートを読んでみると、最近頻発している生徒の
「何か、関係がるのかな?」健斗は考えた。
「いや、考えすぎだって。それより、金庫のかぎを開けないと」
部屋を懐中電灯で照らした。机の上には、校長の趣味の、
「まさかね」健斗は押し活のアイドルの誕生日を入力した。すると、ダイアルキーが回り、ロックが解除された。
「すげぇ。まさか、押しの誕生日だったとはな」
健斗は金庫を開けた。すると、金庫の中から極秘の資料が出てきた。資料には、『学園の七不思議』というタイトルが記されている。内容には、数年前、ミステリーサークルなるものが学園で立ち上げられ、その生徒たちが失踪したという事件の詳細が記されていた。
「これって?」健斗は衝撃を受けた。
「これって僕たちが調べている事だよね」
「うん」
そのとき、扉の外で気配がした。
健斗は、咄嗟にデスクの下に隠れると、その人物を盗み見た。それは校長だった。手には、ランタンをぶら下げ、見回りをしていた。どういう訳か、宿直をしているらしかった。
校長は、部屋の中を見回った。「確か、光が見えた気がしたんだが……。誰かいるのか!」声を張り上げた。返事はなかった「いや、あの光は間違いない。誰かいたんだ。出てこい。とっ捕まえて、お仕置きしてやる!」
健斗と田中は、怯えた。怯えながら、机の下で震えた。
やがて、校長は、部屋を見回り始めた。応接室は繋がっていたので、校長室を見回した後、応接室に向かった。
健斗はその隙をついて、開け放たれてた校長室から出た。
「誰だ」校長は気配に気づいた。「誰かるのか!」
健斗は走り出した。その後を追って田中が追う。さらにその後を追って、校長が、追った。
「逃げるな! 見つけて、お仕置きしてやる!」
二人は、逃げた。途中、倉庫や、開け放たれた教室に教卓の下に逃げ込んで、ピンチから逃れたのだった。
逃げ切ったとき、二人は汗びっしょりだった。
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