第8話 探検部!


 月曜日の放課後。

「集まったわね」ユナは言った。

 場所は旧館図書室。集まったメンバーはユナを含め、健斗、田中、鈴木、そして花咲ゆずだった。

「まずは、正式に『探検部』が承認されたことを報告するわ」

 一同は、軽く拍手した。

 ゆずは、半場強制的に入部させられているので、手放しでは喜べなかった。

「これからの活動目的だけど、この旧館図書室を部室として、旧館に潜む危険の探索に乗りだ出そうと思うの! ここまでで何か質問はある?」

「わ、わたし、他にも入部している部が」ゆずが言った。

「退部しなさい」ユナは言った。

「そ、そんなの無理ですよ」

「無理じゃない。それとも、私が直接乗り込んで潰してほしいの? 具体的には、わたしは学園的な人気者なのよ。つまり、私の一声でその部を廃部に追いやることもできるのよ。もっとも、わたしの奴隷である、健斗が乗り込むことになるけど?」

 ゆずは、睨まれてしゅんなった。

「分かりました。退部してきます」

 健斗はフォローしようとしたけど、ユナににらまれて黙らされた。

「では、活動日だけど、基本、毎日よ。いちおう言っておくけど、土曜と、日曜以外の学校がある日は、すべて活動するからね。絶対に、サボらないように! 万が一、休むときは、健斗に連絡するように。ゆずはクラスが違うから、携帯で連絡入れときなさいよ、分かったわね!」

 前置きはこれで終わり、本題となった。

「では、旧校舎に潜む危険の正体を探索するわよ」ユナは言った。「では、どうやって調べるか考えなさい!」

 健斗は挙手した。「ゆずの能力を使ってもう一度、探索してみる?」

「それなら確認したわ。間違いって事もあるかもしれないから」ユナは言った。「あなたたちがいないときに、彼女の能力を調べておいたの。そしたら、彼女の能力は、大雑把おおざっぱに危険な場所にある方向をを突き止めるけど、はっきりした場所は特定できないの。それから、鈴木の探し物の能力だけど、これも大雑把で特定には至らなかったわ。でも、色々ためした結果、危険はちゃんとあることは分かったわ」

 一同は頭を悩ませた。

「なら、自力で調査するしかないな」

 一同は、ユナを先頭に旧館の調査に乗り出した。旧館の調査は困難を極めた。今現在、旧館は使用されていない古い建物だった。建物はきしみ、床や、扉が古びてくさり始めていた。

「本当に古い建物だね」健斗は言った。

 田中は言った。「俺の調べた情報によれば、この建物は都市計画が始まる前からあったらしい」

「らしいって?」健斗は尋ねた。

「情報自体が、あやふやなんだ」

「つまり、噂のいきを出ないって事ことか」

 ユナは言った。「これだけ古い建物って事は、何か想像を絶するような危険が潜んでいても不思議じゃないわね」

 健斗は尋ねた。「例えば?」

「歴史ある建物には、自殺した生徒の背後霊として出たり、呪われた場所が存在するものなのよ」

「この旧館に?」

「そうよ。もしくは、日本はかつて、戦争をしたことがあるわ。って事考えると、不発弾や、毒ガスが埋まっている事だってあるかもしれないわよ」

 ゆずは震えた。「こ、怖いですぅ」

 鈴木は肩をすくめた。「大丈夫ですよ。まだ、そうと決まったわけじゃないから。あくまで、仮定の話しだよ」

 それでも怖いのか、ゆずは身体を震わせていた。

「んっ!? あれ何かしら」ユナは北側の奥にある倉庫で足を止めた。「いかにも怪しげな部屋があるわ」

 健斗は足を止めた。「電気がつかないから、それっぽく見えるだけじゃないの?」

「そうかしら。この部屋だけ、妙な位置取りよね」

 見ると、後から増設、補強されたような違和感のある部屋だった。

「確かに意味ありげだ」

「じゃあ、入ってみますか?」鈴木は言った。

 一行は、ユナはを先頭に突撃した。あらかじめ用意しておいた懐中電灯で部屋を照らす。部屋は、ほこりっぽく、一歩歩くたびにきしんでだ。

「あそこに何かるわ」ユナは目ざとく、床にあった隠し扉を発見した。

「こ、これは」健斗は驚いた。巨大な南京錠と、くさりでロックされている。何か、意味ありげな雰囲気をかもし出している。

「な、なななんななんですか!?」ゆずは腰を抜かした。

「落ち着いて」鈴木は言って、ゆずを支えた。

「あ、ありがとうございます」

 健斗はセキュリティーを見た。南京錠がかかっていて、びくともしない。

「鈴木君、能力使って」ユナは言った。

 鈴木は能力を使うと、危険の方向を察知した。

「この先です」

「ゆず、あなたの能力を試して」

 足もとにある扉の先に危険が潜んでいることが判明した。とはいえ、ロックの解除はできなかった。つまり、扉を開くことはできなかった。

「次、鈴木君、ロックの解除の在りかを探して」

 田中は、静かにノートを取り出すと、メモを取った

「何やっているの?」健斗は言った。

「メモを取っているのさ。凄い発見かもしれない。このスクープの逃したら、記者失格だぜ!」 

 田中は学園新聞の記者だった。

「分かりました」鈴木は言った。「脇にある小部屋こべやの方向です」

 一行は同じ室内になった小部屋に向かった。

 部屋に入ると、棚があった。その中に、一冊の手帳が紛れ込んでいた。赤い古ぼけた手帳だった。

「年代ものね」ユナはい手帳を手に取った。

 懐中電灯で照らす。「えっと、手帳のよれば、えっと……今から三年前に、ここ来た学生がいたみたいね」

 健斗は手帳をのぞき込んだ。「なになに、手帳はその生徒のものか」

「記されている内容によれば、手帳の持ち主たちは、さっき見た南京錠でロックされたとびらを開けようとしたみたいね。でも、ダメだったみたい。理由によれば、南京錠のロックを外すためには、カギが必要みたいね。その鍵を手に入れるには、なぜかこの学園にまつわる七不思議をすべて見つける必要があるらしいわ。でも、最後の部分だけ、後から付け加えられたように記されているわね」

「なぜだ」健斗は首をひねった。

「たぶん、この日記の持ち主たちも能力者だったに違いない。つまり、能力を使って何か調べたんだろう」鈴木は言った。

「わたしが言っているのは、なぜ七不思議と説くと、南京錠が鍵が手に入るかよ」

 鈴木は肩をすくめた。「それは分からないけど」

 健斗は頷いた。「でも、あれを開けたければ、この学園にまつわる七不思議を調べるしかないみたいだ」

 いったん四人は部屋を出た。外に出ると、新鮮な空気をすった。旧館は息がつまった。電気もつかない古い建物なので、知らず知らずのうちに、圧迫感を受けていた。

「私たちのやるべきことが分かったわね」ユナは言った。

 健斗は頷いた。「旧館に隠された危険を突き止めるためには、南京錠でロックされた扉を開けるしかない。その為に、学園の七不思議を突き止めなくちゃ!」

「方法は?」

 田中は言った。「鈴木の能力だ」

「ご名答、田中君。じゃあ、鈴木君に頼むわね」ユナは言った。

 鈴木が能力を使うと、新校舎の方角が指し示されたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る