第2話 いざ侵入!


 車に乗って二時間。静岡県に設置された高い塀に囲まれた学園都市までやって来てた。そこは、背景に霊峰れいほう富士がそびえ、広大な自然が横たわっていた。

 車は軍が守る国境を越えて内部へと侵入した。内部へと侵入するにあたって、いくつもの検問を突破した。

「下りたまえ」サングラスの男は言った。「これから、数年か過ごす場所にたどり着いたぞ」

 健斗は車から降りると、眼前を見た。そこには巨大な高層ビルが立ち並ぶ学園都市があった。「うわ凄い!」

「当然だ」男は言った。「最新鋭の施設が用意されている。移動用ロボ、配達用ロボ、警備用ロボ、あらゆる知能を結集した水位がここに集められている!」

 感嘆の声を上げた。「東京の街でもこんなもの見たこと無いよ」

「当然だ。わが国の水位の結晶が集めらえているのだからな」

 二人は歩き出した。そして、最後の検問を終えると、男は言った。

「ここからは一人で行くんだ。行先いきさきは、ロボットが教えてくれる!」

 ロボット見た。ロボットは、自動で動いている。「目的地まで案内してくれるの?」

「そうだ。目的地と言っても、これから住むりょうに行くだけだ。では、お別れだ。短い間だったが、楽しかったぞ」

 男は背を向けた。

 健斗は歩き出した。ロボットについて行くと、十分ほどでりょうについた。

「見慣れない顔ですね」女は言った。

「今日からここに越してくることになったものです」

「身分証を見せて」女は言った。「ああ、あなたが」

「ぼくのこと知っているですか?」

「勿論。知らせは受けているわよ。わたしはサヤ、りょうの管理ををしている者です。あと、同じ学校の三年生です」

 健斗はきょとんとした。「三年生?」

「ああ、分からなくて当然よね」サヤは言った。「ここ学園都市には子どもしかいないのよ。だから、ここの寮の管理も、街の至るとろこの業務なんかも、すべて子どもたちがやっているのよ」

「すべてですか?」

「そう。すべて。ここはそう言う場所よ」

 サナは身分証を返した。「今日は、疲れているでしょうから、この書類にだけサインして。そしたら、あなたの部屋へ案内するわ」

 健斗は書類にサインした。サヤは書類を受け取ると満足そうに微笑んだ。

「では、寮に案内します」

 サナは中を案内した。風呂、トイレ、屋上露天風呂、購買こうばいなど、りょうには何でもそろっていた。建物もそうだったが、まるでアンティーク調の洋館で、内装も十六世紀の中世風の屋敷だった。

「凄いですね。この寮は」

「特別製だからよ」

 健斗は首を傾げた。「特別製?」

「そう。このりょうは、選ばれしもののりょうと呼ばれているわ。あなたはまだ分からないかもしれなけど、この学園都市には、才能ある子どもたちが集めらえている。その中でも特質すべき子どもがこの場所に住んでいるの」

「特質すべき?」

「そうよ。能力値の高い子供たちのことよ」

「ぼくもなんですか」

「ここに呼ばれた以上はそうなるわ」サヤは振りかえって微笑んだ。「あなたは、もっと喜ぶところよ。他の子どもたちからしたら、憧れの場所なんだから。それと、他の子どもたちは、ここよりもうもう少し普通のりょうで暮らしをしている。ここに住む住人は、学園でも人気を持った子たちや、憧れの対象者であったりするの。だから、ここに住むということは、それだけで特別なのよ」

 頷いた。「ここに住めて、光栄です」

「あなた、どんな才能を持ってここに来たの?」サヤは言った。

「さっぱりなんです」

「そうなの?」サヤは首を傾げた。

 健斗は事情を話した。今日突然、サングラスの男がやって来て、ここに連れられてきたことなど話した。サヤは面白そうに聞いていた。

「そうだったの。大変だったのね。じゃあ、今日はゆっくり過ごすといいわ」

 健斗は、部屋をあてがわれた。三〇二号室だった。扉を開けると、広々とした部屋に、机、ベッド、トイレ、風呂付の部屋が現れた。マジか。健斗は感嘆の声を漏らした。これは、とっても十一歳の少年の部屋じゃなかった。

 サヤと別れてから、一人ベッドに倒れ込んだ。これから、数年間ここで暮らして行くと思うと、ワクワクした。それと同時に、不安が押し寄せた。両親と離れて暮らすのははじめての体験だった。それに車でサングラスの男の表情が気になった。何か、訳あり顔だった。自分は、あの契約書にサインしてしまって、ほんとうによかったんだろうか。

 しばらく休んでから荷をほどいた。バッグに入っていたのは、ディッシュと、ハンカチ、それと両親の顔写真だけだった。それ以外の品物は、持ち込み不可能だった。

 部屋にあった机に両親の写真を立てかけた。

 それから、部屋の外に出た。丁度、隣の部屋の住人が出てきた。

「あら、あなた見かけない顔ね!?」

 事情を説明した。「という訳で、よろしくお願いします」

「そうなの。わたし、夜桜ユナ。よろしくね」

「こちらこそ」

「ところで、わたしちょっと困っているんだけど」

 健斗はユナを見た。目鼻顔立ちの整った美人だった。何となく、胸の辺りも膨らんでいるようだった。大きい!

「ねぇ、聞いている?」

「ああ、うん」

「あのね。わたしの部屋のね、カギが壊れてしまったの。カギを付け替えてもらわないといけないんだけど、部屋を留守に出来ないから、わたしが受付まで言っている間、部屋を見ていてほしいのよ」

 健斗は請け負った。

「くれぐれも、部屋の中に入ったらダメよ」

 了解した。ユナは小走りにかけて行った。健斗は、これが最初の友達との出会いだと思って、真剣に取り組むことにした。すると、すぐに、学園都市の制服を着た男性生徒二人組がやって来た。同じ学年だろうか。

「おい、おまえ、ユナの部屋の前で何やっているんだ?」

 健斗は事情を説明しようとした。

「ま、まさか、お前が噂のユナの彼氏なのか!」

「ち、違うよ」

「怪しい。実に怪しいぞ」男子生徒は言った。「最近、彼女の彼氏ができたともっぱら噂だ。彼女は美人だし、クラスでも人気なんだ。そんな彼女が最近、男と会っているという噂があった。これは、まさに現行犯だな!」

 健斗は抵抗したが、二人組に押さえつけられ、もみくちゃにされた。勿論、本気ではなかったが、髪の毛簿ぼさぼさにされたり、ズボンを脱がされそうになったり、めちゃくちゃだった。

「ぼく、そんなんじゃないよ」

 説明すると、やっと二人は納得してくれた。

「つまり、カギが壊れたから、その間見張り番をしていろということか」

 二人は自己紹介しいた。

「俺は、田中だ。そして、そっちの背の小さいのが鈴木だ」

「よろしく。で、だ」田中は言った。「せっかく、クラスで名高い夜桜の部屋の間にいるというのに、何もしないというのは何事か!」

「だって、頼まれただけだから」

「ここに女子の秘密が隠されている!」

 健斗は狼狽えた。「じょ、女子の死秘密……」

「お前、今いやらしこと考えただろ?」田中は言った。

「思ってない、思ってな……」

「いや、思ったね。顔に書いてあった」田中は不敵笑った。「お前、転入生だろ。なら、転入生の儀式ぎしきを始める!」

「儀式」健斗は驚いた。

「そうだ。転入生の儀式は、クラスメイトの言うことを一つ聞くことだ」

「そんな決まりないよ」

「逆らうんだったら、お前が、夜桜の部屋に入って、下着をあさっていたと密告するぞ!」

 健斗は観念した。「何でも、言うことを聞きます」

「よし。では、一つ任務を授ける!」田中は言った。「夜桜の部屋に入って、彼女の日記を見てこい。彼女のが毎日日記をつけているというのは、分かっている。それを見れば、うわさの彼氏の正体が分かるはずだ。何、罪悪感を感じることはない。クラスの男子を、ないがしろにした罰だ! 「さあ、行ってこい」

 行くことになった。健斗は頭を抱えながら、このおかしな生徒の言いなりになった。くやしいというより、罪深いと思った。だが、二人の言い分に逆らえなかった。逆らえば、またズボンを脱がされそうになったり、パンツを脱がされてしまうかもしれない。

「さあ、行け」今度は、鈴木が言った。

 仕方なく、部屋の扉を開けると、中に入った。すると、部屋の扉を閉じてすぐに、香しいにおいがした。女子のにおいだ。はじめての体験に頭がくらくらした。いけないことだと分かっていても、興奮してしまう。

 奥にすすで行くと、机があり、その上に夜桜ユナの手帳が置かれていた。健斗は、ごくりとつばを飲み込むと、手帳に手をかけた。罪悪感が広がる。だが、何もしないで戻れば、田中と鈴木に酷い目にあわされる。

 意を決して、手帳を開いた。そしてそこにあったのは、衝撃の事実だった。なんと、彼女の秘密が記されていた。彼女は、悪女だった。なんと彼女の野望は、学園の支配だった……。男を翻弄し、だまし、そして学園を乗っ取るつもりだ。彼女は見た目とは裏腹に、腹グロ女子としての考えが記されていた。

 健斗は顔が引きつるのを感じた。急いで部屋を出ようとした。だが、扉の外が妙に騒がしくなっている。何か嫌な予感がする。

 バン、扉が開かれた。そこには、顔を赤く上気した、夜桜が立っていた。

「見たわね!」

 見ると、床に田中と鈴木が伸びている。

「何も見てないよ!」

 夜桜は、開かれた手帳を見た。「見たのね!」

 健斗はあまりの迫力に息が吸えなくなった。そして、やって来た、夜桜にベッドにはり倒されると、そのまま覆いかぶさられた。

「あの、夜桜さん……」

「私の質問にちゃんと答えなさい!」

「はい」

「あなたは、私の日記を読んだのよね?」

「……見てません」

「本当のことを言いなさい!」

「ごめんなさい」

 健斗は気絶した。そして、気づいたときには、部屋の外に運び出されており、田中と鈴木の姿も消えていた。健斗はこれは悪い夢だったと思い、この日は早めに休むことにした。明日から、学校が始まる。それに備えるべきだと思った。だが、おでこに出来たこぶが跡が生々しかった。

 部屋に戻って目をつぶる……。

 なかなか寝付けなかった。

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