第15話
しらばくしてセレネが復活したので、
「まずは、食事に専念しましょうか。セレネさん、どうぞ食べてください。まだまだおかわりもありますから。俺たちは、さっき肉をガッツリと食べたので、満腹なんですよ。ですから、どうぞ」
と、トザンは促した。
セレネは戸惑っていたが、吹っ切れたように、
「では、いただきます!」
とスープを食べだした。
トザンとサチもよそいであったスープをすすりつつ、雑談をする。
「それにしても、ずいぶん倒したなぁ」
トザンが呆れたように感嘆すると、サチがうなずいた。
「解体してたら寄ってきちゃったんですよ。で、それを倒して解体してたら寄ってきて……の繰り返しになりました!」
それを聞いたトザンは、サチに申し訳なくて頭をかく。
「……すまん。ぜんぜん気がつかなかった。そんなに物音がしてたら起きてもおかしくないのに……」
「まさしく、死んだように寝てましたね! 私、いつの間にか先生が死んじゃったんじゃないかと思って何度か確かめにいきましたから!」
男性教師だったころは、むしろ眠りが浅く些細な音でも起きていたのに、幼女は違うのか? いやガワだけか、年寄りは寝入りがいいのか……と、トザンは首をひねった。
そうこう話しているうちに、セレネが
「おなかいっぱいになりました。ありがとうございました」
と頭を下げた。
「え? もういいんですか?」
と、大食いのサチが驚く。
「じゅうぶんです。いつもはこの半分以下しか食べていないので、すごくおなかいっぱいなんです」
セレナが笑顔で伝えたので、サチが愕然としながらつぶやいた。
「こ、これが小食女子……」
「いや、いきなりたくさん食べると胃が受け付けない、ってだけだよ。徐々に量を増やしていったほうがいい。……それでなんですが」
トザンは今後の方針を立てたかったので、申し訳なさそうにセレネに話しかけた。
「疲れているところを申し訳ないんですが、もう少し聞かせてください。俺たちもずっとここで暮らしていくわけにはいかないし、この身体の持ち主に家族がいるのなら心配しているだろうから事情を話さないといけない。あなたのいらした国はどんなところですか?」
セレネは詰まり、うつむきながら答えた。
「……もしも、貴方がたの身体の持ち主がヤーナ教国から来たとしたら……逃げ出したのだと思います。ヤーナ教国は人族を唯一絶対の人間としていて、他の種族を認めず、奴隷として扱うので」
トザンは絶句する。
サチも呆けた。
奴隷。
それはこの国のスタンダードなのだろうか。それとも教国……宗教国家特有の、神の名のもとに迫害するというお決まりのパターンなのだろうか、と、トザンはぼんやりと考えていた。
二人の反応を見て、セレネが慌てて手を振った。
「私は違いますから! そういう人が多いってことです! 貴族でもなければそこまでいきません。教国は貿易がなければやっていけない土地ですし」
トザンはふむふむと聞いた。
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