第7話
それから数時間。
せっせと二人で恥ずかしい呪文を唱え、何も起きないと(いろんな意味で)ダメージを負い、それでも試す。
そうして、徐々に解除出来てきた。
「ぜぇぜぇ……。やりましたね……」
「……魔力が尽きるところだった……」
二人でぐったりと座り込む。
基本魔術らしい風火水土はなんとか使えるようになった。
だが、そこからが難しい。
上位呪文そうな空気、炎、氷、岩石などは全く成果無し。光と闇はまだどんなふうに使うのかがわからずじまい。
そして、その他にも気になるのが、上限はかなり大きい数値で書かれているのに、その十分の一以下の数値しか表示されないのだ。
サチがステータスウインドウをなぞりながらぼやく。
「あとはスキルって書いてあるとこッスね。弓とか、触ったこともないんすけど」
サチは、弓を背負っているのでなんとなく背負ったままにしているが、恐らく使う機会はないだろうなと感じている。
細剣のスキルもあるが、剣なんて危ないものは触りたくない。抜いた拍子にうっかり手を切りそうだ。
トザンも自身のステータスウインドウを見ながらうなった。
「俺も鍛冶とかあるんだけど。全然知らないぞ? 担いでいるこのハンマー、鍛冶用なのか?」
トザンもなんとなくハンマーを担いだままにしているが、使える気がしない。
さらに、ステータスウインドウをなぞりながらブツブツとつぶやく。
「うーん、他のステータスもだけど、特に魔力が全回復してないのが気になるな……。これが回復しない限り、上位魔術が使えないんじゃないか? どう考えても上位魔術は魔力を使うだろ」
元が一万以上あるのにもかかわらず百程度で止まっているのだ。解除のためにいろいろ唱えたから今は五までなくなっている。
憑依のせいかもしれないな、と思ったが、トザンとしてはなんとかして全回復させたい。
そして、ぜひとも上位魔術も使えるようになりたいと野望を抱いた。
だが、今のところは思いつかない。いや、思いつくのは食事だが……。
トザンは、そういえば夢中になってやりすぎて、食事が遅くなってしまったようだな時計はないけれど、と考えると、ステータスウインドウを消してサチに向かって言った。
「とりあえず、メシにするか」
「そうですね!」
サチが即行で同意した。
現在、魚が簡単に獲れるので魚をメインの食材にしている。
基本は串焼き。今朝はアラをとっておいてスープに入れてみた。
植物は、サチの野生の勘で摘んでもらってきている。
今まで外れておらず、どれも美味しいので、全面的に任せている。
芋のような物まで掘ってきたので、トザンは密かに『野生児』とあだ名をつけた。
それにしても……。
どうも、この憑依した二人は、ともに長旅の途中ではないかとトザンは推測していた。荷物の量が『ちょっとキャンプにきました』、程度ではないのだ。
バッグの中身をあまり見ていなかったのだが、もう少し探ってもいいかもしれない。
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