第86話 パーティー再結成
冒険者ギルドに戻って、レオニスさんのお説教を受けつつ、師匠に謝って、色々と対処をした後。
パーティーについて、マリィさんに手続きをしてもらっている。
「まず、すまないが今のパーティーを解散し、改めて、パーティーを作ってもらえるか?」
「その……そうしますと、今はパーティーの口座に入っているお金はどうしますか?」
「可能なら、その依頼を受けた奴の口座に戻して欲しい。難しい場合には、依頼完了時点でパーティーにいた人間の口座に均等に配布。お願いできるかい?」
「なるほど……すでにパーティーを抜けた人にお金を配分は出来ませんので、グラノスさんとナーガさん以外の2名については、お金を分配しないということで間違いありませんか?」
「ああ。そうしてくれ。その金額は後から、全てクレインの方に移したいんだが、手数料はどれくらいかかる」
「確認しますが、そもそもがギルドの手続きに不手際がある判断されればかからないと思います」
ギルドに戻って、兄さんがマリィさんにお願いして、パーティーのあれこれを手続き。一体何があったのか、簡単に経緯を聞いた。
まず、兄さんは、ナーガ君の側で所在無さげにしている青年ともう一人……少女が魔物に襲われていたところに出くわして、魔物を倒し、保護したらしい。
そして、伯爵領の町まで、仕方ないので連れて行った。しかし、助けたはずの少女にはめられて罪人扱い、さらに、自分の冒険者証とパーティー証を盗まれて、勝手に手続きがされた。
手続き内容は、私がパーティーからOUT、少女と青年がIN。
冒険者ギルドにて、手続きが勝手に受理され、無効にしようと交渉したが決裂、職員を威圧して、ギルドに拘束されそうになったので反撃。伯爵家とは宣戦布告? えっと?
貴族同士の戦争の一歩手前……兄さん、やりすぎる時あるよね。…………収拾つく見通しあるんだろうか。
兄さんとナーガ君は、すぐにその場から逃げ去り、町を脱出……そして、青年は連れてきたが、今後どうするか未定とのこと。
「兄さん、それを真実としていいのね?」
「おう。そうしてくれ」
一緒に連れている青年、少女の共犯にもなるような? ……その認識で良いと。じゃあ、私、この人に対していい感情持たないけど、いいのか。
「ナーガ君が嫌そうにしてるけど?」
「ナーガと意見が一致していないからな。だが、俺はパーティーに入れる気はないし、あの女は許す気もない。まだ、女を庇いたいようだしな。だいたい、君が稼いだ金を勝手に自分の物にしてるとか、普通に犯罪だろう。それを許せとか言う、気持ちがわからない」
ああ……たしかに?
人のキャッシュカードを手に入れたから、勝手にお金下ろして、自分の物はない。庇いようがない。
ナーガ君をちらりと見ると、首を振っている。それでも、まあ……この人がやったことでないということ、なのかな。考え方の違い? う~ん?
「その件ですが、今の調書内容をこちらから向こうに送り、調査します。やっていることがめちゃくちゃですし……こちらの照会状況と合わせて、確認をします。口座から勝手に下ろした額をこちらのギルドから向こうのギルドに送るように要請が来ても、調査中は送金しないという事もできますけど」
「じゃあ、そうして欲しい。クレインの稼いだ金だ。取り戻せるなら取り戻したい。あの女が詐欺で捕まるとしても構わない」
マリィさんと兄さんで手続きは進んでいるが……ナーガ君はなんとか青年を庇いたいらしい。少女が捕まるなら、こっちの青年も捕まるのではないかと心配して、視線を行ったり来たりとさ迷わせている。
青年の方は、俯いて、唇を噛み締めている。自分が悪いのはわかってるということかな。
「ねぇ……俺らと組むのは無くなったの?」
「レウス。まあ、そうだね。兄さん達が帰ってこなかった時の保険として、一時的に入れてもらおうと考えてたけど、帰ってきたからね」
「そっちの3人とは、この後、時間があるなら話し合いたい。だが、君らは後だ。さっさとクレインの対応をしておかないと何かあったら困るからな」
勝手に仲間にしようとしてた奴ら、今、捕まってるけど……。
貴族との案件なので、調書に冒険者ギルドと番所の駐在員だけでなく、領主の館からの書記官まで来てる。私も過剰防衛という事で話を聞かれた訳だが、先の件もあるからという事でとりあえずは無罪……かな? まだ、聴取受ける可能性はあるそうだけど、殺していないのと、先にあちらがそれ以上のことをしているという判定。
「グラノスさん! その、僕が悪かったのはわかってるけど、でも、本当に知らなくて……それに、これから信じてもらえるように頑張るから!」
「クレインの身に何もなかったから許すということになると思うか? そもそも、君らのせいで俺とナーガは今はお尋ね者の可能性もある。少なくとも、あのくそ女は、クレインが稼いだ10万Gを勝手に下ろして、自分のものにしてるんだがな? その片棒を担いだのは誰だ? 俺とナーガの部屋に来て、ナーガを連れ出す状況を作ったのは誰だ?」
「……僕だけど」
「そうだよな? わざわざ、あの女が俺と二人きりになりたいから、ナーガを連れ出して欲しいと願い、君はそれを叶えた訳だ。で、悠々と俺の身分証を盗んで、こんなことになっている」
う~ん。
それ、ナーガ君も迂闊すぎないか?
「っ……」
「おいっ……」
青年は、俯いた後、ギルドから出ていってしまう。
ナーガ君は青年とこっちを交互に見ているが、心配そうだ。
「……追いかけたいなら好きにしろ。今夜の宿は、君の家でいいのか?」
「兄さんとナーガ君が二人で使うなら、構わないよ」
「…………すまん」
ナーガ君は迷っていたので、兄さんが後押しした形で青年を追いかけていった。
後で、彼を連れて家に来るのだろうか? あの青年を連れてきても、私は家には入れないけど……。薬の素材とか、貴重な本がある家に、流石にいれるのは戸惑う経歴だからね。
「完全に突き放しはしないんだ?」
「少々扱いに悩んでるからな……君はどう思う?」
「私の印象は良くないけどね……まあ、兄さんの考えを聞いてから検討するよ」
少女は置いてきたのに、あの青年は一緒に連れてきている時点で、兄さんには何か考えがあるとは思う。第一印象、室内でもフードを被った不審者……よく見ると中身はカッコいい。しかし、自信なさげで、視線合わないという。
あまり、好感度が上がらない。
だけど、ナーガ君が前に出て庇うくらいには、懐いている。ナーガ君が懐いているなら多少は大目に見てもいいのかもしれないけど。
「グラノスさん。こちらのギルドとしては、あの青年がその少女の共犯となった場合、庇えませんよ? いいんですね?」
「ああ。本人自覚無くとも、犯罪に手を貸してるからな。罪になるなら、それで構わない。見通しが甘くて、おいたをしたんだ。ちゃんと責任は取らせないとな」
その後もマリィさんと兄さんで手続きを進めているので、困った表情をしているレウス・クロウ・ティガさんと話をする。
彼らとしては、なんか巻き込まれて帰れない状態になってしまっている。師匠は大丈夫だと確認した後は、兄さんと何かを話して、帰っていった。
「あの調子では、わたし達がパーティーに加わるのも嫌がるのかな?」
「この後の話し合い次第だと思いますけど……一緒のパーティーになりたいんです?」
ティガさんの申出に少々驚きながら、聞き返すと「当たり前っ」とレウスが腕に引っ付いてきた。うん? なんで?
レウスとしては、突然現れた兄さんとナーガ君が気に入らないらしい? 俺らと組もうとしきりに誘ってくる。
「先日の話について、3人で話をして、決まったから答えに行く予定だったんだが、君が危険そうだったのでね。お兄さんが来ているとは思わなかった」
「私もあと数日はかかると思ってたんですけどね……一応、パーティーリーダーは兄ですから、合わないならやめた方がいいと思います。別に理不尽なタイプではないですよ? やることやってればいいって感じで」
「だいぶ過保護そうだがなぁ。要求が厳しそうだ」
うん? いや、信頼できない人をいれないという点ではそうだけど。そもそも、一緒にパーティーになる必要もないわけだが……。
ティガさんもクロウもなんだか、微妙な雰囲気を出しているし、何故かレウスはべったりとくっついてくる。
「クレイン。お前の方の話も聞きたいそうだ」
「あ、はい。ああ、兄さん。時間かかりそうだし、家行ってる?」
「あ~……いや、こいつらの宿行って話してくる。……危険はないよな?」
「これ以上はないと思うけど……私の家の方が、防音はされてるよ?」
異邦人関連の話をすることになるなら防音した方が良いということが伝わったのか、「ああ」と頷かれた。
「……君の家を借りる。大丈夫だと思うが、遅くなるようならおっさんに送ってもらってくれ」
「大丈夫…………だと思うけど、レオニスさんにお願いするよ」
大丈夫と言った瞬間に兄さんの唇が上がり、目が笑ってないので、従っておく。だいぶ心配をさせたらしい……。レウスもちょっとびくっとして、腕から離れた。
伯爵家の謎の人と話をして、いなくなったと伝えたのがいけなかったかもしれない。
「いい子だ。すまんな……まだ、いるかもしれないなら、警戒してくれ」
「うん……」
頭をぽんっと叩かれて兄さんはギルドを出ていく。クロウが目配せをしてきたので、頷いてから3人は兄さんを追いかけていった。
う~ん。なんだか、人が増えると人間関係が複雑になる、のかな……どうも、兄さんとレウス達って相性悪いっぽいな。
協力し合うのは難しい、かな。みんな仲良くというのは、無理だとはわかっている。3人いれば派閥ができるとか言うし……。でも、数少ない仲間で争いはしたくない……何だかんだと、共通点とかある分、見捨てにくいからね。
上手くいくといいんだけどな。
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