第32話 特訓2日目



 特訓2日目は、町から近い森林の中で特訓になった。

 基本的には前回と同じで、魔法を撃って、盾で受ける。また、二人も魔法を覚えたので、私も受ける側をした。夕方まで、特訓した後は魔物を狩ってレベルを上げた。


 新しく覚えたアビリティ。

 私は、〈足さばき〉、〈見切り〉、〈受け流し〉、〈弓術〉、〈槍術〉、〈クラフト〉、〈木工〉を覚えた。ついでに、〈瞬発力〉、〈集中〉はLV2から覚えた。


 兄さんは、〈火耐性〉、〈水耐性〉、〈土耐性〉、〈光耐性〉、〈水魔法〉、〈槍術〉、〈棒術〉を覚え、〈見切り〉、〈受け流し〉はLV2から覚えた。


 ナーガ君は〈槍術〉と〈水魔法〉。

 師匠の言う通り、DEX値というのがアビリティの取得に関わっているのかもしれないのが立証された形。ナーガ君が、新しい技能やアビリティを覚えにくいようだ。ただ、ステータスは高い。


 ステータスの上がり方が一番極端なのがナーガ君で、一番高いのがSTR58で、次点がDEF50 、低いのはAGI9。ものすごく極端な成長をしてる。力と防御が伸びて、速さは伸びない。

 兄さんは、高いのはSTR36、AGI33、低いのはMDF8。力と速さがあり、魔防が弱い。私は、INT38、AGI18でDEF6。賢さが高いが、次点の速さはあまり突出しておらず、防御がかなり弱い。


 レベル差はあるけど、覚えてるアビリティの違いを考えても違いが大きすぎる。

 


「……個人差か」

「そうだな。そもそも、耐性はナーガはLV2からだと考えると、俺が覚えるのが遅かったとも取れるが……」

「……いや。師匠が言っていただろ。DEX値とやら、俺は低いから覚えにくいんじゃないのか」

「えっ!? ナーガ君って、師匠呼びなんだ!」

「おい……」

「ごめんごめん。でも、さ……アビリティは覚えにくいけど、ステータスの伸びはいいから気にしなくていいんじゃない? ステータスの差については、わからないけど。それに、LV2から覚えるアビリティ……なんだと思う?」


 前回はあまり気にしてなかったけど……ナーガ君の耐性はLV2だった。そして、今回は私と兄さんもLV2から覚えているアビリティがある。

 ナーガ君の言う通り、覚えやすいアビリティということなのかもしれないけど……。なんか違う気がする。


 兄さんの動きを真似るように訓練をした結果、私は〈見切り〉を覚えたと考えると……予想だが、兄さんは元々このアビリティを覚えているのに、表示されていない気がする。

 考えられるのは、ユニークスキル。兄さんの動きは、刀を持っているときはすごく良くなる。そこから考えられるのは、〈刀の極み〉を覚えるには、〈見切り〉というアビリティが必要となっている……刀を持っている時には、自動で〈見切り〉のアビリティが発動している……つまり、最初から持っている。そして、その熟練度が上がって、LV2になると自分でも自覚するという構図。検証したいけど、情報不足だ。


 あり得ない話では無さそうだけど……相談とかできる相手もいない。



「まあ、考えてもわからないもんはわからない。覚えにくいとはいえ、繰り返してれば覚えるかもしれないからな。焦らず、もう少し繰り返してみるか」

「うん。私も耐性覚えたいけど……なんでか、今のままだと出来ない気がする」


 兄さん達に魔法を撃ってもらって、それを盾で防御しているが……なんとなく、上手く出来ていない気がする。火魔法を二人に撃ってもらったけど……なんでだろう。


「ふむ…………君、魔法を盾で受けるのを止めてみたらどうだ?」

「えっ? なんで、いきなり!?」

「いや、君のMDFは俺とナーガのINTより高いから、盾で防御してるとまったくダメージにならないだろ?」

「え? う、うん……?」

「俺は、君からの盾で防がないとかなりダメージ負うぞ? 防いでいても、たまにくるよな?」

「ああ……」

「え?」


 特訓中は怪我しないように気をつけても、多少はダメージを受けている。

 私の場合、二人よりも防御力が低いこともあって、攻撃が当たらないようにしているくらいだけど……魔法に関しては、確かに……二人の攻撃が当たったところで、大した怪我にはならなそう。

 というか、二人ともダメージ負ってたの? 傷薬? それとも回復魔法のがいいのか、どっち?


「二人とも、怪我は!?」

「大丈夫だ……怪我じゃない、回復する」

「そうそう。多少は訓練の成果だからな。耐性はあった方がいい、それに魔法は……俺は覚えたとしても実戦には使えないな。威力が全然ない」

「う~ん。多少は伸びてくと思うけど……二人の場合、圧倒的に前衛向きのステータスだからね……でも、旅では役に立つよ。水魔法と火魔法なら」


 風と土魔法については、日常での使い方が分からない。攻撃の時には使うかもしれないけど、あまり使用頻度は高くない。

 ステータスの伸びは、三者三様、十人十色なのだろう。

 兄さんは力と速さを生かしたアタッカー。斥候にも向いてる気がしたが、無理だとはっきり宣言してた。理由は、今は秘密らしい。

 ナーガ君は力と防御を生かすならタンクなのか……でも、真正面からの殴り合いのような戦い方が好きなので、アタッカーか。

 

「そうだな……あんたは前線でるのか?」

「う~ん。ソロ冒険者としては、多少の前線での戦いも止む無しだけど。採取目的であれば、そこまで高いランクになる必要もないから大丈夫だよ」

「そうか……」

「確かに。クレインは、ナーガに比べると防御力が低すぎではあるよな……ナーガが高すぎる気もするが」


 うん。私の防御力は……弱い。だから、〈耐性〉を覚えたい。

 ナーガ君のDEFの伸びが良いのは、〈耐性〉のアビリティが多いからだと思う。


 防御を伸ばすためにも、耐性のアビリティを取得しないと頼りないという判定は覆らない……いや、でも、思ったよりも戦えるんだよ! と主張はしておく。

 攻撃が当たらなければいいわけだし、今回覚えた見切りとか、受け流しとかでなんとかなる。


「前衛と後衛のステータスって、低レベルでも結構差が大きいね。あと……手合わせも寸止めではなく、そのまま当てちゃう? 怪我したら、回復魔法で治すとか……刃の部分は布でも巻いて、切れないようにするとか」

「君が俺達にする分にはそれでいいが、俺達がすると君は大怪我の可能性があるんだが?」


 大怪我って……あ、でも、ナーガ君のSTRが252で、私のHPが175、DEFを考えても……まともに攻撃が入ると大けがになるのか……? う~ん。まあ、確かにあり得ない話ではない。


「う~ん。でもさ、ナーガ君が見切りや受け流し覚えなかったのって、防御が高いからって可能性あるでしょ? 緊張感もでるから、やるだけやってみようよ」

「……駄目だ」

「いや、大丈夫だよ」

「駄目だ」


 ナーガ君が絶対に引く気が無い。

 プイっと顔を逸らして、不機嫌そうに振舞っている。説得しようとする前に、兄さんがまあまあと言って間に入った。



「よし、ナーガは今まで通り寸止めだ。俺の攻撃なら耐えられるだろうから、俺はそのまま当てる。刀以外はな」

「過保護すぎない?」

「……」

「まあまあ。俺らも君が心配なんだ。次回やってみて、効果がないようならまた考えよう」


 2日目の特訓で言えるのは、だいぶ個人差が出る結果になった。予定外のアビリティを覚えたのもあるが、ナーガ君があまり覚えないこともわかった。

 とはいえ、ナーガ君のもつ成長率は私や兄さんよりも高いので、まだまだ能力的には一番であることは間違いない。

 というか……私ももう少し前線向きのアビリティを覚えるようにしていかないと、二人に比べて貧弱すぎる。これが、ユニークの2つ目と3つ目の差なんだろうか。

 

 それと……ナーガ君が、どうも、私がソロで活動することに反対している気がする。

 パーティーは組まないよ! と伝えているのに、聞いてない。

 別にずっと組むとかではなく、私が外に出掛ける時だけパーティーを組めばいいと考えてる。二人よりステータス低いのは事実だけど、周辺の敵に後れを取るわけじゃない。

 どうも、兄さんもわかってて苦笑しているが止める気配がない。


「大丈夫だよ。ちゃんと元A級冒険者だったレオニスさんにもお墨付き貰ってるから! この辺の魔物なら敵じゃないよ」

「あんたは魔法タイプなんだ。一人では危険だろう」

「危険すぎる場所に行くわけじゃないから大丈夫だよ。たしかに……二人と違って、攻撃力が低いから倒すのに時間かかってたけど。攻撃を受けたりしてないよ」

「数が多い時はどうするんだ」

「ちゃんと考えてるよ。群れる魔物とは戦わない様にする方法もあるから」

 

 説得を続けるが、平行線…………危険が無いとは言えないけど、極力減るように考えてあるのに……。ナーガ君は心配性すぎるんだよ。


 まあ……二人より貧弱なのは認めるよ。でも、それだけで戦えない判定されるのは納得がいかない。それで、後衛を認めちゃったら、ヒーラーポジションが確定されてしまう!

 治すのが嫌とかではないけど、そういう責任重大なのは無理。戦ってる間に、自分より他の人の体力とか気にして、行動するって大変だよ! 私、絶対に優先順位とか間違う自信がある!

 

 そんなややこしいことはしたくない……が、兄さんも事前に順番を考えておけばいいと、ヒーラーを推奨してくる。

 

「ソロでやるのも悪くないと思うぜ? ただ、俺らと出る時にはヒーラーでも構わないだろ?」

「ちゃんと専門のヒーラーを探しなよ。私は師匠に調合教わるから、町から長く離れられないよ?」

「まあ、今すぐではないが、調合だって1年で教えるって言ってたじゃないか。それ以降、この世界を見て周るのも悪くないだろ?」

「いや、うん……二人の強さを考えると私がついていけると思えないんだけど?」

「楽しいと思うがな……急いで結論を出す必要もないだろ?」 

 

 確かに、急いで決めることでもないけど。

 旅をしたいかと聞かれると……難しい。たまに旅行に行くとかは好きだけど……この世界で、旅行って大変だろう。馬とか乗ってといっても、魔物も出る訳で……そこまでして、見て周りたいと思うほどの情熱はないんだけど……。


 一人だけ町で待つだけだとつまらないとは……少しだけ、考えるけどね。


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