第15話 呼んでいない客



「クレイン、いるか~」

「は~い。レオニスさん、どうしたんですか?」

「ちょっとな、話があるんだがいいか?」


 マリィさんに報告後、家で食事を済ませて本を読んでいると、玄関の方から大きい声で呼ばれた。

 近所迷惑では……と思ったけど、そもそも周囲のがうるさいんだった。防音効果高いので、店舗用の玄関に入ってから呼ばれるくらいは問題ないか。知らない人が入らないように呼び鈴は欲しいけど。

 それと……家の構造上、店の部分については、鍵が無くて自由に出入り出来てしまうのも考えないとまずいか。


 

「はい。どうぞ~」


 ドアを開けると、レオニスさんと二人。杖を持つ老人と若くて軽薄そうな身なりの整った男の人がいた。

 

 ……そして、直感が警戒しろと告げている。


 今までと違い、命の危険アラートが告げている。

 ヤバいのだろうか……それなら、ドアを開ける前に知らせて欲しいんだが……。



「おい、クレイン。どうした? 顔色が悪いぞ」

「…………むり、かも……」


 レオニスさんががたがたと震えだしてしまった私を心配そうにのぞき込んでいる。

 大丈夫と答えたくても、それができないくらいに怖い。



「ほう……」

「あはははは~まあ、上がらせてもらうよ」


 心配そうなレオニスさんには悪いが、この二人。かなりやばい気がする。気がするというより、確定でやばい。特に若い方。唇の端は上がっていて、笑ってるように見えるけど、笑ってないのがわかる。



「クレイン?」

「……私、殺される、とか?」


 レオニスさんが私を支えて、本棚がある奥の部屋に入ると、その場にしゃがみこんで呟いた。この人達は、その権限がある人なのだと、直感が囁く。



「殺す? なんで、そう思った?」

「レオニス。…………うん、君の話によってはね。君も含めて、異邦人を殺すことを決断することもあるかな」

「おいっ」


 異邦人を処断する可能性がある。

 咄嗟に浮かんだのは数時間前のマリィさんへの報告。関係あったりするのか。めちゃくちゃ不穏。


 でも、まあ……あの荒らし方って、半端な知識しかない異邦人の仕業だとは思ってました。

 うん……怒るのも仕方ないよね。それで、なんで私のところに来たのか分からないけど……。



「異邦人は危険だ。力をつける前に消してしまったほうがいいと考えても仕方がない。わかるかい?」

「…………」

「おい。ラズ。脅しすぎるなよ。クレイン、こいつは悪い奴じゃないんだが」

「レオニス。じゃが、異邦人の言動は危険じゃ。それを理解してもらわねばならんぞ。そのためにも脅す必要があったが…………わかっておるようじゃな」


 危険な存在である。

 わかってはいる。この世界のことを何も知らない、でも、強い……ちがう、強くなる。


 この世界だとレベルアップ時のステータス上昇は、ゲームとかの世界よりも高い。

 私のステータスだって、すでに、初期値の3倍~4倍になっている。


 レベルが上がればさらに危険になるのであれば、今のうちに始末をつけるというのもわかる……。私達も、いや、私は好きでこの世界に来たわけじゃないと言いたい。


 わかるけども、処断されたくない。死にたくない……体が震える。



「そうそう。ねえ、君たちの目的が知りたいんだよ。君のお仲間から話を聞いてもよくわからなくてね。有益な情報は手に入らなかった。でも、君が話してくれるなら、処遇も変わるかもしれないよ」



 私が話すこと……。

 ちらりとレオニスさんを見る。この人は私を心配していることが分かる。師匠の件もだけど、何かと目をかけてくれている。いい人だと思う。


 私が話せることは、そんなに多くはない。

 それでも……異邦人のことをすべて話したとき……情報は知っている人は少ない方がいい。


 レオニスさんを巻き込むべきではないと思うのは……お世話になっているから。

 師匠にも迷惑をかけたくない。



「クレイン。ラズは俺とパーティー組んでたこともある。この町では偉い奴だと思ってくれ。こっちのじいさんは冒険者ギルドのギルド長。お前のことは守る、殺したりすることはないと約束する」

「…………」

「話せることだけでもよいのじゃ。駄目かのう?」

「…………条件をつけていいですか?」

「ふむ。なんだね?」

「……レオニスさんは関係ありません。…………巻き込みたくないので退席させてください」


 レオニスさんが話を聞いてしまえば、今後、何かあった時に彼自身が動きにくくなる可能性がある。レオニスさんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

 震えながらも、青年と目を合わせて告げる。じっと……何秒か、見つめ合った後、「いいよ」と言って目を逸らされた。



「クレイン? おい、どういうことだ」

「話す内容によっては口封じ、することも……あると思う」

「レオニスは僕の仲間だったんだよ? 僕でも手が出しにくい。いいの? 守ってもらわなくて?」

「……巻き込んで、一緒に口封じをさせたくない」


 実力のある人を口封じするとは思わないけれど。本当に話せることだけ話すのでは足りない気がする。

 知っていること、想像していること、すべて話すと考えれば、レオニスさんは知らない方がいいこともあると思う。

 


「レオニスがいたほうが安心と思ったが……外してくれるか?」

「……わかりました。……クレイン、無理はするな」

「……へいき……ありがとう、ございます」


 物置となってる部屋に無理やりスペースを作って、床に座ってもらう。わざわざ自分の居住スペースに案内はしない。失礼かもしれないけど……お客として扱うのは心理的に難しい。



「ふむ。すまんが、このアーティファクトに手を置いていてくれるか」


 取り出されたのは、冒険者ギルドで登録するときにつかったアーティファクト。

 発言の真偽を確認するためのもの。頷いて、アーティファクトに手をおく……言動は気をつけよう。



「……それで、何を話せばいいんですか?」

「そうじゃのう……」

「ねえ、どうして異邦人が現れたのか、わかるかい?」

「……わからない。……突然、真っ白い空間に集められて、この世界に転移させるって言われた」


 アーティファクトは私の回答に青い光を出している。それを確認して、頷くのはギルド長。

 楽しそうに笑っている青年は何を考えているかわからない。

 ただ、こっちの青年の方が危険人物であり、地位が高い人だとなんとなく感じる。正直に話しておくほうが安全だ。


「誰に?」

「わからない。人、ではないと思う。頭に直接響いた……声ではない、でも……聞こえた。誰かの声ではない、意思が頭に送り込まれた…………表現が難しいけど……声を耳で聞いてないのに……伝わった……?」

「ふむ……」

「≪異世界に転移させる。どのように転移するか選ぶといい≫、私はそう認識したけど……他の人たちに確認はとってない」


 アーティファクトの青い光に、二人は怪訝な顔をしている。

 まあ、人ではない何かの存在をここで議論するのも可怪しいけど……普通、こんなこと言うと頭おかしい人だよね。でも、それが真実だと、少なくとも私はそう考えていることが証明されたわけだ。



「それで、自分達は選ばれた勇者だと思った?」

「……私は自分がそういうタイプじゃないので、考えもしなかった。ただ、近くにいた若い男の子は喜んで、『勇者になる!』と宣言していた。……それを否定する人はいなかった。周りもはしゃいでいた人が多かったのを見ている。どちらかといえば、肯定的な人が多かった印象がある」


 う~ん。まあ、ね。そういう小説とかあるよね~異世界に召喚された勇者。

 でも、学生がクラス単位での召喚とか、そんな規模じゃないのはわかってる……あそこにいた人達の何人が選ばれた勇者になるのか……。



「ふむ……皆で話し合いで決めたりはしなかったのかのう?」

「…………集められた人数は……1,000とか2,000とか? たくさんいたから。全員で決めようとすれば、誰かが音頭を取る必要がある……あの場でそういう人はいなかった。それに、知らない人に強制されることは反発する人がいると思う」

「2,000? この町にいる異邦人は30人前後で、君がレオニスに言ったとおり、あの日からは増えてないけど?」

「転移までの時間制限があった。真っ白い空間とこの世界では、時間が異なると思うけど……こっちで3日間のうちに、転移するんだと思ったから、あの日レオニスさんには日付が変わるまでと伝えた……。あと、この町に全員が来るわけじゃない」

 

 ふと、他の町との情報ってどう管理されているのか気になった。

 今の話だと、この町にきた30人がすべてと思ったってことだよね。他の町の情報は入ってない感じかな?



「なら、他の人はどこにいったの?」

「他の場所を選んだと思う。帝国、王国、共和国の3つの国、各国で10個の都市が候補にあって、どこに行くか選べたから……でも……」

「好きな場所を選べたってこと?」

「都市の名前は覚えておるかのう?」

「……全く知らない町や村の名前だから、そこまでは覚えてない。ただ、都は一つ、村・町・市街は3つずつだった」


 正直、町選べたけど、どんな町とか書いてあったわけじゃないので……適当に選んで、名前なんて覚えていない。でも、町を選ぶときは、確定ではなかった。選んだ後もキャンセルして…………違う。

 武器や防具の時も、キャンセルできた。装備してみて、重いから変えられたってことはキャンセル出来てた。


 キャンセルできなかったのは、能力を決めるとき?

 ユニークスキルは戻れなかった。魔法や技能、アビリティもキャンセルはできない……うん。なんか、気になる? 何か、見落としてるような…………。



「う~む。王国以外は、共和国と帝国だけだったのじゃな?」

「その3つだった」

「公国・聖教国・獣王国などはなかったかの?」

「……私の選べる先は3つだった…………他に国があることは知らなかった。ただ…………選べる国の下にスペースがあったから、人によっては国が増えていてもおかしくない」


 なかったかと聞かれると……え、他の人にはあったの? と聞きたいんだけど。

 私に質問権はないよね~うん。おとなしく、知ってることだけ答えよう。


 少しでも信頼を得ないと殺されそうで……怖い!


 こちらの言動を一つも漏らさない様に観察している目の前の二人。


 怖い……怖いよ…………。

 レオニスさんにいてもらえば良かった? でも、彼を巻き込むことは、師匠やディアナさんにも申し訳ない。良くしてもらってるから、巻き込んじゃいけない。



「それで、君は他の人と一切話さずにこの世界にきた?」

「……声を掛けずに、一人で決めたので」

「何故?」

「他の人に決めてもらうには……信頼関係がないから。相手が自分より経験者でアドバイスを貰えるなら参考にはするかもしれないけど……あの場で、何があったかを理解している人は誰もいなかった。なのに、自分の今後がかかっている大事なことを他人に委ねるようなことはできない」


 いや、本当は話しかけにくいという事情もあったけどね。

 でも、知らない人に自分の今後を委ねるなんてできるわけないということにしておく。嘘じゃない。



「ふぅん?」

「では、お嬢ちゃんは他の異邦人の情報は全く知らぬか?」

「……多少は聞き耳をたてて、様子を窺っていたけれど。それだけでわかるわけじゃない。みんな自分のことで精一杯だった。集まって話をしているとしても10人くらいで、もっと大きな集団で決めているのは見かけなかった」

「こっちの世界にきても、話をしなかった?」

「こちらに来てすぐに、同じような人達が町の外でかたまって、演説してるのは気づいたけど、近寄らなかった」

「ふむ。なぜ、仲間に近寄らなかったんじゃ?」

「……嫌な感じがした」


 いや、〈直感〉かなって思うけど……。嫌な感じとしか言いようがない。

 はっきりとステータスを伝えて、そのおかげだと言った方がいいのか。

 自分でも、使い方わからない。二択で正しい方が光るとかわかりやすい啓示ならよかったんだけど。


 嫌な感じがしている、これ……〈直感〉でいいんだよね? 分かる人がいるなら聞きたいくらいだ。



「ふむ……嘘はないが、隠していることはありそうじゃな」


 うん。直感だって言うべきか悩んだのもばれてる。顔に出やすいのは、仕方ないけれども。

 ただ、すべての情報を出すことで、用済みになっても困る。ある程度、隠している素振りも処世術。ただし、ばれたら話しておく、そんな感じでいこう。



「……なんとなく近づかない方がいいって思った。それが〈直感〉という……ユニークスキルのせいだと思うけど、勝手に嫌な感じがしてるだけで、使いこなせてるわけではないから確信はない。それと、隠すつもりはない。聞かれたことにはきちんと答えるつもりでいる」

「ふぅむ……もう少し、わかりやすく説明してもらえるかの?」


 わかりやすく?

 ユニークスキルのこと?


 いや、私よりもそっちの方が、この世界の仕組みを良く知っているでしょう?



「……こちらの世界に来る前に、自分の能力を自分で決めた。真っ白な空間で。その使い方とか、どんな能力かは説明がなかったので、能力の名前で予測して取った。魔法や技能とか、ユニークスキルを選ぶとき、私は〈直感〉を選んだ。でも、〈直感〉がどのように発動するか、きちんと理解していない。ただ、危険なときに、嫌な感じがする……気がする」

「へぇ……危険なときって魔物に襲われたり?」

「こちらの世界に来て、魔物と戦ったときには感じてない。こっちの世界に来て、一番最初、異邦人の集団に近づこうとしたとき、次に、下の大部屋に対して魔法をかけようとしたとき、さっきあなたたちと顔を合わせたとき、嫌な感じがした。これを〈直感〉が危険だと知らせてくれていると考えてる」


 いまのところ、この魔物は危険と感じたことはない。一人で戦うため、無理をするつもりはなく、きちんと囲まれたりしないよう気を付けているので、大きな怪我もしていない。回復魔法もあるし、傷薬とかもあるので、HPが6割より減ったことはない。

 今まで、〈直感〉を感じたのは3回だけ。レオニスさんの話だと、そもそもの戦闘の動きにパッシブ効果が乗っているという話だけど。



「僕らに危険を感じたの?」

「……危険だと思ったから、レオニスさんに席を外してもらったし、出来る限り知ってることを話してる」


 おじいちゃんの方が、大きく息を吐いて、こちらを見てくるので、視線を合わせる。危険人物だと認識していることは嘘ではない。

 じっとこちらを見てくる瞳が、自分の拙い考えを見透かされているように感じる。

 敵対するつもりではないことを分かってくれればいいんだけど……。



「……お嬢ちゃんにとって、わしは危険人物かの?」

「私の生殺与奪を握っているという点では」


 私だけでなく、この町にいる異邦人の権利はこの二人……まあ、おそらく若い方が握っていると思う。そして、その気になれば、この場ですぐに私を殺せる実力が……二人ともにある。

 剣とか、武器は持っていない。レオニスさんのように筋肉があるように見えないけど、二人ともかなり高レベルの実力者だと確信している。

 


「……お嬢ちゃん。すまんが、細かく聞かせてもらうぞ。能力を自分で決めるとはどういうことじゃ?」

「持っていたポイントを使って、魔法・技能・アビリティ・ユニークスキルを好きに選べた」

「ユニークスキル?」

「確か……○○の嗜み・○○の道・○○の極み……っていうのが半分くらい、剣とか斧とか水とか火とか色々。あとは、称号みたいな感じで……色々あったけど、全部は覚えてない。ただ、全部3段階で、他の魔法とかよりもポイントを使うし、レベルはなかった」

「嘘……ではないようじゃな。じゃが、本当に選べたとなれば……」


 アーティファクトは変わらずに青色に光ってる。

 嘘をついてないことを確認しつつ、戸惑うってことは、ユニークスキルになにかあるのかな。まあ、普通に考えても固有の強スキルって予想はできる。

 こちらの人にとって、それを覚えていることは脅威ってことか。


 なんか……すごく、背筋がぞわぞわする。頑張って虚勢張ってたのに、汗が止まらない。

 〈直感〉ではなく、肌で感じる……殺気ではないけど、似たような感覚…………ヤバいことを言ってしまったらしい。



「じゃ、そのポイントは、いくつ使うのかな?」

「ユニークスキルは50・150・250…………あの……何が問題なんですか?」

「うむ……アビリティというのは、星の数とまではいかんが、かなりの数があるんじゃ。取りやすいものから取りにくいものまで、人によって違うが……取りやすいものも多い」

「はい。そう聞いてます。熟練度のようなものがあると」

「うむ。○○の嗜み・○○の道というアビリティが存在することも間違いはないんじゃがな……それらは取りにくいアビリティじゃ。一生かかっても○○の嗜みすら取れない者もいるんじゃ。ユニークスキルという言葉は初めて聞くが……まあ、レベル表記がないアビリティのことを言ってるんじゃろうな」

「え?」


 嗜みって、一番少ないポイントでとれたのに?一生かかるの?

 ……まって、つまり2段目・3段目を取れる人なんて……それこそ…………普通の人じゃないよね。勇者ってそういうこと?

 バランスが可怪しいってことでいいよね?



「確か、君は剣術もってるんだよね? その剣術のレベルが10になったら、〈剣の嗜み〉を覚えるんだよ。ちなみに、持ってるだけで、剣での攻撃にすごいバフがかかるって言われてる」

「…………」

「30年間冒険者をやっていたレオニスは盾術9が最高ということになっておる。優秀な冒険者であっても10にすることは難しい。ユニークスキルとやらで、それが取れるなら破格じゃろうな。嗜みを複数もっておれば、人間兵器が作れるじゃろう」


 嗜みを複数もてれば人間兵器……つまり、道とか極みはかなり貴重……。

 剣術を10にする場合、220ポイント。ユニークスキルの嗜みだったら50。…………間違いなく、バランスが壊れてる。


 やばいやばい……まって、私の直感なんて、2段階目だし、わかりやすく何かを極めてるわけじゃない分……どう転ぶかわからない。



「…………ユニークスキルは一つしかとれなかった……」


 とりあえず、これだけでも伝えよう。複数持つ者がいないという情報だけでも、少しは警戒……下がる……わけないよね。

 その、ヒゲに手をやって考えるのやめて欲しい。圧を感じる。

 マジで怖いよ。誰でもいいから、この寒い空間をほんわか空間に変えて欲しい。



「間違いないかのう?」

「気になったのが二つあって……でも、一つ選ぶと、他の表示が灰色になって選べなくなったから、間違いない……です」


 うん。取り直しもできないので……最初に選んだら決定のはず。〈直感〉を選んだときに確認しているから、間違いない。

 キャンセルも出来なかった。他のアビリティとかも、キャンセルできなかったのは試している。



「一つしか持てないならいいんだけどね~。まあ、極みをもってるならそれでも怖いけど」

「……どうやったら極みとか、道が取れるかはわからないんですか?」


 ユニークスキルが破格なものだということはわかった。

 おそらく、極みをもっていれば、それだけで危険人物ということになる。だからこそ、取得の方法とかは確認されていないのだろうか。


「解明されてないよ。取得した人がいたとしても、そのことを話さないからね」

「どうしてですか?」

「危険だからじゃよ。突出した才能は恨みを買う。貴族の飼い殺しになるか、殺されるかしかないからのう」


 つまり……何かをレベル10にして、〈嗜み〉を取った時点で、その人の人生が歪むということかな。貴族に仕えることになるか、断って口封じにあうか……。




 ……違う。

 ≪盾術9が最高ということになっている≫と言った……つまり、それ以上になったら、申請しないようにしている人もいる。おそらく、レオニスさんは〈嗜み〉を持っている。そして、一部の者だけが把握している。それくらいに、貴重だが厄介なモノ……。


 わからないのは……なぜ、それを私に伝えてきてるのか? 試されてる?



「私が、あの場所で選ぶとき、アビリティとユニークスキルは別に表示されてました……。だから、違うものだと認識して……ただ、ユニークスキルの方が強いものだと思って、そちらを先に選びました」

「なるほどね~。アビリティとは区別されているってことだね。それで、君は何のユニークスキルを取ったのかな?」

「…………〈直感〉。虫の知らせ・直感・超直感の2段目」

「〈直感〉か~聞いたことないね~。〈虫の知らせ〉も、知らないけどね」

「うむ……じゃが、気になるスキルじゃな。お嬢ちゃんは、危険な時に知らせてくれているという認識じゃが……レオニスの報告では、それだけでは無さそうじゃ」

「そうなるね~う~ん、厄介だね」


 レオニスさんはきちんと報告をしたんだろうが……。私の何を評価したのか…………。


 そんなにおかしなことをしていたのだろうか。


 出来る限り協力する……こういうのは逆らわない。長いものには巻かれるから……助けてください。



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