第13話 いざ、東の森へ



 昨日は調合で目新しいことばかりで楽しい反面、だいぶ頭を使ったので疲れてしまった。体も動かしてないので、今日は冒険者ギルドでクエストを受けて、身体を動かそう。

 色々と採取をしたい。図鑑のようなものが無いので、師匠が見本として持たせてくれたいくつかの素材をメインに探す予定だ。

 


 冒険者ギルドに行き、金髪の綺麗なお姉さん、マリィさんに声をかける。


「おはようございます、マリィさん。今日は近場で討伐に行きたいのですが、いいクエストありますか?」

「あら、クレインさん。お早いですね。そうですね~。レオニスさんの研修報告を見る限り、近場の魔物なら討伐できそうですから……」

「あ、マリィさんにも報告がいくんですね」

「いえいえ。私が確認しておいたんですよ。クレインさん、決まった受付嬢に声をかけるタイプだと思いまして……嫌でしたか?」


 冒険者はそれなりにいるのに、担当する冒険者の情報を逐一まとめてるなんて、すごいなと思ったら……なるほど。マリィさんが真面目な人だった。冒険者の個々の性格見て、対応してくれるようだ。

 私は知ってる人の方が話しかけやすいので、ぜひ、今後ともよろしくお願いします。


「今後もマリィさんにお願いしたいです。よろしくお願いします」

「構いませんよ。クレインさんは、セージの葉はわかりますか?」

「あ、はい。この葉っぱですよね?」


 見本として持っていた葉を取り出して、見せる。

 場所をとらないし、日持ちするし、加工しやすいので重宝するから、あれば採ってくるように師匠から言われている。

 葉っぱの形が似ている、別の木もある。また、この葉自体もちょっとした見極めが必要となるため、鑑定できるまでは、見本を持っておくように言われた。


「ええ。その葉っぱです。東の森でよく採れるのですが、今、足りていないんです。できれば、100枚ほど納品して欲しいのですが……森の魔物が少し狂暴化しているという報告もあって……採取のついでに調査をお願いできますか? 調査の際に倒した魔物の数は報告してください。納品と調査を合わせて、250G出します。F級としては破格ですよ」

「わかりました。セージの葉100枚ですね。確か、5枚で10Gだから、通常より割がいいんですね。わかりました。残りは自分の物にしてもいいですか?」

「ありがとうございます。う~ん、できればあるだけ納品して欲しいとこですね。セージの葉を納品しないと、傷薬が補充されないので」


 傷薬が補充されない……。

 あれ? 冒険者って、傷薬使うことが多いって聞いたけど。

 ポーションは結構お高いし、回復量は大きいけど、魔石が原料だから大量に飲むと中毒になるので短時間で大量に摂取できない。

 傷薬は固定量回復後、自然治癒のペースを上げてくれる……みんなギルドで購入していくと聞いた。レオニスさんは師匠のとこで直接購入していたらしいけど。



「えっと……傷薬がないんですか?」

「ええ。まあ……在庫がほとんどない状態ですね」


 なんで無いのかと思ったら…………はい、異邦人の人たちですね。

 結局、ギルドの方が対策して、希望者は冒険者登録させたらしい。


 ついでに、怪我されても困るから、1人に対し3個だけサービスでプレゼントしたため、在庫が一時的に品薄。なるほど……まあ、100個近く渡してしまったら品不足にもなる。



「えっと……少しですけど、傷薬を納品しましょうか?」

「ダメですよ。クレインさんが怪我したときに使ってくださいね」

「レオニスさんから近場なら傷薬は2,3個あれば大丈夫だと聞いてるので……えっと、今、40個持ってます」

「え? ……そんなにあるんですか?」


 ぽかんとした表情のマリィさんに頷いて、魔法袋に入っている傷薬を取り出す。

 頑張って作ったのをそのまま持ってきた。最初に作ったのは、品質がちょっと悪かったけれど、それ以降は普通に作れました。師匠は何種類か薬草ごとに少し工程が変わると見本を見せてくれたので、理解が深まったので、もう失敗もしない。


「はい。昨日、師匠から作り方を教わったので、材料あるだけ作っちゃいました」

「……なるほど、なるほど」


 一つ一つ手に取って、手をかざす様にして傷薬を確認している。

 師匠も昨日、同じようなことをしていたから、あれが<鑑定>なのかな? 私も早く覚えたい。


「えっと、マリィさん? どうしました?」

「クレインさんは調合が出来るんですね?」


 他の人には聞こえないように、小さな声で、確認をされる。やっぱり、<調合>もってることを他の人に知られないようにしてくれるってことは、隠した方がいいのかもしれない。

 でも、調合については師匠に大家さん、お隣さんと結構話しちゃってるけど……。



「レオニスさん、そこは報告してないんですね。レオニスさんにご紹介いただいて、昨日から師匠に教わってます。その……私はまだ鑑定できないため、師匠が鑑定しているので、製作者と鑑定者が違うんですけど……」

「そのようですね。これで全部ですか?」

「はい……あの、最初の方に作ったのは品質があまりよくないので……」

「そうですね……こちらの傷薬<普通>ですが、ギルドに納品して貰えますか?」

「はい。えっと、〈普通〉品質は34個ですけど、いいですか?」

「ええ。助かります。ギルド買取価格が1つ25Gですが、今は在庫が少ないことから30Gで買い取りしていますので、1,020Gです。こちら、受領証になります。納品した代金ですが、これから出掛けるのであれば、ギルドの銀行に入れておきますか?」

「あ、はい。お願いします」


 銀行あるんだ。

 なるほど、このギルドカードを見せれば他の支部でも貯金をおろすことが可能……ただし、手数料がかかると。うん。普通に銀行ですね。わかります。

 手数料がちょっとお高いけど……まあ、機械じゃないので、この町から引き落とした町にお金を輸送するのであれば、仕方ないよね。


「クレインさんが調合できるなら、セージの葉は100個で大丈夫です。それよりも手に入った場合はご自身で使ってください。ギルドとしては調合後の品を納品してくれると助かります」


 そのつもりです。

 調合して納品する方が高くなると聞いてるから。まあ、在庫抱えすぎない程度に作って、稼いで……地盤を作っておきたい。


「えっと。まだ始めたばかりで……とりあえず、傷薬を練習中なので沢山作ります……どれくらい必要ですか?」

「そうですね。ギルドとしては常備に200は欲しいですね。毎週100くらい納品してもらえればすごく助かります。品質は普通以上で、高品質とかなら割高になりますから」

「わかりました。定期的に引き受けるようにします」


 クエストが出てないのに納品してると、クエスト独占と思われて、いらない嫉妬を買うこともあるとか?できるクエストを受注していると言っても、低ランクで高額を稼ぐのは気を付けるようにレオニスさんから聞いた。

 銀行があるのであれば、基本的にはそっちに入れておいた方が安全かな。


「では、傷薬については、今後納品していただけるとギルド長に伝えておきますので」

「じゃあ、行ってきますね」

「はい、お気をつけて」




 東の森に着いた。

 町から東の方に歩いていくと<東の森>がある。初心者が登竜門として通いやすい森で、町から歩いて40分。当たり前だけど、電車や車がない世界なので、基本は歩き。

 長距離移動は馬車。他の町やダンジョン行の馬車があるらしい。詳しくは知らないけど。あとは、馬に乗れると便利だから、機会があれば練習したい。

 自分で飼うのは大変だけど……移動に便利らしい。




「う~ん。スライムや大芋虫が多いけど……特に、異常が起きてるようにも見えない」


 集団で現れたスライムやおおねずみ、ホーンラビットの攻撃を盾で防ぎながら、1体ずつ倒していく。


 集団での対策は、盾で対処することにした。

 レオニスさんがタンクよりのアタッカーらしく、防御の仕方も教わりました。ただ、私は防御力低いので、後ろに回り込まれないようする必要があるので、回避が重要。


 <東の森>は<西の丘>よりも、さらに初心者向け。奥の方まで行くと強い魔物も出る。

 ダンジョンに行ける冒険者ランクになるまではここでレベル上げが基本だと聞いた。採取しやすいし、魔物素材や採取素材を納品すればお金になる。



 入口周辺を探りながら、敵を倒していくが特に異常は見当たらない。ちょこちょことセージの木を見つけては採取をしながら、奥へと進んでいく。


 木や草とかの採取では、全部は取っていかない。

 まあ、木の場合は無くならないだろうけど……山菜とか、次にまた生えるように、少し残しておくのがマナーと聞いたことがある。他の人も取りに来るだろうし、急いで100枚集める必要もないので、少しずつ集めていく。

 ついでに、地図を作って、どのあたりにセージの木があったかを記録しておく。材料が無くなったら取りに来ることになるからね。次回から探す時間を短縮できるのは大事。


 奥の方までいくと、魔物の種類が変わってきた。

 少し強くなったけど、まだまだ余裕で倒せる。まあ、何があるかわからないので慎重にいこう。


 出現する魔物を倒していると、レベルが上がり、<盾術>を覚えた。ついでに剣術も上がった。


「あれ? そっか、盾で防御してると覚えるのかな……う~ん。ほんと、手探りで進んでいく感じ……ステータスが上がりやすいのは本当だから、レベルが低いうちに色々覚えたいけど。熟練度っていうのがわからないんだよね……目安100回って言ってたけど、戦闘30回もやってない……」


 盾での防御を心掛けたとはいえ、そんなに使った覚えはないのに<盾術>を覚えたのはなぜか。まあ、ラッキーで覚えるって言ってたので、そういうものなのかな。

 盾術で特技・<ガード>を覚えたので使ってみるが……盾を前に出すため、攻撃が出来ないから、戦闘では使いにくい。強い敵とかの防御する必要があるときだけ使えばいい特技だ。


 さらに、剣術LV2となり覚えた<ブレイブガード>も防御系だった。盾のガードよりもさらに使いづらそう。う~ん。いまいち。


 まあ、まだまだ入口付近。ゆっくり東の森を周りながら、レベルを上げていこう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る