これからの事1

「俺は貪欲なんです。

自分の存在してる理由が明確になりましたし遠慮はしません。

世界の事も国の事も法律もアリアを守るのに必要なものは全て取り入れたいとすら思っています。」


「お前なぁ……。そのままいくと国乗っ取れるぞ。

やめてくれよ反乱軍作るとかってのは。」


「ご冗談を。

俺はアリアさえ守れればそれでいいんです。」


「それじゃぁ……俺はお前達を守れる盾にでもなってやる。

これでも父親だからな。」


「はい……。

俺と父さんとばぁやって人の3人でまずはアリアを守りましょう。」



父さんと初めてまともに話をした日の回想が止まった。

…………俺が変わった原因って色々あったな。

テーブルの上にある冷めきった紅茶を再び飲む。



「でも……俺守れてなくないか?

結局騎士って何すりゃいいんだか……。

それでもあいつは許さないけど。

追い出したなら遠慮は要らないよな。

父さんとばぁやがコソコソと荷物作ってた事も知ってたし……。

父さんからは苦虫を噛み潰したような顔で話されたし……。

父さんにとって俺ってそんな怖い存在なのか?」



はぁ…なんだか複雑な気持ちだけが募るばかりだ。

俺の大事な片割れの妹で俺が守るべき愛し子……。

どうか俺達が行くまで無事でいてくれ。

そしてどうか幸せに待っていてくれ。

そんな事を思っていたらノックされる音が聞こえてきた。



「はい?どうぞ。」


「入るぞ。」


「父さん来たんですか……。」


「なんだ来たらまずかったか?

大丈夫だ。

防音魔法なら展開しといた。」


「本当に仕事が早いですね。

立ってないで座ったらどうです?」


「あぁ……。」



向かいの席に父親が座る。

そもそも息子に促されるってどうなんだ?

きっと今は父親としてじゃないのかもな。

俺を愛し子を守る騎士として扱ってる時の対応だ……。

ちゃんと答えてやらないと後でグダグダ言われそう。



「それで。

ここに来たということは何が知りたいんです?」


「本当にお前は7歳児か!?

俺の子供なのに何故か遠い存在に感じてくる時は悲しいぞ……。」


「お戯れに来た訳では無いでしょ?

俺は7歳児ですよ。

妹も同じです。

ですが……もう許さない気持ちのが勝ってます。」


「もう何も言わない。

お前の好きにしろ。

愛し子を守る騎士として法をフル活用する事を許可する。」


「……ありがとう、ございます?」



まさか許可されると思わなくて疑問形で答えてしまった。

だけどさ……。

父さん……。

俺あんたとばぁやも許せないんだけど?

知っててこの対応してんだったら腹黒親父だ。



「まさか俺がただ1人だけ許せないと言ってるわけじゃないのは父さんは分かっていますよね?」



鋭く冷たい目線を父親に送ってしまう。

唯一の味方なのに。

それでも限度ってものがある。



「あぁ……。

ばぁやが鞄に手紙を入れたそうだ。

俺やお前の事もちゃんと書いたと言っていた。

鞄の中身は俺が揃えた。

だから他国に着くまではきっと大丈夫だ。」


「何を根拠に!?

魔法も魔力を操る方法すら教わらずに捨てられたんですよ!?」


「きっと大丈夫だ。

なんせ愛し子だからな。」


「……チッ…たぬきじじぃが……。」



ついボソッと出てしまった言葉は取り消せない。

そして父さんは地獄耳なのだ……。



「聞こえているぞ。

まだじじぃって歳ではない。」


「双子の子供がいる癖に何言ってんだか。」



イライラしてきて砕けた言い方に戻ってしまう。



「あのなぁ……。

俺はアリアが大事だって散々言ってきたよな?

捨てられるのを止めるでもなく万全の荷物を用意したって何してんだよ!

それとも他国にアリア逃がしてその間に決着つけるとでも言うのかよ!?

俺がアリアの為じゃなきゃ動かねぇの知ってて言ってんだったら父親としての面が分厚いんじゃねぇの!?」



言葉遣いも悪くなっていく。

これが4歳の時絶望と怒りでできた仮面のない俺だ。

仮面があるまま怒る俺はこうはならないからな。

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