はるか昔の出来事……そして1

「これから話すことは本にもなっていないし、知るものも大分減ってきた物語だ。

俺が知ってるのはじぃさんが俺に覚えとけといって聞かされたからだ。

じぃさんはじぃさんの息子である俺の父親には一切話さなかった……。

それくらい秘匿な大事な話だと言うことを肝に銘じて置いて欲しい。」



一気に空気が張り詰める。

外で聞く耳をたててるかもしれない気配を少し感じたけど父さんは気づいてる。

ものずごい焦らしてなかなか話してくれないから。

ソワソワする気持ちを抑えながら待ってるのに……。

その時防音魔法が何重にも重なったのを見た。



「これで外には漏れることは無いな。」



サラッとこなす父さんはスゴすぎる。

無言詠唱使いこなしてるんだって。

高度な技術が必要で生活魔法しか使えない人以外は絶対使えるようにならなければならないって義務だったはず……。



「さて……。

本格的に話そうか。

これを聞いたら当主からは逃れられなくなるけどいいか?」


「うん。

知らないとダメだって……そんな感じがする。」


直感を信じてみることにした。


「よし。

これでアトラス……お前はもう当主の座から逃げる事が出来なくなる。

契約なんてもんが存在してるのかは知らんが俺は逃げられなかったぞ。

それだけ特別だと言う事だな。」



唾を飲み込み意を決して頷いてみせる。

拳を作ってしまう。

知るのが怖いとすら感じてしまう。

でも逃げたくない。

俺達2人に関わることならば尚更。



「"これははるか昔のこの国のお話。

双子がよく産まれた時代。

平民にとっては生きていくのが辛くなり、貴族にとってはどっちに跡を継がせるか困りはて、王族にとっては争いの元になった。

そんな時、王家に使える優れた魔法使いが双子の2番目を忌み子にして殺すという案を王に提案して通ってしまった。

産まれてすぐ双子の片割れは処分された。

王家にとって双子は増え続けたから跡継ぎには困りはしなかった。

そんな事を続けてきたあるとき国が滅びかける事態にまで陥ってしまった。

双子の片割れは忌み子では無く2人で1人。

片割れを無くした1人は悲しみながら生きていくしかない現実を受け止めきれず自ら命を絶つものが増えていった。

魔法使いは滅びの道を選ばせた事をどこかで喜んでいた。

国を受け継ぐものがいなくなる方が魔法使いには都合が良かった。

ただ1人だけ残ればいいのだから……。

魔法使いの目的は双子では無く1人だけで産まれた子供を傀儡の王に作ることだった。

そのことを知ったのはたくさんの双子の片割れが消えて自ら命を絶つ者が次々と増え始めてからだった。

王は魔法使いを処分する事を決めて、双子の片割れは忌み子ではないと宣言したんだ。

魔法使いは処刑される最後に王に聞こえるだけの声量で言ったんだ。

〈 いつかこの世界に再び双子が産まれることがあればその双子を大事にしない国は滅びる。

忌み子とされる片割れは我らが崇拝する女神様達の愛を一身に受け止める愛し子である。

残される片割れは愛し子を守る為の騎士となる。

2人には他には分からない絆で繋がっているが三日月の形をした痣が同じ場所に出るだろう。

もし……。

愛し子が幸せに感じれない世界だった時国どころか世界が滅ぶだろう。

これを戯れ言と取るかは、お前たちの未来に残された子孫だろう。

愛し子を守る騎士が愛し子を守れなかった時何かしらの災害は永久的に起こるだろう。

女神様達が判断を下してくださる。

人には抗えないのだ。

私が望んだのはその一筋の光のみ。〉

その言葉を残して処刑された。

この話は他言無用を近くで聞こえてた者達に告げた。

そして時代が流れると共に消えてしまったお話だ。"」

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