恋愛相談を受ける、告白される
束白心吏
恋愛相談にのった、告白された
「なあ
「……突然何さ?」
昼休み。昼餉も終えて満腹感と、窓際の席の特権である日差しの心地よさに微睡みを覚えていると、突然友人がやってきてそんなことを切り出した。
「まあ聞いてくれ。これは俺の友人の話なんだがな? そいつ片想いしてて、色々行動してるんだけど、相手が一切それを好意と認識してないんだよ」
友人は不機嫌丸出しな様子でその普段の様子に関して話していく。
曰く、積極的に話しかけにいっている。
曰く、意識してもらうために距離感近めに接している。
等々……正直そこまでしてるなら相手だって何かしら気づくんじゃないかってくらいにやってる。それでいて反応がないってことは……。
「脈無しか同性愛者かハイパー鈍感っ子ってことだね。諦めた方が手っ取り早いと思うぞ」
「おい何で俺の肩に優しく手を置く。てかその暖かみのある視線やめろって!」
俺の話じゃねぇ! と顔を赤くしてまで反論する友人に、クラスメイトは……あれ、皆まったく反応してない? というか隣の席の女子の様子がおかしい。
「どったの
「い、いや……何でもないよ……うん……」
「? まあいいけど……安心しろ
「玉砕前提ってか!? あと俺の話じゃねぇっての!」
「ホントかー? じゃあ何? 小説のネタ的な何か?」
「書いてねーよ! つか妄想でもねーし!」
「じゃあ何だったんだい」
「困ってる友人を助けたいけど行き詰ってるから悩みを共有したんだよ!」
へー、その友人ってやつは結構赤裸々に語るのねぇ。
「取り敢えず玉さ……じゃない、告白してきなよ。成功したら友人代表のスピーチくらいはしてやる」
「話飛んだし! あと俺のことじゃないし」
「じゃー誰の話だよ」
「友人の話! さっきも言ったろうが」
段々と語気が荒くなってきた友人に、からかい過ぎたと反省……いや、突然振ってきた友人も悪い。つまり僕が十割悪いわけじゃない。よって反省なんてそこそこでいい。証明終了。
「……で、何か好意を伝えるいい案あるか?」
「
「玉砕に変なルビ振んな! あと振られる前提なのはマジで辞めてやってくれ」
「それ充の事なんでしょ? 大丈夫。君は何だかんだ顔はいいし、一途な奴ってことも知っているさ」
「樺蓮……」
「だから安心して逝ってこい」
「だから俺の恋路じゃねぇっての!」
「じゃあ誰なんだよ」
「俺の、友人」
「名前は?」
「……」
なぜそこで黙るし。
というかやっぱ本人の話じゃないの? 妙に具体的に話すし。
「じゃあその恋路の攻略対象は誰よ」
「ゲームみたいに言いおって……えーっと、異性」
「思いの丈、ぶつけてこい」
「言い方変えてもそれ告白しろってことじゃねーか」
「だって情報絶無だし。充の話なんでしょ? お前の顔なら告白されて嫌がる女子いないって」
「だから俺じゃねーし」
「そう否定ばっかしてると一周回って本当に充のことじゃないかと邪推しちゃうなー」
「……で、だけど、告白以外でどうすりゃ好意を伝えられると思う?」
「だから玉砕してこいって。遠回しだから気づかれないんでしょ?」
「じゃあお前、直球に告白されて受け取れるのか?」
「? それが真摯なモノなら僕も相応の対応をするけど?」
――予鈴が鳴り始めた。
んー、いい眠気覚まし。
なおこの後、あまりにもうるさくしてしまったことに対して、僕と充で謝ることになった。僕まで巻き込まれた意味がわからん。
貴凪さんは何か覚悟を決めた様子だったけど……はて、ナンダロネ?
■■■■
「
そう聞いてきたのは隣の席の貴凪さんだった。
彼女には今日も昼休みに騒いで迷惑かけたし、少しお世話になっているので二つ返事で空いていることを伝えると、「それじゃあ少し教室で待ってて」と言われた。文句を垂れる理由もないので、取り敢えず暇つぶしにネットサーフィンをしようとスマホを取り出す。
十数分もすれば、放課後の教室から生徒の影はなくなっていた。貴凪さんが話しかけてきたのは、丁度僕と貴凪さん以外の生徒が教室を出てすぐのことだった。
「白木君、残ってくれてありがとう」
「いつもお世話になってるから。気にしないで」
寧ろ僕が感謝した方がいいまであるし。
そんなことを考えていると、突然貴凪さんは大きく深呼吸をして、小声で何事か呟いた。そして強い意思の宿った瞳で僕を射貫かんとばかりに捉えた。
「白木君、貴方のことが好きです」
「――」
「私と、付き合っていただけませんか?」
「――」
その時、僕は生まれて初めて、言葉を失うという現象を体験した。いいや、何を言えばいいか分からない、が正確だろう。何せ貴凪さんはクラスメイトの誰もが認める美少女。そんな彼女に想われていたと知って、驚かない男子はいないだろう。
「……あの、白木君?」
「――あ、ああ。ごめん。少し、驚いてた」
思考を纏める為に、一度大きく深呼吸した。
……告白された。人生で初ではないだろうか。そう考えるのと同時に、ふと昼休みの会話を思い出す。
アレ聞いて実行したってことかー。
「それで白木君、返事は……」
思考に耽っている意識を浮上させるように、貴凪さんの声が耳朶を打つ。
そういえば告白されてる最中だった……うし、照れくさいけど返事しないとね。
「あ、ああごめん。えーっと……その、宜しくお願いします?」
ふと言いながら「告白の返事ってどうすりゃいいの?」なんて疑念が過り、最後は疑問形になってしまったけど、貴凪さんは僕の返事を聞いて感極まった様子で抱き着いて来た。
「よかった~~~! 私、ずっとアプローチしてたからぁ! てっきり白木君、男性好きなのかなって」
「え、ええ……」
貴凪さんの言葉に、アプローチ何てあったかと記憶を探るも……わからぬ。だけどふと、昼休みに充が言っていた友人の好意の示し方に関することを思い出した。
曰く、積極的に話しかけにいっている……確かに、他の人と比べて、貴凪さんから話しかけられる頻度は多いなーと思ってた。
曰く、意識してもらうために距離感近めに接している……確かに貴凪さん、バグってるんじゃないかってくらいに距離感は近かった。
じゃあこれまでの貴凪さんの言動って天然とかじゃなくて好意の表れだったのかー……うん、今更気づく僕、鈍感すぎでしょ。
貴凪さんが僕の胸に顔を埋めて嬉し泣き?(愚痴のような言葉も多いけど、それと同じくらい「夢じゃなければ覚めないで~」や「本物の白木君の匂いだ~」とか聞こえて来るので、まあ悲嘆に暮れてるわけじゃないだろう)をしている中、突然机に置いていたスマホが、メッセージアプリの通知を告げる。送信者名は
『友人代表のスピーチは俺がやってやる』
お節介焼きめ。そう返信してスマホを閉じた。
恋愛相談を受ける、告白される 束白心吏 @ShiYu050766
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます