飲み会で気持ち悪い下ネタを聞いた
6/25
バイト先の飲み会があった。
あまり飲み会には参加しないのだが、そこそこ長く働いていたアルバイトが辞める事になった送別会も兼ねてという事だったので久しぶりに顔を出す事になった。
飲み会の最中、ある言葉に意外なくらいの嫌悪感を覚えた。
ありふれた下ネタである。
鮑が女性器に似ているという旨の内容だった。
別に飲みの席の下ネタに一々何かを思うような年齢でもないのだが、その類の話は昔からあまり好きではない。
原因は分かっていて、下ネタというよりも、動植物を人間の身体に見立てる事に嫌悪感があるのである。
人は個人差はあれど、現代において、基本的に文化的側面を軸に生きている。
霊長類としての霊的な部分と、その大分類としての動物的肉的な部分が人間にはあって、人間は基本的には霊的な存在として振る舞う。
人工という言葉が自然と対義しているように、人間は文化的文明的文脈的側面から動物的な部分と切り離されて生きている。
軟体動物が人体の一部分に似ているというが、この場合の似ているというのは雲の形がたまたま馬に見えるとか山の形が亀に似ているとかそういう話ではない。
動植物が獲得した形質が人体に類似しているというのは、人の動物的なる部分の逆説のように感じられてならない。
かなりの嫌悪感である。
私でこれなのだから、人間が猿の亜種であることを突きつけられた神学者の気持ちを思うと居た堪れない。
会話に嫌悪感を覚えるというのは、突き詰めて考えればその会話の文脈に適合していないという事だ。
人間の見る世界において、この世のあらゆる物事は何らかの文脈を孕んでおり、それが飲み会の下ネタでも例外ではない。
『見立て』というのは言語より以前から存在するであろうプリミティブな文化で、この場合、それに嫌悪感を覚えている私の方がこの場において非文化的存在だというだけの話なのだ。
こんな事で一々不満を表明したりしない。
そもそも、現代日本において、若年期を過ぎた男性に感情で会話を打ち切る権利はない。
上記の全てを温くなってきたビールで流し込んで、タコの唐揚げを食べた。
会計は割り勘で2700円だった。
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