第10話「悪役貴族、奴隷に反撃する」
「やったか?」
「ああ、見ればわかるだろう?」
大男が使ったのは爆破魔法だ。
触れたものを爆破することが出来る。
身体強化魔法で強度が上がっていても関係なく破裂させることが、可能だ。
触れた対象を爆弾に変えてしまう魔法であり、強度は関係ない。
火薬がどれだけ固く強くても、着火してしまえば爆発するのと同じことだ。
とはいえ、制限はある。
つかみかかってきたあたり、直接相手に触れるのが発動条件であろう。
そう、アルバルゴは判断した。
「俺の麻痺魔法が間に合ってよかったよ」
小男は、何もしていなかったわけではない。
むしろ、麻痺魔法を当てるタイミングを見計らっていたのだ。
「いや間に合ってはねえよ?指切り落とされたんだぞ?」
「そう言うな、それくらいならすぐに治癒できる」
「とりあえず、指を拾うか……」
小男もゆっくりと立ち上がり、散らばった大男の指を拾い集めようとして。
うん、そろそろいいかな、とアルバルゴは考えた。
「その必要はないよ」
ばつん、と何かがはぜる音を小男は聞いた。
同時に、顔にびしゃりと血と何かーー脳漿が降りかかる。
「は、え?おい、お前」
「あー、ちょっと汚れちゃったなあ」
右足をべっとりと血で汚しつつも、それ以外は五体満足だ。
ストックを一つ消費してしまったが。
もっとも、親殺しをした後に観客たちを殺しまくったおかげでだいぶ余裕があるのだけど。
意味がわからないという顔をしている。
唯一理解できたのは、アルバルゴが飛び蹴りで大男の頭部を粉砕したという事実だけ。
「もしかして、呪いじゃなくて君たちの意思なのかな?」
「そうだよ!それがどうかしたのかよ!」
「それはよかった」
アルバルゴはにこりと、満面の笑みを浮かべる。
顔をさらに蒼くして、小男は後ずさる。
だが距離を取ろうとしてももう遅い。
正直、可愛そうだと思っていた。
大の大人とはいえ、無理やり従わされた哀れな奴隷であると。
だが、彼らは己の意志でアルバルゴを殺した。
もしかしたら彼らなりに呪術師を慕っていたのかもしれない。
だとしても、アルバルゴの前に立ちはだかるなら、敵になるなら。
すべて殺す。それが彼の信念であるがゆえに。
「ま、麻痺せ――」
「させないよ」
一瞬で距離を詰め、僕の方に伸ばされた左手の関節を掴み、ねじ曲げた。
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