第6話「悪役貴族、母をなぶる」


「さて、次はお前か」

「ひっ」



 この継母も当然敵である。何しろ、父親をそそのかしたのは彼女なのだから。

 マリアンヌを当主に据えるため、そしてそれを背景にサトゥーゴ家を牛耳るためだろうか。

 少なくとも、そんな理由で自分が命を狙われることを納得できるほど、アルバルゴは人間が出来ていなかった。

 前世でも、そして今も。



「前世で死んだのは、まだ子供の時だった」



 父を殺した後、アルバルゴは――アルバルゴになったものは少年院に送られた。

 そこで自分を攻撃してくる相手に徹底的に反撃しーー最終的にはリンチに遭って殺された。

 せめて道づれに殺してやりたかったが、当時の彼にそんな力はなかった。



「自分で決めた、選んだ道に後悔はない。ただ、前世ではその道半ばで死んでしまった。

「父親を殺してから、決めていたことがあるんだ」

「?」

「自分の命を奪った敵を、絶対に殺すと。一切の情け容赦なく、ただの一つの例外もなく。だから、変わることはないよ。このかつて遊んでいたゲームに似た世界・・・・・・・・・・・・・・・・・であってもね」

「何を、言ってるの?」



 タルラーは意味不明、という顔をしていた。

 前世で、母が出ていく前は割と普通の家庭で過ごしており……ゲームを買ってもらうこともあった。

 彼が特にやりこんだゲーム『オラクルワールド』のキャラクター、アルバルゴ・サトゥーゴは物語開始前に父親によって処刑されたキャラだ。

 いわゆるモブキャラである。

どうして彼がアルバルゴに転生しているのかはわからない。

 けれど、こうなった以上、彼は自分らしく生きると決めていた。

 前世で自分を虐げてきた父親を殺し。

 今世でも、自分の前に立ちふさがる敵はすべて殺す。

 前世の記憶を取り戻した時に、そう決めたのだ。



「とりあえず、愚かな後妻も殺さないとね」

「ひっ」



 こいつは一切の言い訳の余地がなく、彼の敵だ。

 だから、殺す。

 しかし、どうしたものか。前世では母親は殺せていない。彼と父親を捨てた時点で敵であり、殺してやりたかったが居場所がわからなかったのだ。

 だからどうやって殺すかも特に決まっていない。



「なあ、質問していいか?」

「は?」

「お前が、僕を殺すとしたらどうやって殺す?」

「そんなの決まってるでしょ!両手足を切り刻んでから、芋虫みたいになってる無様なあんたの首を刎ねるわよ!絶対に殺してやるわ!夫を殺しておいて、よくもまあそんな顔ができるわね!私が殺してやるわ!」



 ぎゃあぎゃあと喚いている。が、前半部分はそれなりに価値があった。



「オッケー、じゃあそれでいこう」

「は?」



 まず、彼女の右腕を掴み、肘から先をねじり、ちぎった。

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