第4話「悪役貴族、親殺しをはじめる」
「ひっ」
父は、へたり込んだままじりじりと両手足で後ずさる。
魔法も使えるはずだが、攻撃を仕掛けてくる素振りはまるでない。
逃げられると面倒だな。
そう考え、アルバルゴは強化された体で彼の背後を取り。
「まずは一本」
「へ?」
父の右手を踏み、砕いた。
「あ、え?あがあああああああああああああああああああああああああ!」
一瞬何が起きたかわからないという顔をしていた父親の顔が苦痛と恐怖に染まる。
「ずいぶん元気なんだね」
僕は淡々ともう一本の手も踏み砕いていく。
「ぐううううううううううううううううううううううううううううううううっ」
全身から汗を流し、獣のような呻き声を出しながら公爵は目を白黒させる。
「き、貴様あ、こんなことをしてどうなるかわかっているのか!私は公爵、サトゥーゴ家の当主だぞ!」
息を荒くしながらもなお啖呵を切る。
それは彼の勇猛さや精神力の強さを意味していない。
ただひたすらに、この男は僕を舐めているというだけの話だ。
お気に入りの女の機嫌を取るために冤罪で陥れ、処刑しても構わないと考えてしまうほどに彼は自分の息子を軽んじていた。
アルバルゴとして生きてきた十年間の記憶をかみしめる。
思えば、タルラーを側室として迎えた時あたりから碌な扱いをされていなかったな。
それがエスカレートしてこうなったわけで。
「一つだけ、お前に感謝することがある。最期まで醜悪な父親であってくれてありがとう。僕の理想的な父親でいてくれてありがとう」
「は?」
意味がわからない、という顔をする公爵。
アルバルゴもまた不思議に思う。
理解不能という態度を示されてしまったことが理解できなくて。
こんなことをしてどうなるかわかっているのか、などという三流悪党のようなセリフを思いだした。
そして、アルバルゴは彼の疑問を口に出す。
「お前まさか、この状況で生きていられると思ってるんじゃないよな?」
「あ」
「お前を殺すし、あの女と娘も殺す。そして僕がサトゥーゴ家の当主になる」
「え、あ」
公爵の顔が驚愕に、そして一瞬の空白を開けて絶望に染まる。悟ったのだ。
アルバルゴが宣言通りにことをなすことも。
そして公爵にはそれを止める手段がないことも。
「ひうっ」
公爵は立ち上がって逃げようとする。少し離れたところで腰を抜かしている後妻とその娘には目もくれず。
「行かせないよ」
もちろんそれを見過ごす道理などない。
足を払って転ばせる。そしてもう立ち上がらないように念入りに両足を踏みつけて壊しておく。
「え、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「うるさっ」
うるさいし、醜い。
ささっと終わらせよう。
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