第14話 挑戦状
「よ、芳野くんに……私からの挑戦状、です……」
「え?」
あくる日の就寝前。
リビングで麦茶を注いでいたら、白無地Tシャツ&ホットパンツ姿の冴山さんが近付いてきてそう言った。
……はて、挑戦状?
ミステリだと「読者への挑戦状」ってことで作者が読者に対して謎を仕掛けてくることがある。
冴山さんの言う挑戦状がそれを指しているんだとすれば、今から僕に何か問題を投げかけてくるんだろうか。
「も、問題です……私は今、の、ノーパンかどうかをお答えください」
「――ぶふっ!!」
麦茶を口に含んだところでそう言われ、僕は思わず噴き出してしまった。なんとかシンクにぶちまけたからセーフ……。
「よ、芳野くん大丈夫……っ?」
「……大丈夫かどうか心配なのは冴山さんの頭の中だよ」
いきなりなんちゅう問題をぶつけてくるんだ。
「ノーパンかどうかって……なんだよそれ」
僕は冴山さんの下半身に目を向ける。
ホットパンツゆえに色白な脚はほぼ剥き出しで、そんな脚はムダ毛が1本もなくて綺麗。しかも、すらりとしつつも程よいお肉加減。不健康的な雰囲気の冴山さんだが、やっぱり身体は健康的だ。
ともあれ……、
「……なんでノーパンかどうかを挑戦状にしたのさ……」
おかしいだろ。
「て、手頃な謎だと思ったから……そ、それはそれとして、ノーパンかどうか分かる? 分からない?」
冴山さんがどこか煽るように問うてくる。前髪カーテンの隙間から、ちょっとなじるようにダウナーな眼差しが僕を覗いていた。
「ミステリいっぱい読んでそうなのに、ノーパンかどうかっていう簡単な謎すら解けないようじゃ、芳野くん、ちょっと恥ずかしい、ね……」
「いや……解けるよそれくらい」
売り言葉に買い言葉だった。
「じゃ、じゃあ……見破ってみて……?」
冴山さんがそう言ってくる。
何が目的なのかさっぱり分からないけれど、ミステリ読者としちゃあ提示された謎を放棄するわけにはいかない。
冴山さんがその気なら、やってやることにした。
さて……ノーパンか否か。
僕は改めて冴山さんの下半身、というか下腹部に目を向けた。
ノーパンかどうかを見破るには、端的に言ってショーツの線があるかどうかを探せばいい。
線があれば穿いている、線がなければノーパン。
僕はまじまじとホットパンツを眺める。
むむ……線なんてなくない?
まさかノーパンなのか……?
で、でも待て……冷静に考えろ。
冴山さんがそんな大胆なことをしてくるタイプの人間か……?
線が見えにくいだけで普通にショーツを穿いているんじゃないか?
と思うけど……どうなんだろうか。
「さ、冴山さん……お尻を突き出してもらうことって出来る?」
そんなリクエストをしてみる。
お尻の形がくっきりと浮き出るようなら、ノーパンだ。
「い、いいよ……ヒント、ね……」
冴山さんがそそくさと僕に背を向けてくれた。
そしてグッとお尻を突き出してくる。
……うわ、えっどい。
骨盤広くて安産型。
良い赤ちゃんを産んでくれそう。
というキモい考えはそこまでだ。
ともあれ……やっぱりショーツの線が……ないんだよな。
ってことは、導き出される結論は――
「分かったよ冴山さん……君はノーパンだ」
「くふふ……」
な、なんだその勝ち誇った笑いは……!
「ざ、残念でした……正解は穿いてる、でした……」
「う、ウソだ。線がないじゃないか」
「だ、だってTバック、だから……」
「!?」
い、陰キャ地味子美少女のTバック……。
――えっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!
「えへへ……だ、だから芳野くんの負け、ね……?」
冴山さんは満足そうに勝ち誇っていた。
……確かに挑戦状的な意味で、僕は今負けたのかもしれない。
けどね冴山さん……多分この瞬間の満足度なら僕の方が上だと思うよ。
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