たどりついた

 全部燃えた。

 全部僕のせいだ。

 全部全部全部僕のせい。

 生まれながらの故郷が滅ぼされたのも、自分の両親が死んだのも、行く当てがなかったと言っていい僕とハルを受け入れてくれた第二の故郷が滅んだのも、気さくでいい人ばかりだったあの人たちが死んだのも。

 ニーナが死んだのも……全部、僕のせいなんだ。


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!!」


 これが、これが笑わずにはいられるか!?

 全部……全部、僕が悪いのに、僕だけはのうのうと生き残っているのだ。前も、今回も。……僕だけが運よく、誰かに助けられて、生き残ってしまったのだ。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!」


 涙とて枯れた。

 涙を流す権利など僕にあるはずがないっ!


「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


 何で、何で、何で、何で、何で。

 何で僕ばかりがっ!?あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!

 

「……エクス」


 嘆き、嘆き、嘆き。

 どこまでも狂い、泣き叫ぶ。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「エクス」


 そんな僕へと、自分を助けてくれやがったハルが声をかけてくる。


「あはは、もう、へへ」


 言葉も、言葉も出てこない。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 僕は全身から力を抜き、ゆっくりと体を地面に倒す。


「……」


 どうして?どうして、僕はこうなった……なんで、僕はこんなところにまで来てしまったんだ?


「あぁ……美しい」


 もう、限界だった。

 だからこそ、美しく見えた。


「あぁぁぁ」


 僕の視界に映っている夕日が。


「あぁぁぁぁぁぁぁ」


 世界が静寂だ。

 ……いや、何か、音がする。

 何か、水が打ち付けられるような音。


「ふへへへ」


 僕はその音がする方へとゆっくり近づいていく。


「……ぁ」


 音がした方向。

 そちらの方に向かい、そして、崖の先端に立った僕はゆっくりと立ち上がる。


「……なにこれ」

 

 そんな僕の前に広がっていたのは、キラキラと夕日を受けて宝石のように輝く一面の湖であった。


『私たちが見たことないくらい大量の水と塩がある恵みの大地があるんだって!』


 思い出す。

 言葉を。


「あははは」


 僕は笑い、ゆっくりと手を伸ばす。

 そして、一歩。踏み出す。


「……エクスっ!?」


「アハハハッ!」


 自分の後ろにいたハルが何か、慌てた声を上げだしたタイミングで、僕はちょうど彼女の方へと視線を送る。



「美しいっ!そうは思わないかっ!」


 

 そして、僕は内なる感動のままに言葉を告げる。


「あったのだよ。ニーナの言っていた恵みの大地は。果て無き水が。なら、きっと塩だってあの海の中にあるのだろうよ!はっはっは!まさに恵みの大地ではないかっ!」


「覚えているかい?世界を巡ろうと話したのを」


「う、うん」


「よし。ならそうしよう……ははは、そりゃいい!」


 そういえばそうだ。

 前も言っていたではないか、ニーナの代わりに世界を見て回ろうと。

 ならば、それをやればよいではないか。


「アハハハハハハハハハハっ!」


 何かが、何かが自分の中で崩れていく。

 でも、その代わりの何かが僕の中に流れてくる。


『大人になったら、二人でこの広大な世界を見て回ろう。そして、砂の大地も、炎の大地も、恵みの大地もそのすべてを見に行こうねっ!』


 あぁ、そうだ。二人で行こう。

 僕の隣にはハルがいる。


「アハハハハハハハハハハっ!」


「アハハハハハハハハハハっ!」


「アハハハハハハハハハハっ!」


「……アハハハハハハハハ」


「……ハハハ」


「……」


「……僕はもう、大人だ」

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黙示ノ見聞録~村を焼かれて将来を誓った幼馴染も亡くなり、死を望む僕をヤンデレ仕草満載の機械少女が心を教えろと押し倒してくれるのですが~ リヒト @ninnjyasuraimu

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