罰
「ごっほ、ごほっ、おぇ」
僕は地面に倒れて大きく咳込みながらもゆっくりと視線を持ち上げてくる。
すると、まずは自分の口元から伸びる唾液の糸に巻き付かれたクルスの指が見え、次に後ろからこちらを覗き込んできているハルの顔が見えてくる。
「……はぁ、はぁ、はぁ。いきなり、過激すぎだよ」
無表情でこちらへと視線を送り続けているハルへと僕は抗議の声を上げる。
「人間は急に喉へと指を突っ込まれたら痛いんだよ。かなりの苦痛になるからできれば辞めてほしいな」
出来るだけ感情を抑えながら……こんなところで、怒鳴りつけても周りからの心配を買うだけ。出来るだけ冷静に。
「罰」
「……は?」
おっと?意味が分からなくてキレそうだよ?
「私以外の女と話したことの」
「意味がわからないよ」
僕はハルの簡潔な答えに表情を歪ませながら口を開く……本当に理解できない。
「別に僕は君の所有物になった記憶も、彼女になった記憶もないよ」
「……それでも、嫌」
「何でさ」
「本能」
「便利な言葉だな!それ!もう!僕は何度言えばいいのさ!もう絶対、君ってば心あるでしょ!僕が自分以外の女の子と話して欲しくないというのは間違いなく心でしょっ!」
なぁーんっ!その一言で終わらせられるとでも思っているのかっ!?無理に決まっているでしょぉーっ!!!
「否定。本能」
「もがーっ!」
僕は断固として譲るつもりのないハルの態度に頭を抱えながら再び地面の方へと視線を向ける。
「頑固として頷いてくれない。もうお前は十二分に心が宿っているよ」
「否定」
「……はぁー」
僕はハルの答えに深々とため息をつく。
もう、こいつはそれしか言えないのか。
「それで?今日もしっかりと仕事はこなしてきた?」
どうしようもない押し問答を諦めた僕は立ちあがりながらハルへと疑問の声を投げかける。
「肯定。補足。しっかりとご飯も貰ってきた」
ハルは僕の言葉に頷くと共に、手元にある一つの袋をこちらへと見せてくる。
その袋の中には僕が食べていけるのには十分すぎる量のご飯が入っている。
「そっか。今日もありがとうね。それじゃあ、家の方に帰ろうか」
あー、うん。もういいや。
ハルが意味わからないのはずっとだし、もうそういうものであると受け入れていこう。そうではなくちゃ僕の頭は常に痛いままだ。
「肯定」
もう諦観の意を抱き始めた僕は村長の方から与えられた自分たち二人の家に向かってハルと共に歩き出す。
「疑問。今日は何をした?」
「あー、えっとね」
ハルといつものように平和な雑談を繰り広げながら。
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