嫉妬

 ハルの元へと向かう道中。


「あー、それはですね……」


「ほんほん、なるほど!」


 村の女の子から話しかけられたことでその足を止めてしまっていた。


「なるほどぉ。そちらの村だとそうなっていたんですね」


「そうですね。自分の村は、そうですね。ここよりも少しばかり規模が大きかったですから。色々とマンパワーを駆使して大規模なこともしていましたね」


「すごいですね!……でも、それだけのことがあっても村は……」


「ははは……そうですね。人は、本当に脆いものですよ、本当に」


「あっ!?す、すみません!流石に今の発言は失礼でしたね!」


「いやいや、気にしないでください。事実ですので」


 僕は自分へと話しかけてくれた女の子と会話を弾ませていく。

 話題は自分が元いた村についてである。

 好奇心が旺盛らしいこの子は自分たちが住む村の外について強い興味を抱いているようである。


「それでですね」


 そんな子に対して、僕が自分の知っている些細なことを告げていた折。


「もがっ!?」


 急に自分の視線が真っ暗になり、己の口の中へと何か異物が入り込んでくる。


「~~~っ!?」


 そんな突然の事態を前に僕は慌てて息を飲んで、手足をばたつかせる。


「私の」


 そのような中で、自分の耳元に入ってきたのはハルの声であった。


「えっ、あっ……」


「これは私のもの。エクスと親し気に会話していいのは本来であれば私だけ。特に同年代の女の子はダメ。これでも、私は寛容だからハルが必要に応じた会話を行うのは許可するけど、それでも同年代の女の子はダメ。許されることじゃない。エクスと私は繋がっているの。その間に君が挟まる余地はない。分かれ。なれば、今すぐ家に帰る。それくらいであれば人であっても問題なく可能と推測。確認。どう?」


「……へっ!?あっ!か、帰れますぅ!し、失礼しましたぁー!」


 信じられないほど饒舌に語られるハルの言葉を前に、ついさっきまで自分と会話していた少女は逃げるようにしてこの場から走り去っていく。


「満足」


 少女の気配が消えると共に満足げな様子のハルが頷くと共に、僕の目を覆っていた左手と口を塞いでいた右手を外す。


「かはっ!げっほ、かはっ、かふっ」


 さっきまで自分の口の奥にまで突っ込まれていたハルの人差し指。

 それがなくなって開放された僕はそのまま地面に膝をついて大きく咳をするのだった。

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