交渉

 そんなくだらないことを僕が考えている間に。


「疑問」


 基本的にあまり喋ることのないハルが自発的に村長へと声をかけていく。


「ここにエクスの腹を満たす食料と水はある?」


「えぇ、ありますよ」


 ハルの言葉に村長が頷く。


「理解。交換条件。私が村の護衛を行う。代わりにエクスへと食料と水を」


「……護衛、ですか」


 ハルの言葉。

 それに対して、村長は何とも微妙な反応を浮かべる。


「不服?」


 その反応を見て、相手が何を思っているのかをしっかりと判断したハルは疑問の声を上げる。


「確かに我々のことを守ってくれる存在は非常に大きいですよ。ですが、私が気になっているのは貴方の存在が更に我々の村を危険に晒さないかという点です」


「疑問」


 ハルは村長の言葉を更に詳しく説明するように告げる。


「我々、人類は本当に弱いのですよ。我々はいないもの、としてこの世界に存在しているのです。息をひそめ、それで生きながらえているのです。我々は決して、目立つわけにはいかないのですよ。貴方の戦闘方法は、他から認識されないようなものですか?」


「肯定。それも可。機械生命体本隊並びに魔法生命体本隊が相手であれば不可。だが、低位の魔法生命体であれば何もせずとも拳一つ」


「お、おぉ。それは、それはありがたい。我ら人類にとっての最大の脅威は腹を空かせた低位の魔法生命体……っ!」


 僕の、村を壊滅させたのはあいつらだしな。

 わざわざ機械生命体も、魔法生命体も僕たち人類を襲うことはまずなくて、基本的に襲ってくるのは食事を必要とする本当に低位の魔法生命体ばかり。

 それらから村を守ってくれるだけで信じられないほどにありがたいと言えるだろう。


「先ほどの失礼な言葉と質問を撤回しよう。そして、どうか……私たちの村を守ってほしい」


 低位の魔法生命体を退けることが出来る。

 それを聞いて、首を縦に振らないものはいない。

 ハルに対して、村長が深々と頭を下げながら話を受けることを告げる。


「容認。ただし、あくまでエクスが優先」


「おぉ、なるほど」


 ハルの決して崩さぬ態度に村長は頷く。


「愛されてますなぁー」


「心がわからないらしいですけどね」


「お、おぉ?そうなのか……ま、まぁとして。ハル様。我々の村は貴方様の話を受け入れ、エクスに対しての食料並びに水分の引き渡しを行います。その代わりに村の護衛をよろしくお願いいたします」


「容認。すべて、私に任せる」


「ありがとうございます」


 自信満々に告げられるハルの言葉へと村長はお礼の言葉を告げるのだった。

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