村長

 どう話すか、そんな風に悩んでいた僕ではあるが、そんなことを悩む必要などないくらいには今、二人で村からの歓待を受けていた。


「こ、こんな無警戒に村の方に入ってしまって本当にいいの……?」


 敵意がない。

 それだけ伝えた僕はすぐさまハルと共に、自分の前に立っていた大人たちから村の方に案内され、そのまま村長の家にあげられて簡素な食事をいただいてしまっていた。


「攻撃意思がないってならそれでいい。どうせ俺たちには機械生命体に抗うような力はないからな」


 そんな現状に対して困惑する僕へと、自分の前に座っている村長が明るく告げる。


「……まぁ、確かにそうですね」


 確かに、人間の村なんて機械生命体か魔法生命体に目をつけられただけで簡単に滅ぶしな。

 既に無くなってはいるが、自分の村の近くにきた機械生命体が敵意はないから安心してほしい、なんて言ってきたらとりあえず村に案内するか。


「安心して。私はエクスへの敵意を見せない限り、攻撃しない」


 そんな風な会話を交わす僕と村長に対して、肩が触れ合うほどに近い自分の隣に座っているハルがいつものように感情の見えぬ言葉を告げる。


「お、おう……感謝する」


 そんなハルの言葉を受けて村長はお礼の言葉を口にする。


「にしても、坊主は一体何だ?機械、生命体だろう?隣におられるのは」


 そして、そのまま僕へと疑問の声を叩きつけてくる。


「さぁ……?なんか、本能らしいですよ」


 そんな疑問の言葉に僕ははっきりと答えることは出来ない。


「私とエクスは魂で繋がって愛を育み、今世だけではなく来世にまで及んで永久の絆を育んでいく。それがこの世界の決められた定めであり、宿命であり、在りよう。私たちが離れることは二度とない。これが世界の決めたる決定事項である。そして、私はそんなエクスとの絆を断とうと立ちふさがる存在を悠久に許さず、登場さえも防ぐ」


 そんな僕の代わりにハルが急に饒舌な形で語り始める。


「と、言っているが?」


「知り合ってまだ三日ですね」


 僕はハルの言葉を受けて告げられた村長の言葉に短く答える。


「みじっかっ!?」


「ですよね」


 一体、ハルの中でどんな本能が渦巻いているのだろうか?

 それとも、本当に僕とハルの間には何か特別な因縁が……?いや、こんないつ死んでも可笑しくないちっぽけな人間に因縁なんてあるわけがないか。

 まぁ、とりあえずは、やっぱり心がわからないって嘘だろハルぅ……と、いつものように心の中でツッコませてもらうこととしよう。

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