パンが三つと水筒が一つ。

 この貧弱な装備を伴ってハルと共に旅へと出た僕は今。


「あぁぁぁぁぁあああああああああああああっ!?」


 ハルに抱えられ、大空の旅の真っ最中であった。


「しぬぅぅぅぅうううううううううううううっ!?」


 ハルの能力によって、彼女に抱えられている僕にはどんな衝撃も来ないようになっているらしいが、それでも今の僕は雲の上を高速で動いているのだ。

 下を軽く見るだけでチビる。


「却下。死なない。私が守っている」


「いやぁ!?そういうことじゃないからぁっ!」


「行く」


「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」


 僕は悲鳴を上げながら、ハルに抱えられてどこかに飛んでいくのだった。

 

 ■■■■■


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「到着」


 僕が大空の旅の中で悲鳴をあげ、疲れきった折、ハルが地面へと降り立つ。


「あぁー」


 それに合わせて僕も地面へと寝転ぶ。


「うぉー、大地だぁ」


「到着」


「ん?あぁ……そうだね」


 僕は自分の隣で再三と同じ言葉を繰り返すハルの言葉に頷く。

 ここの周りは自分のご所望通りの小さな森。

 湖を中心とする森であった。

 ここであれば、人の村があるだろうし、ハルがここに来たということはそれがあるのだろう。


「ありがとう、助かったよ。これで僕も死なずにすむよ」


「愉悦」


「……それで心がないとか何の冗談?」


 僕のお礼を受けて満足そうにしているハルに突っ込みを入れながらも立ち上がる。


「それで?人の住む村はどこにある?」


「んっ、すぐ隣だよ」


「えっ?隣?」


 僕がハルの言葉に驚きながら、視線を再度見渡したその瞬間。


「な、何の用だ!」


 ガサガサと草むらをかき分けて武装した幾人かの大人たちがこちらへと姿を現す。

 彼らの表情はこれ以上ないまでの恐怖の色に染められている。


「……すぅ、ごめんなさい」


 冷静に考えてみよう。

 こちらは人と機械生命体の珍道中ではある。

 だが、向こう側からしたら自分の村を壊滅するのが容易な機械生命体が空から襲撃を仕掛けてきたことに……いや、話しかけてきたということは違うか。

 僕という人がいることから、会話可能な相手であることをかけてこちらに接触してきた、ってことかな。


「致命的ではない、だね。ハル、ここで大人しくしてて」


「了承」


 僕はハルにステイを命じた後、彼らの方に近づいていく。


「ご安心を、我々には敵対の意思は無いので」


 そして、そのままこちらに敵対の意思がないことを告げるのだった。

 さて、と。どう話そうかな?

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