行き詰まり
「はぁ……はぁ……はぁ……死ぬぅ」
訳の分からぬままにハルと共に旅へと出ることになってしまった僕は、早速とばかりに死にかけていた。
「疑問。何故、動かない?」
「う、動けるかぁ……こちとら、ただの人間なんだぞぉ」
辺りを見渡せば、自分の視界に入るのはどこまでも続く砂の大地である。
この世界は本当に目星いものがない虚無の空間である。
あるのは砂の中からひょっこり姿を出している旧人類の文明の遺産らしい廃墟と、たまにある小さな湖を中心として出来た小さな森の中に存在する人間の村。
それと、機械生命体並びに魔道生命体の異様にして巨大な生活拠点だけである。
「水が欲しい……、食べ物が欲しい……」
そんな世界で、ただの人間が外を出歩いて旅をするなんてもうただの自殺行為である。
「理解。人間は食物並びに水分が必須だった」
「そうだよぉ。それを忘れないでほしい」
なんか何の栄養素もなく動ける機械生命体に、よっぽどの低位ではない限りは栄養素を必要としない魔法生命体。
そんなよくわからん連中を僕を一緒にしないでいただきたい。
「……マジで死んじゃうからね。僕は」
「問題……して、どうする?」
「何か持っていたりしない?」
「……少量であれば」
僕の言葉に対して、ハルはお水の入った水筒一本とパンを三つほど、何もない虚空から取り出す……うーん。結構気になるけど見なかったことにしよう。
どうせ聞いたところで人類には理解できないだろうし。
「どこからこれを?」
「過去に徴収した」
「なるほど」
当たり前と言えば当たり前だが、ハルにもしっかりと過去が存在しているのだな。
「とりあえず水分だけはもらえない?のどの渇きだけはちょっと耐えられそうにないかな」
「了承」
僕はハルから水筒を受け取り、水をひとくちだけ口に含む。
これだけでも、これだけでもだいぶ変わってくる。
「これはちびちび飲むとして」
ここで一気に飲み干してしまいところだが、それは我慢だ。
ここら辺に水が一切ない可能性もあるし。
「……ここら辺の近くに人間の村があったりしない?」
とりあえずは水分が、水辺が欲しい。
恐らく水辺の近くに人間は村を構えているだろうから、何とか人間を見つけさえすれば水も確保できると思う。
機械生命体であれば、何かよくわからない力で人間を探しだすことくらい簡単にできそうなものだけど、どうなのだろうか?
「捜索する」
行けてくれなきゃ僕が死ぬだけだ。
「マジでお願い。本当に死ぬ」
早々に行き詰まりかけている僕は縋るようにハルへと声をかけるのだった。
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