旅立ち
もう本当に何が何なのかわからない。
いきなり僕に執着していると思いきや、自分に感情がないなどと宣う謎の機械生命体ことハル。
もう僕の頭の中はパンク寸前である。
「……感情がないなら、僕にわざわざ執着する理由はないよね?」
「本能」
「どんなだよ……これ、僕が断って君を置いてここを去るって許される?」
「拒絶。エクスを殺し、私も死ぬ」
「……詰んでいるやんけ」
駄目だった。
相手の本能というもうどうしようも無い観点から執着されており、それから逃れる術は無い。
「……心を、知りたいんだろ?」
「肯定」
「なら、こんな所にいてもどうしようもないよ……色々な、経験をしないと」
「理解。では、世界を巡ろう」
諦めの言葉と共に言葉を話していた僕へとハルは簡潔にこれからの方針について口にする。
「……そう、だね」
そんな、ハルの言葉に僕は少し躊躇いながら頷く。
「君の命は必ず守る。安全安心」
「……」
……よく考えてみれば、ここでハルを拒絶して殺してもらうこともできるわけか。
今さら、この世界で僕が生きていって、一体何のためになる?もう、僕には何も残されていないというのに。
「エクス?」
「……世界を巡る、か」
「肯定。そして、強制。例え、断っても引きずって私はつれて行く。殺さず、同行させるというのも問題なく可能」
「……ふふっ」
あぁ、悩んでばかりだ。
どこまでも、うじうじと情けない。
でも、僕はしっかりと前を向いて歩ける気がしないのだ。
「これくらいはっきりと断言されたら、ありがたいかもね」
だからこそ、強制された。
それに甘えてしまおう。
「行こうか」
あぁ……そうだ。
ニーナ。君の代わりに、僕が君の語っていた世界を見て回ろうと思うよ。
「了承。出発」
後ろ向きな考えへと囚われながらも、歩くことを決めた僕をしり目に、ハルは元気よく最初の一歩を歩き始める。
その歩幅は人であるこちらへと合わせてくれていた。
「不可解。何故、悩んだ?」
「ん?いや、いきなりあんなこと言われても困るだろ……正直、僕は今の人生にも」
「理解不能。キスした。人類はそれで魅了可能なはず」
「いや、いきなりキスされてもドキドキせんよ?」
「……ッ!?」
「えっ……?」
こ、この子と旅するなんて本当に大丈夫なんだろうか?
僕は早速不安に駆られながらも、それでも僕とハルの旅が始まってしまうのだった。
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