目的

 淡々とハルの口から自分の情報が出てくるという恐怖体験。

 それに対して僕が絶句した後。


「……」


 その後にハルは決して何かを話すことはなかった。


「……」


「……」


 そのせいで、僕とハルの間に重たい沈黙が流れてしまう。

 絶句から抜け出した僕も、僕で喋ることが特にないせいで口を簡単には開くことが出来ていなかった。


「えっと……」


 だが、いつまでも黙っているわけにもいかないだろう。

 僕は勇気を出して彼女の方へと声を上げる。


「じゃあ、自分はどうすれば?」


 今の沈黙は一体何の時間?

 そんな疑問も込めて僕はハルへと尋ねる。


「疑問。私に対する疑問を」


 そんな僕の言葉にハルは迷いなく簡潔な言葉で断言してくる。


「……えっ?もしかして、自分の自己紹介に対して僕の方から何かしらの質疑が出てくるのを待っていた、ということ?」


「肯定」


「……な、なるほど」


 えっ?聞きたいこと?

 そんなこと別にないから早く僕を開放してほしいのだけど……。

 だけど。


「……」


 こちらの方をジッと見つめてくるハルにそんなこと言ったら軽く痛めつけられそう……。

 さっきも腕を掴まれたときは普通に痛かったし。


「えっと、それじゃあ、ハルの目的は何?なんでこうしてただの人間である僕へと接触してくるの?あと、僕に執着している理由は何?人間を探し当てるなんてそこまで難しい話じゃないはずだろう?さっさと僕以外の奴に接触してほしいのだが」


 ということで、僕は渋々ながらもハルへと疑問の声を投げかける。


「まず大事なことが一つ」


「うん」


「私は軽い機械ではない。自分のマスターはエクスだけ。エクス以外などありえない。私はエクスを愛している」


「は、はぁ……」

 

 こんな微妙な気持ちになる愛している発言は始めてだ。

 なんで僕は初めて会う機械生命体に愛している、なんて言われているのだろうか?


「次に私の目的だが」


「うん、何かな?」


 僕はハルの言葉に頷くと共に疑問の声を投げかける。

 

「それは簡単。人間が持つ特異的な性質。本能とは大きく異なる心の解析をすること。人間同士が行う我々機械生命体とも魔道生命体とも違うコミュニケーション手段である心の解析が私の目的。そのための協力をエクスが行う」


 それに対するハルの答えは簡潔であると共に、非常に驚愕させられるものであった。


「はっ!?さっきのキスだったり愛している発言だっだりってのは一体何!?」


 僕はこれまでの発言をすべてひっくり返すかのようなハルの言葉に驚愕して困惑の声を上げるのだった。

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