日の出
毎朝起きるリズムが合わない、たったそれだけの理由でもう何年もあのひとに会っていない。小さい頃はよく見かけたな、あのひと。朝焼けの微笑みのそのひとは毎朝、東の空に顔をのぞかせていたのだ。「おはよう。今朝も早いんだね。気を付けていってらっしゃい」って。学校へ行く前のあわただしさが始まってしまうその前の、ほんのわずかな時間に窓を開けて。
だけど今はどうだ?毎日、ほとんど毎日と言っていい、朝焼けの時間にあのひとは必ず東の空で微笑んでいるはずなのに、私はいつも、ベッドの中で夢の底。遅くに起きて、出かけようとふと窓の外をのぞくと、もう灼熱に満ちている。ドアを開けて「こんにちは」って降り注ぐ日差しを見上げても、そこにいるのはもうあのひとじゃない。あのひとに会えるのは、朝焼けの時間の、街があわただしく急ぎ始めるその前の、穏やかな静寂の中でだけ。これまで何千回とあったあの時間を、私は夢の中で過ごしてきてしまった。
やっぱり、恋しい。あのひとが。薄碧い、薄明の光のなかであのひとに見守られながら一日を始められる幸福、それは早起きの特権だ。今日こそは早く寝よう。
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