愚論賛美
≪男に性欲が無ければ女に優しくなんかしない≫
「これについて君はどう考える?いや、笑わないで聞いてくれ。俺は真面目に話してるんだ」
なぜそんなことを?
「実感があるんだよ、ほんとに。女性と話すとき、特にそれが若くてきれいな人だったら、あわよくばこの人と一緒にごはんを食べに行ったり、映画を見に行ったりして、仲良くなって、それから何かのきっかけで、俺の家か、あるいは彼女の家かで、って、さ。そういうの、ない?」
はっはっはっ、いいねえ、愚論だねえ。いいとも、いいとも、男はいつだって、どうでもいいことについてしっかり真面目に、よく考えて、そしてどうでもいい結論を思いついて、そしてしっかり、どうでもいいことをしでかすんだ。まったく、愚かだよ。
「ああ、いいよ、愚かだ。でもね、本当のところはどうか、君だってそうに違いないね。君だって愚かなはずだよ。若くてかわいい娘を見かけたら、今の君みたいな冷静さはどこへやら。気取ってたって、しかたないよ」
言ってくれるじゃないか、いいさ、いいさ、賛成しよう、あんたの愚論に。面白いよ、愚論賛美だ。ああ、たしかにあるかもしれないな。いわゆる、下心ってやつだろ?つまり。で、人はそれを「恋って字もそうだ」とか言うんだろう。ばかげてる。けれど、いつもそんなくだらないことばかり喋ってるあんたみたいな人間が、なんだか一番幸せそうなんだな。世の中はたくさんの愚かさと、少しの生真面目さでうまくやってる。不思議なもんだ。
なんて愚論。
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