第23話 エルフはクリエイター(仮)に寝取られの再確認をする

 2月の冬は僕を家の中に閉じ込める。


 外の寒さを寄せ付けない温かい部屋で、珈琲を飲みながらゲームを作っていた。


 コトコトコト……と、キーボードを叩く音が響いている。


 携帯の画面が光って着信音が鳴る。


 プルル……


 携帯を見ると翠からの着信だった。集中しすぎるとアイデアが枯渇して悩むときが多いけど、彼女の電話は僕の心をリセットしてくれる。


「新、寝てた?」


 時計を見ると11時。寝るには少し早い。


「ううん、まだ寝てないよ」


 彼女の声は寒さを感じさせない明るさを持っていた。


「明日もデートの前に新の部屋に行っていい?」


 朝から家に来るとセックスばかりになり、結局1日家にいる事が多くなる。だから最近は先にデートをしていた。


 そういえば、1か月前にも朝から来たことがあった。あの時も金曜日に電話が来ていたな。


 その時は僕の部屋で一緒に映画を見てお昼は出かけた。夜はいつもより激しくて、淫らな言葉を沢山言っていたのを思い出す。


「もちろんいいよw何時ころ来る?」


 朝からいきなりセックスはないだろうけど、寒い冬はそれもいいと思う。


「そうね、9時過ぎには着くように出るね……」


 彼女の背後から街の雑音が聞こえる。夜中に外にいることは珍しかった。


「今外なんだね、寒いだろうから気を付けて帰るんだよ」


 雪が降るほどの寒さではないが、彼女の白い肌を思い出すと病弱な感じに思える。でも風邪すら引いたことないらしい。


「うん、ありがとw本当は今から行きたいけどね」


 僕も会えるなら24時間一緒に居たいと思う。でも会えない時間があるから、彼女の大切さを感じることが多い。


 僕が勉強しているのを分かっているんだ。


「こちらこそ、気を遣ってくれてありがとう。早く家に帰るんだよ」


「うん、じゃあ明日」


「うん、翠、愛してるよ」


「うん……私も愛してるw」


 ピッ! 


 ほんの1分の会話でも、心が温まりストレスが消えてなくなる。僕がゲーム作成を頑張れるのも、彼女の支えがあるからと思う。


 翠の声を聞いたら、ちょっとムラムラしてきた……


 気分転換にDLサイトでも覗こう。


 最近は女子大生や新婚夫婦の寝取られ作品を見ることが多くなった。翠と重ねてるつもりはないけど、手淫の時に彼女の淫らな顔がよぎる。


 いや……明日、朝から来るなら今日は止めておこう。1滴でも多く彼女に受け止めてもらいたい。


 ◇


 朝8時40分。


 彼女からLINEが入った。


 ”今駅を出たから、15分くらいで着くよ。何か買うものある? ”


 ”ありがとう、お昼の食材はあるから大丈夫。気を付けてきてね”


 彼女は、僕が断っても、何か必要なものがないか考えているだろう。


 先週はアイスクリームだった。彼女は”寒い冬に温まりながら食べるアイスは最高ね! ”と、言って美味しく食べた。


 小さなサプライズは嬉しい。


 ◇


 ガチャ! 


「帰ったよ~寒かった~!」


 僕は玄関に向かいながら声を掛ける。


「珈琲淹れたよ。ミルクは?」


 厚手の白いコートに黒いスカート。グレーの厚手のタイツで寒さ対策をしていた。


 コートを脱ぐと、紺色のタイトなセーターが、出ている部分と凹んでいる部分を強調してる。


「今日はカフェオレがいいな! 甘くて熱々のカフェオレ!」


 玄関を上がった彼女は、両手を開き、ピョンピョン跳ねてハグをせがむ。


「温めて! 寒いよ!」


「カフェオレの前に僕が温めるんだねw」と言って彼女に抱き着いた。


「ふわ~、温かい~♡しあわせ~。チュッ」


 彼女の冷たい唇が僕の頬に触れる。次に僕から唇にキスをした。


「冷たくて気持ちいいw僕が温めてあげる」と言って長いキスをしていた。


「じゃぁとりあえずコタツ入って」と手を引いてリビングに向かう。


 テーブルのマグカップから湯気が立ち上り、2人の心を温めていた。


 こたつの中の4本の脚は、触れ合いながらお互いの感触を楽しんでいる。


「朝からここに来たのは、1ヶ月前ね。やっぱり落ち着く〜」と、両手を大きく上げて伸びをすると、セーターの胸の部分が張り出した。


 セーターの中身に顔を埋めたい。でもいきなりおっぱいの話はできないな。


「本当は一緒に暮らしたいけどね」


 と言った後に、彼女のお母さんの言葉がよぎる。あと……3年か……


「ねぇ。新に確認したいんだけど」と熱い珈琲をすすりながら言った。


「なに?」


 そして真面目な顔で僕に問いかける。


「新は相変わらず、寝取られは好きよね」と改めて聞かれる。


 好きか嫌いかで言えば大好きだし、先週も彼女と疑似寝取られプレイをしていた。


 何で今さら確認するんだ? 


「それは……嫌いだったら先週みたいなことしないでしょ?」


「そ、そうねw」


 彼女は恥ずかしそうな顔で僕を見る。


 2人で同人誌を選び、寝取られ報告のまねごとをした。彼女は、朝まで続いた他人とのセックスの報告をする。


 同人誌を読んでいる時の、恥ずかしそうな顔を思い出す。何度も僕を見て「本当にこんなこと報告するの?」って言ってきたんだ。


 それでもノリノリで報告したのだから彼女も楽しんでいたのだろう。


 じゃあ何のために、寝取られ好きの確認をしたんだ? 


「じゃあ言うね。昨日も上山”先生”の所でマッサージを受けてきた」


 彼女は呼び捨てにしていた上山に”先生”を付けていた。違和感と言うか、上山に心を許しているようで胸が苦しい。


 最近は週1でマッサージの仕方や、筋肉の動きを教えてもらってると言っていた。少しの不安はあるけど、元教師だし問題無いはず。


 上山を信頼しているんだな……


 しかし彼女の報告は少し違っていた。


 今回も客への施術を見せてもらい勉強をしていた。その後に、マッサージを受けることになったが、いつもの作務衣のような服ではなく、紙で出来た下着を着て、マッサージを受けたらしい。


「いつものマッサージと違っていたんだ……」


 いつものマッサージは、手の捻りとか角度で、何筋が張るとか、骨の動きと筋肉の関係を教えてもらっていたはず。


 それがいつもと違い、触れるだけの施術だった。ただし直接肌に触れる優しいマッサージ。


「それで……もしかして……」


 僕の心臓がギュッと握られる。同時に下腹部が熱くなってきた。


「もっと詳しく聞きたい?」と上目遣いに僕を見る。


 聞きたくない。なんて言えない。いつもの”疑似寝取られプレイ”じゃなく、本当の寝取られ報告みたいだ。


「うん。詳しく教えて」


 彼女の足が僕の内股をくすぐる。


 むくむくと僕の性癖が眠りから覚めてきた。


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