第76話 人に……?
人間に……戻りたい? むしろ戻れるのか?
「いや、君と言う存在はもう竜の身体に定着してしまってるんだ。一足遅かった……としか言えないね。でも、今からでも人間に寄せる事は出来るのだよ。
そうだね……レリアちゃん。彼女の獣化した姿があるだろう? あれに近しい姿になる事が出来るね。どうだい?」
どうだい? って……いや、正直この身体は動かしやすいし、スペックも高いからありがたいんだけど。
と言うかその要件を受け入れたとして、創ちゃんに利点はあるのか?
「うぅむ……私には利点が無いね。そもそもこれも頼まれてやってる事だし。
全く、ヤツは人使いが荒い……もう少し労わってくれても良いじゃないか。私の世界を壊した癖に
……っと、関係ない事を喋ってしまったね。とにかく、私には関係ないって事だ。そちらの意思次第で結果は決まるって事だよ。
なんでも、彼が言うには巻き込んでしまったお詫び……らしいね。存分に悩んでくれたまえ」
人の身体、か……正直に言えば、人の身体を持ってみたくはある。なんせ割と歯痒い思いをしながら生活をしてたのだ。
レリアの手伝いが出来なかったり、食べる時に手を使うのがむずかったり……
やっぱり人として生活してきた記憶がある以上、何処か竜の体の慣れてない節は多少あったと思う。でも最近は身体の調子も良いし、慣れてないと思う事は少なくなってきていると思う。
「それが「存在が竜の身体に定着している」って言ってた奴だね。君が一度死んだ事でより存在が竜に近づいてしまってね……あぁ、失礼。ついつい説明したくなってしまって。気にしないでくれ」
いや、気になるわ。普通に重要そうな事を言ってそうだし。
でも、そうか……俺はしっかりと竜になってしまってるのか。
……それに、この身体とも数年付き合ってるわけだし、別れるのは惜しいと思う気持ちもある。歯痒い気持ちはあったけれども、逆にこの身体だからこそレリアの側に居れて、そして守れるのだから。
レリアはアレでも王族なのだ。人間……いや、竜人になった時に関係を作れる保証なんて何処にもない。
「そうかい……それが、君の選択ってことで良いのかい? 君は召喚獣と言う枷から外れ、異世界生活を謳歌出来る日々を蹴ると言うんだね?」
……うん。ハナから異世界生活なんてあまり興味はない。俺が心配するのはレリアだし、側に居たいのもレリアだけだ。ならばこのままの方がいい。
「その考え方も召喚獣と言う枷の所為なんだがね……まぁ、いいさ。どうせいつか君自身がその枷を壊してしまうだろうからね。
その時に君がレリアちゃんの元に居続けるかを楽しみにさせてもらうよ。
……さてと、君の要望を聞けたところ悪いんだけど……一旦身体を組み替えさせてもらうよ」
え? いや、結局身体を変えるって事?
「外見は変わらないけどねぇ。どうやら主人公としての必要なピースが入ってなかったらしくてね。それの修正さ。なぁに、一瞬で終わるから大人しくしたまえよ」
数メートルは確実にあった距離が一瞬で詰められ、逃げる暇もなく頭を押さえつけられる。
直後、身体がカァッ! と熱くなり、そしてすぐに元に戻った。……うん、体に特に変化はない。本当に何をした?
「一応、教えておこうか。まずは君の————」
創ちゃんはそう言いかけ、そして俺を蹴った。
唐突な蹴りに勿論反応出来るわけなく、俺は身体を壁にぶつけてボロボロになってしまった。
場所は部屋の端っこ……なんで急に蹴ったのだろうか?
そんな疑問が浮かんだ瞬間——
『見つけた……排除対象』
若干幼なげな残る様な、それでいて気怠げで無気力っぽい声が部屋に響いた。
そして空中に謎の穴が開き、かなり幼く見える美少女が姿を現した。
そしてその美少女からもまた、とんでもない実力を感じるのだった。
……どうしよう。俺、また死ぬのかなぁ。
「はぁ、まったく……良い加減ストーカーはやめてくれると助かるんだけど? ねぇ、リアちゃん。私にだって用事があるってのに……」
「黙って。貴女に名前を呼ばれる筋合いなんて無い。
…………創造神気取りの悪女が」
「落ち着きたまえよ、シオン。……いや、今はエルシオンか。番が出来てなお私を狙うのを辞めないとはね。まったく、なんとも勤勉な事で」
「……貴女を殺すまで私達は安心出来ない。…………必ず、貴女を排除する」
とんでもなく濃厚な殺意が、辺りを支配した。
俺なんてまだまだ子供な竜だ。あまりにも強い殺意に当てられ、一切身体が動かなくなってしまった。
……そして、謎の美少女と創ちゃんの戦いが始まってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
やぁ、読者諸君。創ちゃんによる説明の時間と行こうじゃないか。
今回現れた謎の美少女こと、リア・エルシオン……彼女とは中々深い縁があってね。
まぁ、縁と言ってもちょーっと彼女の世界に干渉したら大激怒を喰らってそのままずっと追いかけられてるだけなんだけどね。
まぁ、つまり……別世界の住人って事さ、彼女は。ちゃんと次話で元の世界に送り返すから安心したまえ。
と言うか、この世界に居続けられても困るからね。
ん? 私とリアちゃんの戦闘が始まったんじゃないかって?
……深読みしないのがお約束ってもんじゃないのかい? 読者諸君。
あとがきに時間軸なんていう概念は無いのだよ。
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