第75話 隔絶されし実力
「えいっ!」
牽制がてらにレリアが投げた五寸釘っぽい魔道具は宙に浮いてから創ちゃんへと飛んでいった。
創ちゃんが釘の対処へと周りと見込んで創ちゃんへと近づき、爪撃を繰り出す。
「ふむ、この程度なのかい? 様子見なぞせず、本気で来たまえよ」
釘は創ちゃんに一瞥されただけで動きを止め、地面に転がり、俺の爪撃はまるで羽虫でも払うかのように動かされた手に阻まれた所か……
……爪撃を繰り出すのに使った前片足が吹き飛ばされてしまった。
あれだけの動きで部位欠損とかマジかよ……
「リファル⁉︎ っ、一旦下がって!」
レリアの結界に押し出される様に後方へと下げられる。
そして俺が前線から引いた時にできる隙を神凪さんや狐の召喚獣、レリアの魔道具で攻撃して埋めている。
……けど、一切効いていない。
防ぐと言うよりも、【無効化】している。もはや強さの次元が違う……
レリア達が耐えている……というか、攻撃しているうちに治癒属性の身体強化と治癒魔法を併用して瞬く間に欠損した部位を生やす。
……うん、やっぱこの身体じゃ四つの脚がないとバランスを取れないな。今度後脚のみで動けるように練習するべきだろうか?
っと、そんな事を考える暇は無いんだった。脚がしっかりと動かせる事を確認してから、レリアの元へと走っていく。
ついでに走りながら状況を確認するが、特に変わった様子は無かった。
レリアと神凪さん達が常に攻撃をしているが、それを全て無効化する創ちゃん。恐らく創ちゃんが攻撃に転じれば確実に1人は死ぬと思う。……それも一瞬で。
俺の脚が吹き飛ばされたのは治癒出来ると知っているからか? 初対面で俺の名前も、レリアの名前も……そして【主人公諸君】と言う言葉。明らかに普通な存在じゃ無いんだから、どんな情報を握ってても不思議では無い。
……と、状況確認がてらに観察してるとふと気付いた。
創ちゃんの肩に黒い鳥が乗っていた。妙に青み掛かってる様な鳥に見えるが、召喚獣だろうか?
にしてもあんな
「ん? あれ、いいのかい? それをして……
今後の展開とか色々……まぁ、君はそう言うなら別に良いか。お言葉に甘えて……実行させてもらおうか」
創ちゃんが何者かと話をしているっぽい。少なくともレリアや神凪さんでは無いのは確かだ。こちら側を一切見ていない。
ここでようやくレリアの側に到着した。出来るだけレリアの壁となりやすい様に位置どりをしてから創ちゃんを観察する。
多分、俺が創ちゃんに近づいてもさっきの二の舞だしな。
「では……一旦攻撃を辞めてくれたまえよ、君達」
「んなっ! 魔力が……」
「ユニーク属性も使えない……何これ」
創ちゃんが指パッチンをすると共に、周囲の魔力が完全に凍り付いた。
一切操作することができず、俺の魔石から魔力を取り出そうにも、取り出せない。そう、まるで辺りにあるすべての魔力の操作を創ちゃんがしているかの様な……
「この世界の人達の欠点は魔力を奪えば何も出来ないところだね。どうだい? 主人公二人組……魔力を使わない戦い方を身につけてみても良いと思うのだけど
……まぁ、今はそんなことどうでも良いか。
今からリファル君以外を全員家に帰してあげよう。なんせ、このままでは話が進まないからね……もう少しこちらの話を聞く耳を持ってくれても良いじゃないか。ほんと……何処かの霊神龍みたいだよ」
「ふざけないでっ! リファルに何をするつもりなの!」
「まぁまぁ、落ち着きたまえよ。別に害がある事をしようとするわけじゃない……だから大人しく受け入れたまえ。
……転移後に暴れては行けないよ?」
俺以外の人達や、召喚獣が淡く光り出した。言葉通り、家に転移させて強制帰宅させるらしい。
荷車に乗ってる人達も淡く光ってるのを見るに、相当俺との一対一を望んでるっぽい。
レリアが俺にしがみついてるけど、多分無意味だろう。俺達総出でも全く歯が立たない存在が巻き込み転移なんかさせると思わないし。
「それじゃあ、一旦さよならとさせて貰おうか。またいずれ会うだろうね、主人公ちゃんとそのライバル君。成長を楽しみにしているよ」
『パシュン』と音を立てて俺と創ちゃん以外の生物が全て、消えた。これが転移……強制戦線離脱とかどうしようもないな。
勿論、俺にしがみついてたレリアも転移している。と言うか、レリアとの繋がりも感知出来ない……?
「あぁ、その点は心配しないでくれたまえ。ただ単にその繋がりって言うのが機能しない場所に居るからね。私がレリアちゃんの元へ君を届ければ繋がりって言うやつは機能するさ」
心の声を読んでらっしゃる……?
「その通り。まぁ、私ほどになればこの程度は造作もないからね。あぁそれと、君の疑問に答えるとしようか。
……あの鴉は、召喚獣では無いよ。むしろ私と同郷とも言えるね。いや、父か? 兄かもしれない……とりあえずそんな存在なのだよ。勘違いしないでくれたまえよ?」
家族って事……だろうか? よく分からないけど、重要ではなさそう。
で、俺に用事ってのは?
「そうだね。さっさと要件を終わらせるとしよう」
「……ねぇ、リファル君。君は人間に戻りたいかい?」
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