第74話 桃色髪の女の子
辺り一帯に冷気が満ちる。
アイスブラスト——龍のブレスを人間の尺度にまで落とし、魔法よって再現した物であり、その効果は数あるテンプレ魔法の中でも屈指の火力を誇る程。
そんな魔法をぶっ放した事によってアイスブラストの射線上は凍り付き、周囲を滅茶苦茶冷やしている。
レリアのアイスブラストを人の身で直接受けてそうだが……あの桃色髪の女の子は大丈夫だろうか?
冷気と土埃が徐々に晴れ、人影が見えて来た。どうやら無事だったらしい、
「まったく……レリアってキャラはこんなに喧嘩っ早かったのかい? 設定ミスにも程がある……ん? あぁ、成程。勘違いされてるのか。これはしょうがないね」
完全に冷気と土埃が晴れ、桃色髪の女の子の姿が見えた。
桃色の髪は腰まで伸ばしており、瞳は水色。顔全体は中々幼く見えるが、雰囲気がまるで子供とは違う。
……と言うか、掴みどころが無い様にも思える。
服装は白衣。前世で見た診察衣その物であり、若干オーバーサイズなのか、萌え袖っぽくなっている。
そんな桃色髪の女の子は右手のひらを上に向け、その上に謎の本を浮かばせており、左手をこちら側に向けて【結界】を張っていた。
……レリアと同じユニーク属性、なのか?
「ふむ……よし、では気を取り直して自己紹介と行こうか。
やぁやぁ、初めまして【主人公諸君】。私の名前は「◼️◼️◼️◼️」……まぁ、恐らく聞き取れないだろうから此処では【創ちゃん】とでも読んでくれたまえ」
主人公、諸君……? 何でそんな言葉が……
いや、それ以上に「創」と名乗った女の子の名前が問題だ。
全く聞き取ることすら出来なかった。まるでこの世に存在しないかの様な言語にも感じたし、知ってはいけないと思える様な雰囲気をその名前から感じてしまった。
全く意味が分からない……
「誰かは知らないですけど、このタイミングで現れるなんて獣解放なんちゃらって奴らの仲間でしょう? ならば手加減の必要は無いですよね」
「まぁまぁ……落ち着きたまえよ、レリアちゃん。その獣解放——なんだっけ? ……あぁそうだ、獣解放同盟って奴らの仲間って証拠はどこにも無いじゃないか。憶測だけで攻撃するのは些か王族としてよろしく無いんじゃないかい?」
「なら、貴女は何者なんですか」
「だから言ってるじゃないか。私は「◼️◼️◼️◼️」、愛称は創ちゃんってね。
ちなみに、今回用があるのはそこのリファル君だ。ちょっと失礼しても良いかい?」
「私が、見ず知らずの貴女にリファルを触らせるとでも?」
その言葉を聞いたレリアは五寸釘? みたいな魔道具を取り出し、臨戦状態となっていた。
正直言うとレリアには戦って欲しくない。なんせ相手の底が全く見えないのだ……
まるで深淵。底無しの魔力量に、とんでもない力が秘められてるのがわかるあの本。
そしてアイスブラストのダメージを全て無効化したあの結界……勝てる要素が見当たらない。
「ほぉ〜……レリアちゃんは私と戦うつもりかい? 君も分かってるんだろう? 私とレリアちゃんの間には圧倒的な実力差があるって事ぐらい」
「……分かってますけど、それでも私はリファルを守りたいのっ! リファル、私が戦っている間に逃げて! コレは命令っ!」
「うーん、流石にリファル君に逃げられると困ってしまうね。ちょっと失礼するよ」
創ちゃんがふいっと左手の指を振ると、このボス階層の入り口と出口が一瞬にして消えてしまった。
ダンジョンに干渉しているのか……? 確かに神凪さんのユニーク属性でも地形の操作は出来ていたけれど、さっき創ちゃんは結界を使っていたはず……まさかユニーク属性を二つ持っている?
いや、そもそも姿を見せる前は透明化か何かをしていたのを考えると三個以上、か? ……ヤバいな。
過去の文献からユニーク属性を二つ以上持ってる存在は確認されていたけれども、まさかこんな所で出会ってしまうとは……
ちなみに俺の場合は治癒はユニーク属性で、稲妻がSユニーク属性だから厳密にはユニーク属性二つ持ちとは違うのだと思う。
……そもそも召喚獣がユニーク属性持ってる事自体バグだしな。
「ならしょうがない……リファル! コイツを倒すよ!」
「微力ながら僕とアルンも戦わせてもらうよ。どうやら只事じゃ無さそうだし、リファル君には此処まで助けてくれた恩があるからね」
『コォンッ!』
……マジ、かぁ。正直勝てる気がしないし、レリアを守れる気もしない。
唯一良かった点を挙げるならば相手はこちらを殺そうとしてないって事ぐらいだろうか。
もし殺す気があったら完全にここで全滅だった。
「基本は私とリファルが前衛で。神凪さん達は後衛をお願いしますねっ!」
「了解、任せて!」
レリアが俺に騎乗し、指示を出してくる。
最近のレリアの戦闘方法は魔道具主体か、魔法主体。そして魔道具と魔法、俺に騎乗して戦う竜騎士状態がある。
……まぁ、レリアの才能を活かすなら魔法主体が1番良いのだが、今回は神凪さんって言う後衛がいるから竜騎士状態で前衛をしようとしているのだろう。
「丁度君達の成長度合いも見たかった事だし丁度良い……のかもしれないね。分かった、ちょっとだけ遊んであげよう」
創ちゃんが持つ本から謎の文字が浮かび上がると共に、戦闘は始まるのであった。
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【◼️◼️◼️◼️(創ちゃん)】
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召喚獣:無し
ユニーク?属性:◼️◼️◼️◼️(原本)
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考えた設定を文字化けシミュに通しました。
一応修復すれば途切れ途切れに情報が得られる……かも?
「なぁ、私はこんな説明で不服なんだが〜……」
我慢してくれ、創ちゃんはそう言うキャラだ。
「むぅ……しょうがない。私と君の仲だからね。許してあげよう」
あっ、それと今後の説明係変わってくれない?
「それは君の仕事……あぁ、自我とかの問題ね。それならキャラである私がした方が良いかもしれないね。……これは借りだからね? 冰鴉」
……助かる。
「ふふん、任せてくれたまえよ」
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