第70話 魔道具師の戦い方

 レリア・プリモディアside


「……ダンジョン?」


 リファルとの繋がりが示す先は地下を示している。けれども、その肝心の地下に行くにはおそらく未発見だとされているダンジョンに潜るしかない。


 そしてそのダンジョンの入り口の前には見張りだと思われる人達が四人ほど。その人達が使役する召喚獣は周りに居ないっぽい。

 ただの見張り……にしては人数が多い気がする。もしかしたらダンジョンを探索する人達の可能性もあるけれども、こんな所にダンジョンがあるだなんて聞いた事がない。


 リファルを攫った敵か、それともただのダンジョン攻略者なのか……判断に迷っていると、そよ風が吹いて話し声が聞こえてきた。


 急に吹いたそよ風に、妙に聞き取りやすい話し声……水月風狐が風魔法でも使ったのかもしれない。

 中々に賢い……流石は四属性を扱う召喚獣、と言うことかな?


「——はまだなのか?」

「いや、まだだろう。お前は運び込まれる奴らを見たか?」

「いや、見てないが」

「なら教えとくがよ……今回は随分と大物が釣れたんだとよ」

「大物?」

「そうそう。特に目玉はあの氷竜姫の召喚獣と、四属性持ちの召喚主だ……こう言う奴らは決まって繋がりが硬ぇからな。時間が掛かるんだろ」

「そりゃ確かに大物だな……でもそう言うのって本拠地で解放するんじゃ……?」

「さぁな、ヘリオスさんが此処で解放するってんならそれに従うまでだろ。俺らにゃ上の考えてることなんて分からねぇんだからよ」

「そりゃそうかぁ」


 ……確定、かな。

 確実に今回の騒ぎの実行犯達だ。ヘリオスって人が誰なのかは分からないけど、多分リーダーか誰かなのだろう。……相手取るのが1番大変になりそうかも。


「出来るだけ中に居る人に気付かれないようにしたいんだけど……行ける?」

『コォン』

「……何言ってるか分からないや。一応言っておくね……私は後ろの二人をやるから、君は前の二人を相手してくれるとありがたいかな。

 それじゃ……行くよっ!」


 敵集団に飛び込み、まずやるのはダンジョンの入り口を封鎖する事。

 即座に結界を張り、声すらも中には届かない様にしたところでようやく敵の人達がこちらを視認し、敵対の姿勢を取ってきた。


「なっ! 誰だテメェっ!」

「よく見ろ、銀髪に琥珀眼、それと庶民にゃ持ってない気品……ありゃ多分氷竜姫だな。大方自分の召喚獣を追ってきたんだろ」

「氷竜姫⁉︎ この場所を特定するにしても早すぎんだろ!」


 相手がもたついている間に更に私達と敵の人達を囲む様に結界を張る。これで増援の心配は無いはず……特にこの人達の召喚獣が合流されたらめんどくさいしね。


「おいおい……よく見りゃあの四属性持ちの召喚獣すら居るじゃねぇか。こりゃあヤベェかもな……おい新人っ! お前はヘリオスさんに伝えてこい!」

「了解ですっ!」


「私が貴方達を逃すとでも?」


 投擲して使う魔道具を新人と呼ばれた青年に向かって放り投げ、起動させると魔道具を中心として地面が一気に凍り付く。


 本当は自分で魔法を使った方がお手軽だし想像通りに凍らすことも出来るけども、今回はついでに魔道具の対人性能を試したいから魔道具主体で戦うつもり。

 結界を張ったのはあくまで保険としてだ。


「んなっ、足が滑って……!」


 この魔道具は水の魔石で地面に薄い水をを張った後に氷の魔石で急速冷凍させて氷の膜を作る魔道具なのだ。分類は二律魔道具……コストは安いけれども、作るのが大変な物の一つなのだ。


 とは言え効果は絶大。水と氷の二律魔道具である為、水と氷の属性を使える人じゃないとこの上はまともに歩けない。

 現に敵である四人は立つのに必死と言った感じだ。


 そんな氷の床の上を私は堂々と歩き、先程指示を出していた男の近くまで行き、念の為に結界で身体を拘束しておく。


「なっ! う、動かねぇ……」

「……リファルはどこ?」

「はぁ? リファルだぁ? しらねぇよそんな奴。そんな事より早く解放しやがれ!」

「なんで貴方を解放しないと行けないの? 解放する訳ないじゃん。

 で、リファルは? 私の召喚獣であるリファルはどこ?」

「だからしらねぇっつってんだろうが! ダンジョンん中でのたれ死んでんじゃねぇの? まぁ、どうせお前らの繋がりが切られるんだ……大人しくなってる事だなっ!」


 ……何この男、使えない。コイツならリファルの居場所を知っていると思ったのに。


 いや、一応ダンジョンの中に居るって言う確証は取れたからまだ良いかも? 

 リファルを探すならやっぱりこのダンジョンに潜らないとなんだね。


 男の頭に地の魔石を使った魔道具を装着し、起動させる。


 魔石から岩石が次々と生成され、次第に男は岩石に埋もれた。更に岩石の隙間から石ころが溢れ出て隙間を埋め、次には石ころの隙間から土が溢れ出た。


 これはいわゆる拘束用魔道具。装着した生物を囲む様に岩を生成し、岩石の隙間を石ころで、石ころの隙間を土で埋める魔道具。


 確かどこかの地域で土葬とかに使われるのだとか言う魔道具を参考にして作った奴だ。

 ただまぁ、試す事ができない魔道具だったから実際に試したのはこれが初めてなのだ。普通に中で窒息死してるかもしれない。


 ……まぁ、窒息死しても良いでしょ。どうせ私とリファルの仲を引き裂く敵なわけだしね。


『クォン』

「なに? ……あぁ、他の三人をやっといてくれたんだ。ありがと。

 ならもう、ダンジョンの中に入っちゃおうか」


 狐の鳴く声に振り返れば、そこには焼け焦げた死体が三つあった。

 結局私は1人しか倒してないけど……まぁ別にいっか。


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