第66話 魔力乱れてた方が良くない?
なにやら腹辺りから魔力の高まりを感じる。
えっ、怖い。身体を動かせない都合上、腹辺りは一切見れないのだ。
一体何が起こっているのだろうか? とりあえずダメージを受けても耐えれるように制御が出来る範囲で治癒属性の身体強化を施しておく。
治癒属性の身体強化──それは傷ついた瞬間に身体に治癒を施す強化方法だ。以前のライアー君の召喚獣との決闘の時はわざわざ治癒魔法を掛け続けていたが、普通に身体強化として使える事にこの前気づいてからは、自身の治癒には身体強化を使ってる。こっちの方が魔力のコスパも良いからね。
効果としては、超再生。凄く効果の高い継続回復と言った感じだ。治癒魔法として掛ける場合は超回復──いわゆる即時回復で、治癒属性の身体強化と併用すればそれこそ魔力がある限り死なない。
ほんと、これにはもっと早く気付くべきだった。これが出来ていればあの時ダンジョンで死ぬことは無かったかもしれないのに。
そんな事を思っていると、一際大きく魔力が膨れるのを感じて身構える。
その瞬間、俺の腹に腹パンなんて比にならないほどの衝撃を受け、俺を閉ざしていた氷を突き破って壁に激突した。
腹と背中に深刻なダメージ。特に腹は酷い……なんか裂傷みたいな感じになってるし。
とはいえ瀕死になるほどのダメージでは無いし、身体も動かせる。腹と背中に受けたダメージもほんの数秒で再生が完了するだろう。流石は治癒属性だ。
身体を動かせるようになったからには即座に周囲を見渡し、状況を判断する。
まず、獣解放同盟だと思われる集団は突如氷の中から解放された俺を警戒するように立っている。流石に竜種相手だと警戒するか?
次に魔力を乱してる原因は──あの中央にある魔道具だな。神凪さんが壊そうとしているみたいだけれども、敵集団の纏め役が魔道具を破壊されないように警戒しているせいで壊せてない。
最後に生徒や召喚獣達。彼らは繋がりを切る作業の邪魔にならないように端っこに寄せられてる。ちょっと激しく戦っても巻き込みはしないと思う。
さっきの謎衝撃でそこまで被害が出て無さそうなのは素晴らしい。
「ッチ、なんで急に氷が爆発したんだ? まぁいい。お前ら! あの召喚獣を抑えろ!」
「……参ったな、これじゃ魔道具を壊せないや」
敵集団の大半が魔道具の前に出てきて、俺と対面する。見ている感じだと敵集団の奴らも魔法を満足に使えない状態なのだろう。魔法どころか、身体強化すら使うそぶりを見せておらず、それぞれが武器を持っている。
現在俺が暴発させずに扱える魔力は大体、基本属性なら6割、稲妻属性なら3割と言ったところか。
それと、魔技であるブレスは恐らく放てる。元々、竜の本能に任せて放ってた技だ。制御云々は元から無いに等しい。
しかしまぁ、正直初動をミスった。あの集団の纏め役が魔力を乱す魔道具の確保に動く前にブレスでも放って魔道具を壊しておくべきだった。そうすればいつも通りに稲妻属性も使えたというのに。
たらればを言っても仕方がない、か。じりじりと距離を詰めてくる敵集団に向かって堂々と足を踏み出す。
数的不利を物ともしないように、遠慮なく足を進める。相手にとっては、格上の召喚獣であり、そして強者の象徴でもある【竜種】……これを有効活用しないわけには行かない。
現に、一番前に居た男は顔を青くしている。この男……俺とレリアの繋がりを、真っ先に断ち切ろうとした奴か。ふーん……
いつもの五割ほどの魔力で雷属性の身体強化を施し、一番前に居た男の目の前に駆ける。
すぐに目の前まで到着し、男の身体を押し倒して首を噛み千切る。
これで、1人は絶命。残りは纏め役含めた七名だ。
臆せず切り掛かってきた男の攻撃を鱗で受け、攻撃後の隙に氷柱を飛ばす。
相手は反応も出来ずに首元に氷柱が突き刺さり、絶命。こう見ると人間って結構脆かったんだなぁ。
魔力の有り無しも関係していると言えばしているのだが、それ以上に種族差が激しいと言わざるおえない。
何せ、相手の剣は俺の鱗に阻まれて皮すら切れないのにも関わらず、俺の爪と牙はその剣以上の鋭さと硬さを持ち、容易に殺傷が出来る。
素の身体能力もそうだ。魔力で強化してない人の目では竜の動きに動体視力が追い付いてない。
……あれ? もしかして魔力が乱されてた方が戦いやすかったりするのか?
まぁ、まぁ戦える人数は多い方がいい。それにこの魔力の乱れによってレリアが上手く魔法を使えない可能性だってあり得る。
となれば結局あの魔道具は壊さないといけない。目標は変わらず、あの魔道具を破壊してこの牢屋から出るって事だ。
……なんとか、脱出せねば。レリアが今どうなっているかが分からないのが1番心配だ。
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