第64話 囚われの中
「繋がりが硬い奴は後回しにしろ! とにかく多くの召喚獣を解放するんだ!」
「は、はいっ!」
氷漬けのまま運ばれて、今現在何処かの地下牢? ぽい所に運ばれて少しした頃。
嫌悪感を感じる様な魔道具を数個持った集団が近付いてきた。
会話の内容を聞き取るに、おそらく召喚獣と召喚主の繋がりを断ち切ろうとしているのだろう。つまりコイツらは獣解放同盟……俺とレリアの仲を幼い頃から引き裂こうとしてくる奴らって事だ。
起きている召喚獣達は、繋がりを断つための魔道具を嫌悪し、威嚇をしているが魔力を乱す魔道具が置かれているせいで上手く身体を動かせていない。
そしてそれは俺も同じ。氷に閉ざされているせいでまともに動けず、かと言って魔法を使おうにも魔力を乱す魔道具のせいで暴発しかねない。
「へへ、早速繋がりを切らせてもらおうかな」
なんとも醜悪というか……子悪党感溢れる顔をした男が俺の元までやってきた。
手には妙にゴツいルーぺ型の魔道具と、糸鋸みたいな見た目をした魔道具。
男はルーペ越しにとある場所を定め、そこに糸鋸を当てて——その刃を一気に入れ込んだ。
そして伝わる、レリアとの繋がりが切れ始める感覚。
……とは言え、俺とレリアの繋がりはあまりにも強固。最近だとレリアの獣化が2時間ほど維持出来るほどに強い繋がりとなっている。
そんな繋がりが容易に切れるはずも無く。
「硬った! なんだこれっ!」
「何やってんだお前、コレはここの中でも抜きん出て強い繋がりなのは見て分かるだろ! 別の奴の繋がりを切れ!」
「す、すみませんっ!」
「……ったく。いつ学園の追っ手が来るか分からねぇってのになんでコレに手を出すんだか。
特にこの二つがヤベェな……」
集団の纏め役っぽい男が俺と神凪さんを見てそう言った。俺の場合は一度切られかけた事もあって複雑化してるから分かるけども、神凪さんの繋がりも相当深く、硬いらしい。
「まぁいい……追っ手が来てもどうせ数日後だろ。繋がりが弱ぇ奴から断ち切った後にたっぷり時間を掛けて切ってやる」
そう言った男は復讐者の目をしていた。まるでこの世界を呪うかの様に憎く思ってそうだ。
……八つ当たりは勘弁願いたい。
男も糸鋸型魔道具を持って別の召喚獣の所へと歩いて行っているのを見届けていると、隣からボソボソと小声が聞こえてきた。
「あはは……困ったなぁ。コレは一体どういう事だい?」
ハスキーというか、ボーイッシュというか……中性的な声が聞こえてきた。どうやら神凪さんが起きたらしい。
けれども、起きたとてこの場にいる全員がまともに魔法や魔技を使えない状態。打開の余地が見られないのだ。
……最悪、俺が魔法を使って暴発させれば生徒も召喚獣の死んだとて、俺は生き残ることができるのだが。
流石にそれはレリアの評判にも関わるから出来そうに無い。
「どうしようかなぁ……絶体絶命って感じだね〜……」
神凪さんは目を瞑り、表情を変えずにボソボソと呟いてる。状況整理と起きてる事を気付かれない様にしているのだろう。
……こちら側には繋がりが強い人ばっかり置かれてるらしく、あの集団が近づいてくる気配はないからな。
「アルンの到着を待つ? いや、流石にそこまで求めちゃ駄目か。
他の人達……は気を失ってる子も多いし、召喚獣達はそもそも言葉が伝わるかどうか……」
そんな風にブツブツと呟いているうちに約半分の人数の繋がりが断ち切られたらしい。
召喚獣は後々放逐する為か、それとも暴れない様にする為かは知らないが、動物用ケージみたいな物に個別に入れられている。
……それと、繋がりが完全に切れた時は強めのショックか、衝撃を感じるっぽい。
召喚獣も人も、繋がりが切られた瞬間に軒並み気絶している。一部では悲鳴を上げてるほどだ。
そんな事が囚われてる人と召喚獣を合わせた約半数に起きてるのだ。いくら繋がりが薄い者から切られているとはいえペースが速い。正直言えば繋がりを切られていない人の総数が三分の一になる前に俺を閉ざしてる氷を破壊してなんとか脱出したいところではあるんだが……
「そういえばこの近くにある氷って一体……えっ? これは──……レリア王女の召喚獣? なんで氷漬けに? 存在しているって事は恐らく生きているんだろうけど、助けようにも助けれないじゃないか」
神凪さんはどうやら俺の存在に気付いたっぽい。氷越しではあるが、神凪さんと目が合う。
…………目が合ったからどうしたって感じだけれども。そんな目線だけで会話できるほど親しくないし。
あっ、目線を外された。
んー……マジでどうしよう?
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