第63話 狐が仲間になったよ! 

(前話に続いて)レリア・プリモディアside


「あれ? 君って確か……」


 足元に居た狐をじっくり観察する。

 敵意は無い。というのも、この子は召喚獣。それもおそらく……


「神凪さんの所の……」


 種族名は確か、水月風狐。地水火風を操り、一部の地域では神聖視されるほどだとか。土地神扱い、みたいな感じかな?


 にしても、どうしてここに?


『コォンッ!』

「あっ、ちょっとぉっ! そこはリファルの……まぁ、いいや」


 水月風狐は軽やかな動きで私の身体を駆け上がり、頭の上へと鎮座した。

 そこはリファルの場所なんだけど……まぁ、今は良いや。多分この子も神凪さんを探して付いてきたんだろうし、協力してくれると見ても良いはず。

 ……良いよね?


「頭の上に居座るのは良いけど、貴方もちゃんと戦ってね? じゃないと無理矢理置いておくから。

 それと、バランスとかも考えないからね」

『キュゥ〜』

「……伝わってるのかな、これ」


 そもそも、召喚獣とは言葉での意思疎通が出来ない物なのだ。召喚主と召喚獣がコミュニケーションを取れるのはあくまで繋がりがあるから。

 この狐と私の間に繋がりなんてあるわけないから、意思疎通が取れてるのかは全くの謎だ。


 リファルは言葉を理解してるっぽいけど……まぁ、リファルだからね。

 流石は私のリファル。最初から特別で、私の1番なのだ。言葉を理解していても何らおかしくは無い。


 まぁそんな賢すぎるリファルだからか、変な勘違いをして私から離れちゃったんだろうけどね。


「待っててリファル。私にはリファルが必要なんだって刻み込んであげるんだから……ふふふっ」

「キュ、キュー……」


 水月風狐が何やら震えてるけど、寒いのかな? 気温的にはむしろ暑いぐらいのはずなんだけれどね〜。


 そんなこんなで繋がりを辿りながら移動していると、またまたウルフが出てきた。

 数は4……ちょっと多いかなぁ。


「もー、ほんっとウルフが多いなぁ。早くリファルの元まで駆け付けたいって言うのにっ……!」


 飛びかかってきたウルフを避け、そのウルフの首元に剣を突き刺す。

 そしてそのまま剣の魔道具を起動させる。


 剣から冷気が漏れたかと思えば、瞬く間にウルフを凍らせていき、ウルフはじきに動かなくなってしまった。


 次のウルフ! と思って視点を戻すと、そこには焼死体となったウルフと、溺死体となったウルフと、生き埋めになったウルフが居た。


「え、えぇー……」


 これをやったのは十中八九、頭の上に乗ってる水月風狐だろう。

 いや、結構強いだろうな〜とは思ってたけれどここまでとは。


 目をほんの少し離しただけにもかかわらず、ウルフ三匹を即殺だ。確かにリファルとかなら全然、むしろ五匹相手でも瞬で倒せるだろうけど、この狐も中々出来るっぽい。


 これなら……もっと進むスピードを上げれる。


「……スピードを上げるから振り下ろされないでね? 振り落とされても知らないから」


 今私の上に乗ってるのはリファルじゃない。ならば別に考慮なんてしなくて良い。

 結局の所、私にとってはリファル以外はどうでも良いのだ。


 お姉様も、お兄様も、ミレイも、レーナだって。


 ……私にとっては、本当に必要な存在じゃない。私に必要なのは、リファルだけ。


 繋がりがほんの少しずつ、切れ始めるのを感じる。

 可視化出来てる繋がりもほんの少し……見る人によっては誤差にも見えるほどだが薄くなっている。

 でも、繋がりの一部を切られた事には変わりない。そしてこんな事をしてくる組織なんて容易に想像できる。


 やっぱり、今回私達を狙ったのは獣解放なんちゃら。ほんと、いつまで経っても私達を狙ってきて鬱陶しいんだから。


「あぁもうっ! ほんと邪魔!」


 飛びかかってくる12匹のウルフを全て結界魔法で拘束し、その脳天に氷柱を突き刺していく。

 ……私とリファルの間に、障害なんて要らないんだから。


『キュ……キュー……』

「……貴方もご主人に再開する事を考えなさい。私もリファルの事しか考えてないから」


 リファル……あぁ、リファル。

 なんで私から離れてしまったの。リファルを助けたらどうしようかな。

 もう魔道具の首輪でも付けようかな? と言うかリファルと一緒に山奥で暮らしたい。


『グオオォォォォォォオオオオオオ!!!』


「……次は熊の魔物? ほんと邪魔が多いっ!」


 振り上げられた熊の魔物の爪は鋭く、人体を掻っ切る事なんて容易いだろう。

 そんな全長3メートルはあるであろう熊の爪が私に向かって振り下ろされる。


「ガンッ」と音を立ててその爪は結界の防がれ、熊は少しだけ怯む。防がれる事を予想してなかったのだろうか。


 少しだけ怯んだ隙に顔面に氷の塊のぶつけ、更に怯ませたところで結界魔法で足場を作りながら熊に近づき、顔面に向かって圧縮した水球をぶつける。


「吹き飛んじゃえっ!」


 ぶつけた水球は滅茶苦茶圧縮した為か、とんでもない威力で破裂し、熊の顔面を吹き飛ばした。


 その反動で私の身体も後方に吹き飛ばされるけど、それは結界魔法で作った足場を上手く使って方向転換し、そのままリファルの繋がりに向かって飛んでいく。


『キュゥ〜っ!!!』

「我慢してっ! 私は一刻も早くリファルの元に向かいたいんだから」


 必死になりながらも私につかまっている狐にそう言葉を飛ばしながらも、私が目を向けるのはリファルとの繋がり。


 待っててリファル……絶対に迎えに行ってあげるから!

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