第62話 レリア、動きます
カラカラカラ……と荷車が動く音で意識を取り戻す。どうやら俺は何処かへと運ばれているらしい。
氷によって身動きが取れず、観察するしか出来ないが、状況を確認してみる。
まず、荷車を動かしてるのはローブ姿の男。背丈的に男だろうか? なんとも暗い雰囲気を纏ってやがる。
そんな男が動かしてる荷車の中には、氷に閉じ込められた俺含め、複数の生物が乗せられてる。
……7割がた召喚獣で、もう3割は人だな。
ん? あれは……神凪さん?
どうやら神凪さんも荷車に乗せられてるらしい。意識を失った状態で縄で縛られてそこら辺に転がされている。
あの狐は近くにいないっぽい。……犯人の目的は召喚主と召喚獣を離れさせる事だろうか?
稲妻属性で氷を破壊しようにも、魔力を乱す魔道具が置かれてるっぽい。制御が出来るかも不安だし、もし制御に失敗すれば稲妻属性の暴発でここに居る人や召喚獣に致命傷を与えたり、下手したら死に至らせる可能性も……
そう思うと部屋に魔法は使えない。自慢の肉体も、最大の武器である魔法も使えないとなるとどうしようもないな……
とりあえず何処に連れてかれるんだろうか、これは。
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レリア・プリモディアside
突如にして暴走した魔道具達。そして姿を消した召喚獣や生徒達……
早急に対処にあたった学園は事態を鎮静化した後、更なる被害が増えない様にする為にも生徒達を一度家に返し、謹慎する様に言い渡された。
勿論、私もその謹慎を受けた1人であり、外出は許されない。
これだと……リファルを探せない。
無性に悔しくなって、枕を殴る。ボフッと音を立てるだけで何にもならない。
「……私の、ミス。最近リファルから離れてたから……リファルを、繋ぎ止めてなかった……!」
リファルを守りたい一心が強過ぎて、リファルに構えなかった。だからリファルは自分が居なくても大丈夫だとか思ってしまったんだろう。
そんな事、全くないって言うのに。
「こんな事になるなら位置共有の魔道具とか……せめて鎖で繋いどけば……いや、今はたらればの話をしてる暇じゃない、か」
謹慎中とは言え、学園から抜け出せない訳じゃない。なんとかしてリファルの場所を特定して助け出さないと……
無理矢理気持ちを切り替えて工房へと歩いていき、リファルを助ける為に使う魔道具を選出する。
……とは言え、もし暴走されると自分が危ない。相手が魔道具の暴走を起こしたのだから、今から持っていく魔道具も暴走させられる可能性もある。
「となると、暴走前提の魔道具が必要かな?」
条件に合う魔道具を選んでいく。暴走前提の魔道具……と言うよりも、暴走したとしても辛うじて使える物だったり、消耗品ってだけだ。数は少ない。
「あとは基本的な物と、探知系……」
身体強化などをする魔道具は必須。召喚獣や魔物と渡り合うには強化を重ね掛けしていかないといけない。
獣化って言う手もあるけど、時間制限もあるし、もしリファルを誘拐した相手が獣解放なんちゃらだったら唐突にリファルとの繋がりが切れる可能性がある。……頼りにするわけにはいかない。
「よし、これで良いかな。あとはこの都市から抜け出すだけ……うーん、いつ警備が薄くなるのかな」
夜……は視界が狭まる代わりに、かえって警戒が強くなる。先生達が会議する時も同様。
となると、抜け出すタイミングは——
「昼間の、お昼休憩時……つまり今って事」
工房の窓を開け、結界魔法を展開して空中に足場を作る。姿はマントの形をした姿を隠蔽する魔道具を使って隠す。
この魔道具はあくまで保護色になる程度で、よーく観察されれば普通にバレる。けれども警備の隙をつけばなんとかなるはず。
「待ってて、リファル。今から助けに行くから……!」
あの日ダンジョンでリファルに庇われた光景は今だに目を瞑れば鮮明に思い出せる。
……もう、リファルを失いたくない。必ず救い出す。
私は空中に生み出した結界を踏み締め、空中を走っていく。
繋がりを可視化するモノクルの形をした魔道具を身につけながら……
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無事に学園から出ることができた。
出来たのだが……
「魔物が……多いっ!」
リファルを追いかけて入った森は、ひたすらに魔物が多かった。しかも保護色の隠蔽が効かない、匂いに敏感なウルフ系ばかり。今回の事件を起こした奴はこの魔物達が生息している事を知って居たのだろうか?
知っているのだとしたら、相当性格が悪い。
なんとか魔法や魔道具で処理したりしているけども、正直キツイ。1人で行く場所じゃないのは確かだ。
「レーナとかに助けを求めるべきだったかなぁ……いや、無理か」
学園に行けたならばまだしも、謹慎中の今では連絡手段が滅茶苦茶少ない。
仮にも仮想敵国の王女と皇女だ、相手方の従者は強く警戒するし、変なイチャモンを付けられる可能性だって捨てきれない。
『キュー……クニャァ』
どうするかと悩んでいる時に足元から鳴き声から聞こえてきた。
魔物? にしてはあまりにも敵意が無い。そう思いながら下に目を向けると……
…………狐が居た。
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