第61話 っぱ暴走しなきゃっしょ
レリアから離れて、辿り着いたのは魔道具を展示している魔法工芸館と言われる場所。
学年で置かれる場所が別れており、名前は書かれていない。国や名前に左右されずに評価をする為だとか。
まずは一年生の展示場所を回ってみる。
置かれている魔道具は多義に渡るけど、一際目を引くのはやはりレリアと神凪さんの魔道具。
レリアのは知っての通り、二律魔道具——一つの道具に二つの魔法を刻んだ魔道具と言う、一年生が作ったとは思えない程の魔法制御と調整がなされている。
そして神凪さんの魔道具は、四部魔道具。部品別で四つの魔法を刻んだ魔道具であり、それぞれの調整を見事に成功させ、擬似的な四律魔道具っぽくしている。
どんな魔道具かと言うと、前世風で言うヒーターだ。
火の魔石で生み出した熱を風の魔石で生み出した風送り出すのだが、此処で調整を間違えれば火を吹くか、道具が燃えるか溶ける。
そこで入るのが水の魔石で、生み出した水で熱くなりすぎる部分を冷却しているのだ。
それでも熱に弱い部分は存在しており、そこは地の魔石で部品を強化して耐えている。
一見危なげに見えるが、火と水の回路の制御に力が入っており、そうそう熱し過ぎる事は無く、あくまで保険として地属性の強化が入っている様に見える。
今更なのだが、同じ部品に別種の魔法を刻む事を「律」と言い、別の部品に刻んで組み合わせる事を「部」と言う。
レリアの魔道具は「二律」の「部品」と、もう一つの「部品」を組み合わせた魔道具だから厳密には「二律二部魔道具」と呼ばれるのだとか。
話を魔法工芸館に戻そうか。
一年生で目ぼしい物は、この二つだった。ただ、別に他の魔道具が悪いと言うわけではない。
例えば、かき氷機。
氷の魔石で生み出した氷を風の魔石の力を借りながらも手回しで削ると言う二部魔道具で、超お手軽にかき氷が食べれそうだった。
……宣伝なのか、近くに置いてある紙にシロップとかき氷を売ってる屋台を出してる事が書かれている。
例えば、溶接機。
非常に溶けにくいかつ、頑丈な鉱石を使用した魔道具であり、火の魔石で生み出した熱をひたすら送り込んで金属を溶かせる様にしたのだとか。
ただ、熱を溜めて金属を溶かす程に熱くなった部品に耐えれるほどの物が見当たらず、別途で熱に強いグローブとかが必死らしいが。ちょい欠陥かな? でも熱した部品を投擲とかに使ったらめっちゃ強そうだ。
こんな感じの魔道具が一年生の展示場所に置いてある。
次に二年生の展示場所だが……極端に展示されている魔道具が少ない。
これは技術力が高いリライ公国に留学に行ってるからだと思われる。魔道具技術とか磨く為ならリライ公国の方が良いからね。
そんな訳で帝国へ留学に行く四年生も、二年生ほどでは無いが展示される魔道具が少なくなっている。
そして目に付く5年生の展示場所。
もはや二律魔道具は当たり前とばかりに並べられており、一部では三律魔道具が置かれている。
そしておそらく合作だと思うのだが、六律魔道具が置かれていた。
厳密に言うなら、六律を主要部分とした12部品で出来た魔道具……六律十二部魔道具だ。
けれども、使用効果は不明。と言うか無さそうだった。どこまで律と部を重ねてるかを試した様に見える。使用方法とか元から無そうだし。
一応出来ることは魔力を魔道具に送り込む事ぐらいっぽそうだ。
まぁ、六律十二部なせいで送る魔力量が多すぎて魔道具を破壊してしまいそうだが。
魔道具を破壊する魔道具だろうか、これは。
色々と魔道具を見て回ってる訳だが、結構面白い。俺自身が召喚獣と言う、魔力を扱うのに最適な種族である為か、どんな魔法が使われてるのかがよく分かって想像しやすいのだ。
若干ウィンドウショッピング感があるのは否めない。
そんな風に楽しんでいた訳だが、とある女子生徒に目が行った。獣人の生徒だ。
何故か周りを警戒しており、そしてその懐に隠している魔道具は明らかに学生が作るレベルじゃ無く——
——途轍もなく、嫌な予感がした。
行動に移そうとしたが、時既に遅し。その女子生徒が魔道具を起動したかと思えば、周りに妙な魔力が放たれ、自身の魔力が動かしづらくなった。
が、明らかにそれが本命では無い。その魔道具の本当の効果は——
「ドカアァァァンっ!」
五年生の展示場所にあった三律魔道具が急に爆発した。その爆発を皮切りに、次々に他の魔道具達も爆発していく。
魔道具を起動させた女子生徒はそのまま爆発に呑まれ、見えなくなってしまった。もしかしたら死んだかも……
いや、それどころじゃ無い。まずは逃げなくては。
動かしづらい魔力をなんとか制御し、雷属性の身体強化を施す。稲妻属性は使えない。おそらく制御出来ずに暴発してしまうだろう。
急いでその場から立ち去ろうとした瞬間! 俺の身体を殴打する魔道具が現れた。
殴られた俺は壁際まで吹っ飛び、意識が朦朧とする。なんとか意識を繋ぎ止めながらも、相手を認識する。
その相手は……先程見た六律十二部魔道具だった。
魔道具の魔物化——真っ先に思い出したのは、これだった。
魔道具には、核となる魔石と動かす身体があるのだ。そして回路に何か不具合があった場合は、暴発して爆発するか、暴走して魔物化する。
しかも、魔物化した魔道具には考える脳なんてのが無い。基本魔力が切れるまで暴れ散らかすのだ。
先程の殴打は、ただ俺が巻き込まれただけだろう。
そんな俺の足元に転がってきた、神凪さん作のヒーター。これまた嫌な予感。
魔法をうまく発動出来ず、そのままヒーターに爆発によって吹き飛ばされてしまう。しかも元がヒーターだった為か、炎を撒き散らしながら爆発し、俺を燃やし始めた。まるで焼夷爆弾だ。
そして俺が吹っ飛ばされた場所にはレリアの魔道具。それは意思を持ったかの様にフヨフヨと浮いていた。風の魔石の力か?
そう思ったが束の間、レリアの魔道具に体当たりされ、そのままレリアの魔道具と一緒にかき氷機の魔道具にぶつかり、かき氷機が爆発した。
かき氷機の爆発によって生み出された氷の塊に飲まれると共に、俺の意識は暗転した。
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