第59話 これも多分日常回

 色々と実験をしてみたが、結局ブレスを魔法で再現する事は叶わず、日が暮れ始めた。レリアももうそろそろひと段落する頃だろうし切り上げるべきか。


 魔法や魔技で生み出した水を全て魔力に返し、振り返るとそこには氷の椅子を作ってジッと俺を見てるレリアが居た。

 ……ニコニコしている。レリアとの繋がりから感じる感情は——喜び? なんで喜んでいるんだろうか?


「お疲れ様、リファル。でも……そんなに頑張らなくても大丈夫。今度は絶対、私が守るから」


 レリアが近づいてきて、魔法の練習で着いた汚れなどを拭き取ってくれた。

 レリアに守られる、かぁ……主に守られる従者と言うのは存在するのだろうか?


 俺的には、召喚者と召喚獣の関係はまさに主従の関係だと思ってる。言葉は伝わらなくとも、お互いの間にある繋がりによって意思疎通を可能にして主である召喚者を守り、助ける……それが俺に考える召喚獣だ。


「ほら、リファル。もうそろそろご飯の時間だし戻ろう? それと今日は一緒にお風呂に入ろうね〜」


 小型化させた俺を肩に乗せ、屋敷の中へと歩いていく。


 ……ふと、レリアが装備している魔道具が増えた事に気付いた。

 実はこのところ、レリアは着々と装備する魔道具を増やしていっている。


 最初の頃は指輪だけであったが、そこから腕輪にネックレス、服や靴にイヤリング、髪飾りとどんどん身に付けるものが魔道具化して行っている。


 魔道具を装備して過ごすその姿はまるでお婆ちゃん先生に近しい物を感じる。己の身と、魔道具だけで召喚獣や魔物と張り合おうとしてるかの様に感じられる。


 レリアは俺を守ると言っていたが、まさか俺の魔力すら使わずに戦おうと……?


 ……まさかね。流石に魔道具だけで戦おうとするのは厳しいだろう。レリアはそれが分かってないほど頭が悪くないし。


 鼻歌を歌っているレリアの横顔を見る。

 最近少しずつ……本当に少しずつではあるが、見る機会が減ってきた顔だ。

 見る機会が減っても、やる事は変わらない。


 俺はレリアを守る。レリアが俺を守りたかったとしても、この意思を変えることはない。


 ただ、最近不思議に思う事がある。

 ……俺って、こんなにレリアを守る事に固執してたっけな?


 そんな事を思う訳だが、結局俺は深く考える事は無かった。


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「ジッとしててね〜リファル」


 夜飯を食べて、少しレリアとのんびりした後の現在。

 俺はお風呂場でレリアに身体を洗われていた。


 レリアが手に持つは魔道具。見た目はさながら手持ち用の電動ブラシだ。

 原理は簡単、風の魔石を通して生み出した風でタービンを回し、ブラシを動かしているだけである。割とお手軽に売られている種類の魔道具だが、今使われている魔道具はレリアお手製である。


 俺に合わせた絶妙な動力加減なだけあって滅茶苦茶気持ち良いのだ。


「んー、やっぱり足元ら辺がよく汚れてるね。リファル、いつも乗せてもらってるけど負担になってない? 大丈夫?」


 負担? そんな風には全然思った事が無い。なんせレリアと一緒に居れるだけでも割と幸福だし、こうやって自分の手が届かない場所のケアもしっかりしてくれるのだ。不満なんてそんなに無い。


 強いて言うならもう少し構って欲し——いや、レリアの依存を無くすためにもこの気持ちは抑えねば。


「……ふふっ、分かってるよ、リファル。私も寂しいの……でも、もうちょっと待っててね。私はもう、リファルを失いたくないの……だからリファルを守れるほどの準備ができるまで、時間をくれる?」


 別に、俺は守られたいとは思ってないんだがなぁ。けれども、俺自身が意思疎通しようとは思わないからきっとレリアはこのまま色々と魔道具を作り続けるだろう。

 まぁ、行動原理が何であれ……レリアには俺以外の何かを見つけてほしいからな。


 寂しくはあれど……それがレリアの為だと思うしな。


「んっ、よし! これで綺麗になった! ほら、お風呂に入ろ?」


 レリアに連れられ、そのままお風呂に入れられた。いつになっても思うけれども、やっぱりお風呂は良いな……特に俺の場合は水の魔力も扱うこともあって水との相性がいいのだ。凄く心が休まる。

 多分、この世界の中でも4番目くらいに心が落ち着く場所だと思う。


 ちなみに一番落ち着く場所はレリアのすぐ側。

 二番目は冷凍庫の中だった。寒い所に適応してるのだろうか? この身体は。


「あっ、そういえばさ、リファル。さっきの魔法の練習ってもしかしてブレスの再現だったり……? ならさならさっ、こうやるのはどう?」


 そう言ってレリアが俺に見せてきたのは、魔法で生み出した水で竜の頭を模した物だった。普通に完成度が高くてビビる……鱗とか竜角とかめっちゃ細かいんだけど。


「こうやってリファルを真似た頭を作って、この頭を通して……こうっ!」


 レリアが竜の頭を模した魔法からブレスもどきを発射する。

 発射したブレスはそのまま飛んでいき、壁に当たる前に空中で結界に当たって止まった。

 威力、速度共にブレスには劣っているけれども……それはレリアが──人間がブレスを模したからこそだと思う。完成度自体は中々に高そうだ。

 ふむ……なるほど、ブレスを吐くときは喉だけじゃなくて首とかも結構使っている感じだろうか? 流石に此処で試すのは危ないか。


「今度試してみてね! リファルっ! あっ、ごめんリファル……この水魔法、魔力に戻してくれる?」


 レリアが作り出した水の竜を魔力に返し、レリアと共にゆっくりとお風呂に浸かる。

 ……うん、やっぱりレリアの側が一番落ち着くなぁ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【お知らせ】


 暫くの間ですが、更新停止するかもです。


 えぇ、またです。もう執筆速度が遅くてですねぇ……

 書き貯めとかも作っておきたいので更新はまぁまぁ後になるかもです。

 べっ、別にモンハンワイルズのオープンベータ版があるからとかじゃ……ナイヨ?


 まぁ、本当の事を言うなら執筆に集中出来てねぇからですけどね。

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